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シナリオ詳細

<信なる凱旋>連鎖する紅鎖

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<信なる凱旋>連鎖する紅鎖
 天義の巨大都市『テセラ・二バス』に漆黒の帳が落ちてから暫し。
 遂行者が世界中にばら撒いた『聖遺物』と、そこから生まれ出ずる『神の国』の事件はイタチごっこの如く。
 様々な国の姿を象り、崩され、時を置かずして次なる国が誕生するという具合。
 ……だが、流石に遂行者の力も有限であり、彼らの狙う預言の遂行は阻まれてしまう。
 いや……預言者は次なる作戦に狙いを定めた様で。
『まったくさー……本当あいつら何なんだよって感じだよねー。さすがにボクもプンプン、堪忍袋の緒が切れちゃうよねぇー』
 天義の国の遥か上空で憤る、少年のような口調の者。
 誰へ、という訳でも無い……ただ、最近のイレギュラーズ達の行動に彼も手を焼いているのだろう。
 だが、不安は無い様で。
『まぁ……厄介な奴等だけど、それならそれだよね。『赤き騎士は人々を焔へと変え、戦を引き起こす』、か……うん。面白そうな話だ。まぁ……奴等にはちょっと火傷を負って貰わないと、ねぇ?』
 不敵に微笑むと共に、彼は『テセラ・二バス』にほど近い『アウグリンド』の街へと向かう。
 ……そして空より手を掲げると……次の瞬間、街の中心部に姿を表すのは、燃え盛る焔を纏いし『騎士』。
『……え?』
 突然の事に声を失う街の人々……だが、焔の騎士……いや、『赤騎士』は。
『……ウゥォオオ……!!』
 周囲に響く怒号。
 その言葉を聞いた街の人々は、目を見開き……そして。
『……う……ウグゥゥアア嗚呼!!!』
 突如として人は人ならざる姿へと変化し、絶叫。
 それに周りの人々は驚き、腰を抜かしてその場に座り込む。
 そして……そんな座り込んだ人々を。
『ウゥゥ……コロス、殺スゥウ……!!』
 同じ街の仲間の筈なのに、躊躇することも無く掴みかかり、そして……文字通り喰らう。
『……ひ、ひぃぃぃ……!!』
 そしてその行為を見た街の人々は恐れ戦き、そして……次の瞬間、彼も又……焔を纏いし獣へと変化。
 悲劇を見た者達が、次々と焔纏いし獣へと次々と変化し、無事な者は次々と現れし者達に喰らわれる。
 そんな悲劇の連鎖が瞬く間に拡がり……街は『赤騎士』と『終焉獣』の如きもの達に造り替えられて仕舞うのであった。


「皆さん……あの、その……大変です……!」
 天義首都にて、『深緑の声』ルリア=ルミナス(p3n000174)が、居合わせたイレギュラーズ達を急ぎ呼び止める。
 立ち止まってくれた君達に、ありがとうございます、ありがとうございます……と、何度も頭を下げながら。
「すいません……どうやら『遂行者』の者達が、大きく動き出してしまった様なのです……! このテセラ・二バスから半日程の先にある『アウグリンド』の街が、突如現れた『赤騎士』と、彼により生み出された『終焉獣』に似た炎を纏いし獣たちに瞬く間に支配されてしまったのです……」
「どうして、この様な事態が起きたのかは分かっておりません。ですが……少なくとも『遂行者』が、裏で何等かの企みをしてきているのは間違い無いでしょう……」
「発生した理由も分かりませんが……彼らを放っておけば、それが更に違う街へ伝搬していく可能性も捨てきれません……元は街の人達かもしれませんが……彼らを倒す他に、この事態の拡大を防ぐ手段も今の所はない様です……辛い所ではありますが……皆様のお力を、貸して頂きたいのです……!」
 深く頭を下げるルリア。
 突然の事に事態は不明ながらも、天義の国を左右する事件が起きているのは間違い無いだろう。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 遂行者の作戦は、次なるフェーズへと移行した様ですね。

 ●成功条件
  混乱に陥っている『アウグリンド』の街で暴れる者達を討伐する事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
   『アウグリンド』の街は、天義においては極々平凡な街です。
   ただこの街に突如現れた『赤騎士』により、人々は『終焉獣』の様な炎の獣に化しています。
   炎の獣に化していない人は全て獣に食べられており、ほんの僅か『炎の獣』と『人』の狭間で苦しんでいる人が居る昏いです。
   赤騎士がどうして炎の獣を増やしているのかは分かりませんが、少なくとも彼を倒さなければ炎の獣の伝搬を防ぐ事は出来ないでしょう。
   ただ、彼の周りには当然炎の獣たちが防衛する様に周囲に展開しています。
   その為炎の獣を倒さない限り赤騎士も倒せない為、全てを倒す事が必要、となります。

 ●討伐目標
 ・焔を纏いし赤騎士
   紅蓮の焔を纏い、フルアーマーに身を包んだ騎士然とした男です。
   一体のみですが、とても強力な存在です。
   遠距離攻撃、範囲攻撃の両方を持ち、遠近どちらでもどちらでも対応出来るオールラウンダーな戦闘能力を持ちます。
 ・炎に包まれた『炎の獣』達
   炎に包まれ、その炎を使役して攻撃してくる獣型の敵です。
   終焉獣には似ていますが、戦闘能力は別物……狂気の儘に目の前の敵を殺す、だけの存在です。
   赤騎士に比べれば二回りほど弱いですが、数が多い分厄介でしょう。
   又、その場に居る仲間に咆哮で合図をとり連携行動を取る事も有るようです。
 

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <信なる凱旋>連鎖する紅鎖完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年09月25日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
ユイユ・アペティート(p3p009040)
多言数窮の積雪
クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)
葡萄の沼の探求者
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー
ファニー(p3p010255)
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺

リプレイ

●不快なるモノ
 天義の巨大都市「テセラ・二バス」。
 そこにほど近い地、アウグリンドの街の異変を察知したイレギュラーズ達。
「人を炎の獣に変えてしまうなんて……なんて悼ましい事をするのかしら」
「全くだ。なんども惨いことをする……人の営みを何だと思って居るんだ、奴等は」
 『葡萄の沼の探求者』クアトロ・フォルマッジ(p3p009684)と『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)の零す言葉。
 天義のみならず、各地に被害をもたらす遂行者達の次なる作戦は……近郊の街で騒ぎを起こす事であった様で。
 イレギュラーズ達が到着した頃には街中に悲鳴が響きわたり、そして……赤の騎士によって生み出された終焉獣の如き獣達がグルゥゥゥゥ、と鳴き声を上げて威嚇している様な状況。
 未だ無事な人達は居るものの、肉親、友人……今迄近かった者が変わり果てた姿となってしまえば、絶望に明け暮れることだろう。
『……う……うぅ……』
『……グルゥゥ……グガァア!!』
『や、やめろ……くるなぁああ……!!』
 信じられない目の前の光景に呆然としている住民……それを躊躇無く飛びつき、喰らう『人ならざる獣』。
 そんな無惨な光景に、『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)が。
「これは……本当に酷い状況だね……」
 息を呑む光景に、『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)、『多言数窮の積雪』ユイユ・アペティート(p3p009040)と『Star[K]night』ファニー(p3p010255)も。
「……俺が育った天義の街も、ここ、アウグリンドみたいに平凡な街なんだ。だからこそ、全く見てられねぇよ……こんな惨劇は……!」
「ああ。天義はお国柄から今迄寄りつかなかったけど、酷い事になってるなぁ……正義でも不正義でも、どちらにせよこんな形で故郷も住民も無くなるだなんてダメだろう」
「そうだな……本当に酷い有様だ。こんなのが正義だなんて、正しい歴史だなんて、認める訳には行かないぜ」
 三人は言葉を紡ぎ、各々武器を抜き、構える。
 そんなイレギュラーズ達の動きに気付いた『赤の騎士』は。
『……』
 無言でイレギュラーズを睨み付け……足元に何かを叩きつける。
 するとそこから巻き上がる紅蓮の炎……大きく燃え上がると周りの『炎の獣』達はウォォォ、と呼応するような咆哮を上げる。
 そして程なく炎が治まると……『赤の騎士』に、更に炎の獣に似た獣達が召喚される。
 更に、周りの炎の獣達はイレギュラーズ達を敵対相手と見なして威嚇の声を上げる。
 そしてその威嚇の声に呼応するかの様に、半人半獣状態の者達はウウウウ……と苦しみながら、一層獣化が進行していく。
「ちっ……『炎の獣』と『人』の狭間で苦しんでいる人達を助けられるかどうかは分からないが、その為にも早期決着をつける事を優先しないとな」
 ファニーの言葉にカイン、クアトロ、『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)が。
「そうだな……生存者をこれ以上探すのは、厳しそうだ。ならば……まずは一刻も早く事態を鎮めないと……!」
「ええ。炎を忌む傾向の強い深緑出身の幻想種である事を差し引いても、これは許し難い行為ね。絶対に倒してみせましょう」
「そうやね。さっさと進行! さっさと救助1 少しでも早く倒せれば、少しでも助けられるかもしれない。だから、少しでも早く、やな!」
 力を込めし仲間達、そして『死神の足音』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)が。
「例え何が相手であろうとも、俺に敗北は無い。死神を超えて冥王を殺した今、終焉の黙示録諸共打ち砕いてくれる!」
 炎の獣達に挑発のモーションを下すと共に、炎の獣達は牙を剥く。

●命の鼓動
「取りあえず……苦しんでいる者はちらほらといる様だな……」
 周りを見渡したベルナルドが唇を噛みしめ、舌打ち。
 そしてカインとエーレンも、それに頷きながら。
「そうだな……だが、いかんせん戻す手法も何も分かって居ない訳、か……こいつは厄介なもんだな」
「ああ……取りあえず周りにまだ持って居るのが居ないか、だな」
「そうだな。何処かに遂行者がいるかもしれん……視界は取りあえず広く持って行くとしよう」
 そしてエーレンは、ハヤブサのファミリアーを空高くに飛ばして上空からの視界を確保。
 更にファニーも広域を俯瞰し、更に高い視力で以てその位置情報を補完する。
 その結果、敵の位置と、まだ炎の獣に成り果てていない人々の位置は判明するが……かなり散らばっており、更にその周りには他の炎の獣達がいる様な状況。
「取りあえず……何とか持ちこたえているのは数人は居る様だな。とは言え時間の問題だろう」
「分かった……ならば、行くしかないな」
 静かに、覚悟を決めるベルナルド……と。
「さぁ……ならば直ぐに始めるとしよう」
 荘厳に言葉を紡いだブランシュが二人手分けして、炎の獣に包まれている人々の下へと向かおうと準備。
 その一方で残るイレギュラーズ達は赤の騎士と炎の獣の群れを真っ正面から正対。
『ふん……大人しく去ればいいものを、対抗しようとは……面白いものだ』
 と赤の騎士は不敵に笑みを浮かべると……手を前方イレギュラーズ達に向けて掲げる。
 すると。
『ガゥウ!!』
 獰猛な視線でイレギュラーズを様々な方角から睨み据え、そして……飛びかかっていく。
「早速来たようだね……ブランシュさん!」
「ああ……任せろ!」
 ユイユの言葉に頷き、ブランシュは仲間達へ号令。
 素早い炎の獣達を上回る速度で以て敵陣に突撃する。
 迎撃に炎を幾重にも掻い潜りながら、炎の獣に到達すると、真っ正面から炎を吹き付ける炎の獣。
「熱っ……でも、出来るだけ早く終わらせてあげるからね!」
 熱烈な暑さに耐えつつも、仲間達の盾となりて構えるユイユ。
 そして。
「良し……今の内だ、行くぞブランシュ」
「ああ」
 呼応する様に頷き合った二人は、取り囲まれて苦しむ一般人の下へと到達。
『……ウウウウ……アアアア……!!』
 既に半分炎の獣化し始めて織……悶え苦しんでいる。
 勿論其処から救える術は、詳しく調べればあるかもしれない……だが、今の時点では分からない。
「仕方ないな……」
 と、ぽつり言葉を零すベルナルドは、苦しむ半獣半人状態の人々へ……躊躇せずに一閃を放つ。
『…………アアアア……!』
 人の断末魔が、耳に響く。
 ……それから逃げる事無く、ベルナルドは倒した骸に向けて。
「……アンタらは化物じゃない、人間だ。苦しみから解き放たれ、人として神の御許へ旅立てる」
 と弔いの言葉を紡ぐ。
 更にブランシュも、躊躇する事無く、苦しんでいる者達を一人……いや、一体ずつ確実に。
「……安心しろ。お前の仇は数十秒で送ってやる」
 と辞世の句を吐き捨て、切り捨て、倒す。
「……許せとは言わん。せめてお前たちをこんな風にした奴を、絶対倒して見せるからな」
 そうブランシュは、静かに言い残していく。
 それにより、半獣半人の者達は、先んじて封じられる事になるのだが……その結果、後に残るは完全に獣化してしまった人々と、赤の騎士のみ。
『ほう……被害を防ぐためならば、住民達の被害は厭わぬ……と。面白いものだな」
 ニヤリと笑う赤の騎士だが、それにカインは。
「状況が状況だ……問答無用……!」
 と辛辣に言葉を返しながら、その前に立ち塞がる炎の獣に斬りかかっていく。
 勿論無抵抗の半獣半人状態よりも、完全に炎の獣化した者達は躊躇無くイレギュラーズ達を躊躇無く殺す為に動く。
 数も多く、炎を次々と吹きつける炎の獣達は厄介な事この上無く、それぞれが意外に素早く動く為に攻撃を躱される事もしばしば。
 流石にイレギュラーズ達が優位に戦えているとは言えないものの、一匹ずつ確実に攻撃を集中させて、一匹ずつ数を減らす様に行動する。
 ……そんなイレギュラーズと炎の獣の対峙の時が続いて、十数分。
「……もう居ない様だな」
「そうか……分かった」
 辛い役目を請け負いしブランシュとベルナルド達に、カインからの連絡。
 空から見渡した限りにおいて、最早無事であるのは誰もいない……それに頷き、仲間達の元へと合流。
「待たせたな。さぁ……これからは一気にスピードアップして行くぞ! 俺に続け!」
 そう仲間達に宣言すると共に、ブランシュの素早さに合わせて連携行動するイレギュラーズ。
 先んじて斬り込むブランシュが、拳と蹴りの応酬を一気に仕掛けると、それに続きエーレン、カイン、ユイユ、ファニーの四人が壁の如く立ち塞がる炎の獣達を総攻撃。
 集結した威力で一匹、二匹は倒れ、僅かな閃孔が開く。
 ……しかし如何せん数が多い炎の獣達がすぐにその穴を埋めるように配列を組み、後方の赤の騎士には、まだちょっと攻撃が届かない位の距離。
「んー……まだ流石に届かへんか。中々に厄介やな」
 と彩陽の言葉にユイユは。
「そうだねぇ……なら、みーんなこっちで引き付けちゃえばいいのさ!! ほら、みんなどうしたんだい? まだまだこっちは元気いっぱいだぜー!
 胸を叩き、威勢良く炎の獣の群れに挑発。
 ギロリと睨み据えた炎の獣は攻撃のターゲットを……大多数を自分に集中させる事に成功。
 ただ、そんな炎の獣に向けて赤騎士は。
『そんな容易にだまされる我の手下ではないぞ!』
 と鼓舞し、そのターゲットを上書きする様に号令を発令。
 指示系統に従い、赤騎士を守る様に行動する炎の獣達により、また護りが固められてしまう。
「本当に憎たらしい奴だ。だが……あの者達の仇を取る為に、絶対に倒さねばな……!」
「そうね……こっちも全体的に削っていくわ。だから弱ったところを集中的に叩いて頂戴」
 クアトロの言葉に頷くエーレン、そして後方から届く範囲にて、纏めて糸を括り付けて敵の動きを制限し、更にファニーも空から死の星屑を降り注がせる。
 総じて疲弊した炎の獣に、先陣を穿つブランシュとカイン、ユイユが斬り込み、一直線上の敵を次々と討伐。
 そしてエーレンが走り込み、赤の騎士に肉薄。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。住民の仇は討たせて貰うぞ」
 宣告と共に、渾身の一閃を叩きつける。
 だが……赤騎士は。
『……ふん……小賢しい!』
 と、その攻撃を己が剣で軌道を逸らし、受け流していく。
 勿論、そのままそこにいれば、炎の獣達が雪崩れ込んでいき、エーレンに攻撃する事を意味する事になる。
 ……だが、エーレンは決して退く事は無い。
 仲間達を信じ、赤騎士に攻撃を集中していくエーレン……それを補助する為に、更なる範囲攻撃で敵を掃討し、そしてクアトロはギリギリエーレンふ含めた範囲で回復を行い、体力を維持。
 そんなイレギュラーズ達の行動による、炎の獣の群れは加速度的に数が減り行く。
 そして獣の数が減り行くのは、当然ながら赤の騎士も察知している様で。
『ふん……確かに中々強いようだ。まぁ……この街の者達を全て滅ぼし、我の目的は達成せり、と……な』
 ニヤリと笑みを浮かべた赤の騎士は……一際強い一閃を、エーレンに放ち、彼を吹き飛ばす。
 そして。
『まぁ、後はこいつらと戯れるがよい……はははは……!』
 そう笑い声を残し、己の赤き焔に呑み込まれていくと……その炎が晴れる時には、赤騎士の影は既に消え失せており。
「くっ……逃げられた様やな……」
 彩陽が舌打ちし、そしてクアトロは彩陽に頷き。
「そうね……仕方ないわ。兎に角今は目の前の炎の獣達を倒さないと、ね」
「ああ……そやね。全部、倒すのは骨が折れるんやけど……やるしかないな」
 まだまだ大量に居残る炎の獣の群れを全て掃討するが為、イレギュラーズ達は全力を挙げるのであった。

●ヒトに訴える苦しみ
「……ふぅ。終わった様だな」
 息を吐き、武器を降ろすブランシュ。
 音の葉は無く、ただ静けさだけに包まれた街……蠢く影は、一つも無い。
「本当に……あの『赤の騎士』は何者だったんだろうな……」
「そうねぇ……少なくとも遂行者に関連した者であるのは間違い無いわね。でも、炎の獣を呼び出すだなんて……今迄に無い力を持っている者達、という事かしら?」
「ああ、そういう事だろうな……」
 クアトロの言葉に頷くファニー、更に。
「取りあえずオレは、生き残っている住人がいないか探してくる。一旦この場は任せてもいいか?」
「ああ。すまないがよろしく頼む」
 ベルナルドに断りを入れ、ファニーは一縷の望みに掛けて……生存者を探しに街中を走る。
 そして……残るイレギュラーズ達は、人と獣の狭間の中で死を迎えてしまった『元住人』達を集め……簡易的な墓に、一人ずつ埋葬をしていく。
 一つ一つの墓には、美しい花を一輪手向け……手を合わせる。
『……』
 亡きし命に、深く弔いの祈りを捧げるイレギュラーズ。
 心より冥福を祈ると共に、志半ばの言葉に耳を傾ける。
「……やっぱ、やらんよりましかなって……こっちはまた違うやろうけどな……」
「そうだな……死後くらいは、人間らしく弔ってやりたいしな」
「そやね……獣に変えたあの赤の騎士は絶対に許せんわ。いつ逢うかは分からんけど……次は絶対に倒さんとな」
「そうだね。次は絶対に……逃がさずに倒す。その為にも……その尻尾を掴む手がかりが得られれば良いんだけどね」
 彩陽、ベルナルド、カイン。
 開戦直後に、早々に姿を消してしまった赤の騎士……その手がかりは殆ど残されて居ない。
 炎の獣と成り果てた者達の痕跡も、まるで靄の如く倒せば消え失せてしまった。
「ファニー君が生き残りの人を一人でも見つけられればいいけど……まぁ望みは薄そうね。兎に角……無駄足であろうとも、手がかりの一つや二つを探しましょう」
 とクアトロの言葉。
 そしてイレギュラーズ達は街中をくまなく捜索し尽くしていく。
 ……だが、結局何かが見つかることは無く……炎の獣によって荒れ尽くされた街の痕跡が残るがのみ。
「この街も、失われた街になってしまうのかもしれないね……んー……なんかやだな」
 と言うユイユにベルナルドは。
「ああ……なら、俺が残してやる」
 と言うと共に画材とキャンバスを取り出すベルナルド。
 炎の獣に壊された家が並ぶ目の前の光景に対し……蠢く絵筆が描き出すのは、素朴かつ、綺麗な村の街並の光景。
 その街並と、目の前の光景には何となく面影が見え隠れしていて……。
「……住む人が居なくなったこの街は、やがて廃墟となり、人々の記憶から段々と消え去っていく事だろう。だが……せめて俺位は記憶に留めてやりたいし、残してやりたい。だからこそ……キャンバス上ではあるが、この街の痕跡をしっかりと残してやるのが、俺の責務だ」
 画家として……イレギュラーズとして、平和な街の痕跡をキャンバス上に残す事。
 そんなベルナルドの言葉にカインとユイユが。
「ああ……この平和な街の光景を記憶に留め、それを伝えていくのも俺達が出来る、この街の人達が此処に住んでいた証明だろう。そして……同じような目に逢う街を、一つでも少なくしないとな」
「そうだね。僕達に出来る事はそんなに多く無いけど……此処には確かに人々が住んでいたんだ。それは忘れない様にしないとね」
 イレギュラーズ達の、それぞれの思い。
 各々の思いを強く心に刻みつつ……生存者がいない事を確認すると共に、イレギュラーズ達はその場を後にするのであった。

成否

成功

MVP

ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束

状態異常

なし

あとがき

ご参加頂きまして、ありがとうございました。
赤の騎士の狙いが良く分からない所ではありますね。
彼からすれば一つの街を滅ぼした事が目的だった様で……それが遂行者に指示された『イレギュラーズ達への復讐』なのかもしれませんね。

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