PandoraPartyProject

シナリオ詳細

蜂を捕獲せよ。或いは、幻の青い蜂蜜を探して…。

完了

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●海蜂
 海に住む蜂がいる。
 海洋の一部地域にのみ生息している固有種で、その名の通り海に生まれ、海で生き、海で死んでいく蜂だ。
 海洋国家の暖かな風に運ばれて、遥か遠くまで旅をするという特徴がある。一般的な蜂と違って、決まった巣を造らないことで知られている。
 基本的には気性は穏やか。
 飛行速度が速いため、海鳥などの外敵に襲われても容易に逃げ切れるため、自己を守る武器としての鋭い針や猛毒、そして猛々しい性質を備える必要が無かったため、そのような気性に相成ったと言われている。
「でも、年にほんの2カ月間だけ気性が荒くなるんだよ。その時期だけは巣を造って、新世代の女王を生むんだ」
 エントマ・ヴィーヴィー(p3n000255)が取り出したのは、透き通った青い液体の詰まった小瓶だ。ラベルには「海蜂の蜜」と記載されている。
「この青い蜂蜜は他国でも高く取引されてるの。基本的には、海蜂が巣を造りやすい養成所を作って採取してるんだけどね」
 何事にも例外がある。
 養成所産の「海蜂の蜜」は高い金額で取引される。そして、当然だが野生環境下で採取される「海蜂の蜜」となればあり得ないほどの高値が付く。
 それを採取しようと、エントマはそう言っているのだ。
「というわけで、やって来ました」
 ばばん! と、両手を広げて見せる。
 エントマの背後には、赤や黄色、白い花が咲き誇る一面の花畑があった。
 嵐の海域を抜け、襲い来る大海蛇を退け、何度も遭難しかけながらやっとのことで辿り着いた、天然海蜂の生息地である。
「ここのどこかに海蜂が巣を造っているはずなんだけど」
 見たところ、見えるのは花畑だけ。
 確かに蜂のような虫が飛んでいるのは窺えるが、それが海蜂かどうかは分からない。海蜂はあまりに稀少であるため、図鑑にその姿が記載されていないのだ。
 加えて、蜂にも色々な種類がいる。
 家の軒下や木の枝に、泥などを固めた巣を造る種。
 地面の下や土で作った丘の中に巣を造る種。
 海蜂となれば、ともすると海の中に巣を造る可能性もある。
「海蜂の巣を探すんですけど……気をつけてね。産卵期の海蜂は、めちゃくちゃ気性が荒くなっているそうだから」

GMコメント

●ミッション
海蜂の蜜を採取しよう

●ターゲット
・海蜂
海域の海岸沿いから海上にかけて生息する蜂。
非常に稀少で、海洋の一部地域にしか生息していない。
移動速度がやたらと速いことで有名。
海蜂の蜜は青く、爽やかな炭酸水のような風味がするらしい。蜂蜜は高値で取引される。
エントマは資金繰りのために、海蜂の蜜を採取したいらしい。
現在、産卵期にあり海蜂は非常に気性が荒くなっている。対話は難しいかもしれない。

●フィールド
海洋。とある花畑の孤島。
嵐の海域を超え、大海蛇に襲われながら、やっとのことで辿り着いた。
あまりに危険な海域に存在する島のため、大昔から人の出入りがほとんどなく、豊かな花畑が手つかずのまま残っている。
見たことの無い、赤や黄色や白の花で一面が埋め尽くされている。


動機
当シナリオにおけるキャラクターの動機や意気込みを、以下のうち近いものからお選び下さい。

【1】エントマに雇われた
「幻の青い蜂蜜」を探すため、エントマに雇われました。ビジネスです。

【2】青い蜂蜜を盗りに来た
「幻の青い蜂蜜」を横取りするつもりで、エントマの誘いに乗りました。窃盗目的です。

【3】暇だった
暇だったので、エントマの誘いに乗りました。結果、危険な海域を旅する羽目になりました。後悔しています。


海蜂を探して
海蜂を探し、蒼い蜂蜜を採取するための行動です。

【1】エントマの護衛を担う
危険な海蜂からエントマを護衛します。エントマは、好奇心と欲に突き動かされ、花畑のあちこちを移動します。

【2】海蜂を探す
慎重に、気配を消して、海蜂の居所や巣の場所を探します。あなたが海蜂を見ている時、海蜂もまたあなたを見ています。

【3】海蜂に追い回される
海蜂を挑発、または戦闘を仕掛けてしまいました。海蜂に追いかけ回されます。

  • 蜂を捕獲せよ。或いは、幻の青い蜂蜜を探して…。完了
  • GM名病み月
  • 種別 通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年09月30日 22時05分
  • 参加人数7/7人
  • 相談0日
  • 参加費100RC

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(7人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
終わらない途
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)
不死呪
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
月夜の魔法使い
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ

●幸せの蒼い蜂蜜
 全身はすっかり海水に塗れ、衣服はボロボロ。
 潮風と海水にやられ、髪もすっかりパサパサである。そのような惨状にありながら、『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は毅然とした態度でエントマに書類を押し付けた。
「嵐の海域の渡航に、大海蛇の迎撃、それから花畑での護衛……とてもじゃないが、事前に提示された報酬では割に合わない」
 書類には細かく幾つもの事項が記載されている。
 花畑に至るまで、モカたちが請け負った労働の一覧である。さらに花畑での蜜蜂捜索と、エントマの護衛の仕事が加わる予定だ。
 エントマは冷や汗を流しながら、そっと書類から視線を逸らした。
「それはこう、誤算って言うか、予定外って言うか……私の責任じゃないっていうか」
「業務上の過失だ。雇用主から提示された条件に偽りがあったものと判断するが?」
「……えぇぁぁ」
 エントマ、たじたじである。
 聞こえていないようなふりをして、そっとモカから視線を逸らした。
 交渉と言うのは、強きに出なければ足元を見られるものである。なので、モカの態度は全く交渉術としては正しいものだった。
「護衛の報酬追加を要求する。追加報酬は青い蜂蜜の一部。そっちが4で、私が6でどうだ?」
「6っ⁉」
「聞こえているじゃないか」
「あ、やば……っ」
 聞こえないふりをして、モカの追求を逃れようとしたのだが、悲しいかなその計画は瓦解した。
 焦りによって、エントマの発汗量が増す。
 困ったように口をもごもごさせながら、エントマは吐き出すべき言葉を探していた。だが、悲しいかな反論はすぐに思いつかない。普段のエントマであれば、もっとすらすらと口が回ったはずであるが、過酷な航海が彼女から思考能力を奪っていたのだ。
 有り体に言えば、今のエントマは疲弊している。
「まぁ、報酬はともかくとして……素人に蜂蜜採取は難しくないか?」
 エントマに助け舟を出したのは『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)だった。エントマの襟首を掴み、後ろの方へと引っ張った。
 仰け反りながら、エントマは目を丸くする。
「なんだ? では、キミはここで帰還するか?」
「いや。俺も青い蜂蜜とやらを見てみたいし食べてみたいからやるけども」
 せっかく過酷な海を越え、花畑までやって来たのだ。
 ここで帰還するという選択肢は無い。

 青や赤や黄色や白の綺麗な花が辺り一面に咲いていた。
 過酷な海を越えた先にある花畑の島を、遥かな昔に誰かはきっと極楽浄土とそう呼んだのだ。
 花畑の中心には、1つの死体が寝かされている。青い肌に、赤い髪をした小柄な女性。『不死呪』アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)であった。
 過酷な海の旅も終わりに差し掛かったころ、アオゾラはぐったりとして動かなくなった。すっかり脱力したアオゾラを、『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)と『蛇喰らい』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)がここへ運んで来たのだ。
 長く生きた2人である。
 若い女性が、苦難の果てに息絶えるところも数えきれないほどに見た。多くの友人や知人を見送りながら生き残った2人だ。それゆえ、涙を流すようなこともない。
「海ってのぁ、過酷で残酷なもんだな」
「うむ。一度この目で海蜂を見たくて着いてきたが、思った以上にきつい旅路であったよ」
 静かに、零すように2人は言葉を交わしている。
 そんな2人の脇を擦り抜け、『別れを乗せた白い星』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)がアオゾラの前に膝を突く。
 その手には、今しがた積んで来たばかりの綺麗な花が束となって握られていた。
「アオゾラさん……一緒に、海蜂を見ようって約束したじゃないですか。青い蜂蜜を手に入れて、紅茶に入れて飲もうって」
 掠れた声だ。
 俯いたまま、ジョシュアはアオゾラの胸に花束を置いた。
「いえ、死体じゃないデス」
 パチ、とアオゾラが目を開ける。
「っ!? っ????? ぇ????」
 ジョシュアは両手を天へと上げて仰け反った。アオゾラの心臓は、確かに鼓動を止めていたはずだ。今だって、アオゾラの心臓は弾んでいない。
 まぁ、その辺りはそもそもの話としてアオゾラの身体は既に死んでいるようなものなのである。心臓が鼓動を刻まないのは当然であった。
「オー、綺麗な花畑デス」
 ゆっくりとアオゾラが上半身を起こす。それから、ぐるりと周囲の様子を見まわした。
「確かに心臓は止まっていたし、血が流れている風でもなかったが?」
「そうじゃの。てっきり……なぁ」
 困ったように頭を掻いて、バクルドと潮が顔を見合わす。アオゾラの死亡を確認したのはこの2人なのだから、きっとバツが悪いのだろう。
「それは……酷い船酔いなのデス」
 
 花畑のそこかしこに、蜂が飛んでいるのが見える。
 見た目は普通の蜂のようだ。強いて言うなら、蜜蜂と言うには少しサイズが大きいことと、形状がシャープなことぐらいだろうか。
 どちらかと言えば、スズメバチに似た形をしているようにも見える。
「世の中には巣が高級食材になる燕もいるらしいし、海蜂もその類かね」
 乗って来た船の甲板に立って『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)は島と海とを交互に眺めた。蜂の巣と言えば、そのほとんどは木の枝や洞に造られる。そうじゃない場合は、土の中というのが定番だ。
「ま、そっちは他の連中が探すだろうが」
 縁は「すん」と鼻を鳴らした。
 鼻腔を擽る甘い香りは、花の蜜のものだろう。
 花畑の方に海蜂の外敵らしき生物は見当たらない。だが、先ほどから海蜂が縁や同行している仲間たちに近づく様子は確認できない。
 海蜂は、きっと警戒心の強い虫なのだろう。確かに、事前に聞いた話では海蜂はその飛行速度を駆使することで外敵から身を守るそうだ。
 だが、産卵期の間ばかりは海蜂たちは遠くへ移動することができない。巣を守るために、攻撃的にならざるを得ないと聞いている。
「だったら手が届き難い場所に巣を作るとみた」
 攻撃的になるとはいえ、本来は臆病で警戒心の強い性質の虫なのだ。それならきっと、巣を造るにしても、人や鳥の手が届きにくい場所にするはず。
 そう予想して、縁はすぅと空気を吸い込む。
 たん、と。
 軽く甲板を蹴り飛ばし、迷うことなく海の中へと跳びこんだ。

●海蜂の巣
 花畑に鮫がいる。
 潮である。鮫そのものと言った顔に穏やかな笑みを浮かべながら、赤く小さな花を指で撫でていた。
 その後ろ姿を眺めながら、バクルドは少し目を細くする。太陽の光が、青い海が、色とりどりの花畑が眩しかったからだ。
 バクルドの人生の大半は、灰色と黒の中にあった。鼻腔を擽る匂いと言えば、血と硝煙と腐肉と残飯のものばかりだった。
「慣れないねぇ」
 鼻を鳴らす。
 人差し指で、鼻腔の下を何度か擦った。まるで鼻の穴にこびり付いた甘い臭いを擦り落とすみたいな仕草だ。
「バクルド。お前、なんだってこの依頼に参加した? 花畑を歩くような性質にも、蜂蜜を好む風にも見えんがな」
 ゆっくりと立ち上がりながら、潮は問うた。
 それから、咲き誇る花の間を掻き分けるようにしながら花畑を歩き始めた。バクルドは、黙ってその後ろをついていく。
 暫く歩いたところで、バクルドはやっと口を開いた。
「暇ぁしてたんでな。人の金で旅行に行けるってんなら、悪くない依頼だと思ったんだ」
 もっとも、旅行にしては散々な道中だったが。
 のんびりできると思っていたが、結果としてなかなかな重労働に従事するはめになってしまった。
「そうか。わしと似たようなもんじゃの」
 バクルドの方を振り向かないまま、くっくと潮は肩を揺らして笑ってみせた。
「お前さん、どこに向かって歩いてんだ?」
「うん? お花さんに聞いたのよ。こっちの方に気が立った様子の蜂さんがいるとな」
 十中八九、海蜂だろう。
 そして、気が立っているということは巣が近いということだ。
「じゃあ、巣を見つけたら俺の出番ってわけか。無理矢理、蜂蜜を強奪するのか?」
 鋼の義肢を掲げながらバクルドは問う。
 返って来たのは、堪えるような笑い声である。
「いや、それは蜂さんに申し訳ない。蜂蜜酒で蜜を分けてもらえないか交渉するつもりじゃよ」
 潮が懐から取り出して見せたのは、蜂蜜酒の瓶である。
「どうかね? 交渉に入る前に一杯やるか?」
「あぁ、そりゃいい提案だ。ぜひそうしようじゃないか」
 かくして、酒宴は始まった。

 海岸線に並んで座る2人の姿。
 アオゾラと、それからジョシュアだ。海から吹く風を浴びながら、2人は海を眺めている。
「来るまでに色々あって後悔してたデスガ」
 太陽の光を反射して、きらきらと輝く広い海。
 時折吹く海風に、色とりどりの花弁が舞う。
「この景色だけでも来たかいがあったデス」
 それから、2人の周囲をぶんぶんと飛び回っている、怒り狂った蜂の群れ。
「刺されていますが、平気デスカ?」
 ほぅ、と溜め息を零すアオゾラ。
 頬に止まった蜂を追い払いながら、アオゾラは問うた。自らも蜂に刺されながら、ジョシュアの身を案じているのだ。
「毒耐性がありますから。毒耐性はあっても刺されたら痛いですけど」
 頭を抱えるようにして、ジョシュアは困った顔をしている。その手や肩には、何匹もの蜂が止まっている。
 ぶぶぶぶぶぶぶぶ。
 蜂の翅音が聴こえている。
 こうも蜂が憤っているということは、やはり近くに蜂の巣があるのだろう。だが、巣の場所が分からない。少なくとも、目に見える範囲に蜂の巣は無い。
 そもそも、蜂が多すぎて満足に身動きもできない状態なのである。
 だからこうして、アオゾラは膝を抱えて、ジョシュアは頭を両手で抱えて、じぃっと蜂をやり過ごそうとしているのである。
「パンに塗ったり、レモンの蜂蜜漬けと今から楽しみデス」
「紅茶にも蜂蜜は合いますしね。でも、誰かが毒にかかるのは防ぎたいところです」
 のんびりとした時間だけが過ぎていく。
 蜂の群れの翅音が、少々、耳に煩いけれど。

 島の外周に添うようにして、エントマとモカ、それからイズマが走っていた。
 白い太陽、青い海、満開の花畑。
 まるで青春の一幕だ。
「っ~~~~!! 蜂が追いかけて来るんだけどっ!」
 エントマは、まさに必死の形相であった。汗を流し、顔色を青くし、しきりに背後を確認しながら、全速力で駆けている。
「まぁ、蜂にとって俺たちは外敵だから、当然だな」
「エントマはなかなか足が速いな。まだ刺されていないとは驚きだ」
 必死に走るエントマに比べ、イズマやモカにはまだまだ余裕がありそうだった。流石はイレギュラーズである。普段から盛んに動き回っている2人であるので、当然である。
 蜂の襲撃程度は難なく凌げる程度の腕が無ければ、前衛に出て戦えないのだ。
「余裕そうなのが腹立つ! モカさん、護衛っしょ!? 蜂、なんとかしてよ!!」
「であれば書類にサインをしてくれ。分け前はエントマが4、私が6だ!」
「断る! イズマさん! 蜂、斬っちゃって!」
「うぅん。出来れば穏便に済ませたいんだが」
 腰の剣に手をかけて、イズマはチラと背後を見やる。
 蜂の群れは、先ほどまでよりいくらか数を増していた。斬ることは出来るが、こうも多いとあまり意味が無さそうだ。
 イズマが足を止めている間に、蜂の群れがエントマに群がることだろう。
「あまり意味が無さそうだが?」
 そう言いながらイズマは右腕を伸ばす。
 エントマの後頭部目掛けて跳びかかった1匹の蜂を、鋼の腕で弾いてみせる。いかに海蜂が鋭い針を有していようが、流石に鋼は貫けない。
「困っているようだな」
「見て分かるでしょ? 7対3!」
「4対6だ」
「ぬぁ~~~~っ!! 5対5!」
 走りながらも交渉を続けている辺り、エントマにもまだ少しの余裕があるようだ。
 イズマは呆れた顔をして、モカの方へ視線を向ける。
 目が口ほどに物を言っていた。
 つまり「そろそろ助けてあげたら?」と、そう言う意図の視線であった。
「ふぅ……ま、いいだろう。交渉成立だ」
 そう呟いて、モカは姿勢を低くする。
 地面を薙ぎ払うようにして放たれた回し蹴りが、エントマの足首を打った。姿勢を崩したエントマの身体が宙を舞う。
「は?」
「海に飛び込めばいいだろうに」
 当身を1つ。
 エントマの身体を海の方へと突き飛ばす。エントマが着水し、盛大な水飛沫があがった。その後を追うように、モカ、そしてイズマが海へと跳び込んだ。
 蜂は海に潜れない。
 これでいい。これで、蜂の追跡を回避できる。
 そのはずだった。
「……これは、まずいかもしれない」
 最初に異変に気が付いたのはイズマであった。
 蜂の群れが、3人を追って次々海に飛び込んで来たのを視認したのだ。

●蜂蜜に体を張れ
 蜂と言うのは、何も密ばかりを吸って生きているわけではない。
 そもそもの話、ほとんど蜂は基本的に肉食だ。
 肉食と言っても、喰らうのは主に青虫など昆虫の肉だが。
 海蜂もそうだった。
 島の外周、海の底に巣を作り、花の蜜や小型の魚の肉をたっぷり貯蓄していた。貯蓄した密や肉のほとんどは、時代の女王蜂を育てるための餌となる。
「つまり、喰えるのなら何も花の蜜じゃなくったっていいわけだ」
 根気強い交渉の末、縁は無事に蜂蜜を手に入れていた。
 物々交換である。
 海蜂たちは、蜂蜜を縁に提供する。
 その代わりに、縁は海蜂たちが自力では獲ることの出来ない大型の魚類やタコなどの肉を提供する。
 そういう契約が交わされた。
「こんなもんでいいだろう。確認してくんな」
 網に捕えた魚やタコを、縁は蜂の巣の前に置いた。巣の中から、海蜂たちが次々と湧き出し、魚やタコに群がった。
 そのうちの一部は、小さな何かを脚に抱えて縁の方へ飛んで……泳いでというべきか……近寄って来た。
 脚に抱えているのは、固形状の青い蜂蜜。
 差し出した縁の手の平に、固形蜂蜜が積み上げられる。
 縁が獲って来た魚やタコは結構な量になっている。それゆえか、海蜂の方もなかなか多くの蜂蜜を提供してくれたようだ。
 小瓶にして2つ分ほどにはなるだろうか。
「せっかく溜め込んだ蜂蜜だってのに悪いな」
 そのうち一部の蜂蜜を、布に包んで懐へしまう。縁の帰りを待つ妻への手土産とするためである。
 それから、残りの蜂蜜を落とさないよう握り込むと、縁は視線を海面へ向ける。
「あいつら、なにやってんだ?」
 海面付近が騒がしい。
 エントマたちが、何かに襲われているようである。

「……った! 獲ったぁぁ!」
 高くに小瓶を掲げながら、エントマは叫ぶ。
 小瓶の中には、蒼い蜂蜜が入っていた。
「けど、少っくな!」
 だが、量が少ない。
 アオゾラとジョシュアが、いつの間にか食べてしまったからだ。エントマも、2人の用意したサンドイッチと紅茶をすっかり楽しんだので、あまり文句も言えないのである。
 そして残ったのは、売るほどの量も無い僅かな蜂蜜だけ。
「で……また、あの海域を抜けて帰らなきゃなんだけど」
 大切そうに蜂蜜を胸に抱え込み、エントマはそう呟いた。
 嵐の海域。襲い来る大海蛇。
 なかなかどうして過酷な船旅であった。
 丸一日も経たないうちに、再びあの海域を越えなければいけないのだと、そんな現実に直面し、エントマは顔色を青くするのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様です。
青い蜂蜜は(一応)確保できました。
売るほどの量はありませんが、個人で楽しむ分にはどうにかなりそうです。
依頼は成功です。

この度はご参加ありがとうございました。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。

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