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シナリオ詳細

かわいいけど、それはゴブリン。
かわいいけど、それはゴブリン。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「何かな、あれ」
「かわいいね。黄色くてわさわさしてるね」
「ひよこさんみたい」
「よちよち歩いてかわいいね」
 村の子供たちは、乳飲み子よりももっと小さいそれを小人だと思った。
 ころころした二頭身。フワフワした黄色い毛。黒目が血のつぶらな瞳。小さなおちょぼ口。
 皆が少しづつお菓子やパンを持ち寄り、小人のために木の実や果物を探して食べさせた。
 楽しい楽しい夏の思い出。
 夏の終わり、秋の始まり。
 その日、子供の一人が木の実を取るときに指を切っていた。血がほんの少しだけ口に入る。
 ウマイウマイウマイ。モット。
 肉への渇望が、モンスターの幼体を成体にする。
 今まで食べ物を運んでくれたかわいらしい指は、大人になり始めた小人の最初の一口になった。
 黄色い毛は抜け、茶色くごつごつした肌に。手足は伸び、モミジのようだった手にかぎ爪が生えた。おちょぼ口は耳まで裂け、周囲をよく見渡せるよう、目じりが大きく切れ上がった。
 完全な大人のモンスターになった時、ご飯をくれる奴らは最初のご飯になってくれた。
 とってもおいしいのが分かった。いつか自分に子供が出来たら、こいつらみたいなやつらの側に置いてやろう。


「そうね。ゴブリン退治なのだけど、ファンシーイエローでバーガンディチェリーな案件なの」
『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー (p3n000004)の形容は、今日も訳が分からない。子供っぽい黄色とどす黒い赤がなんだって?
「とある地方のゴブリンにかわいい子供がうまれるようになったのよ。ファンシーイエローの」
 かわいいゴブリン。
「ほら、ヒヨコとか、かわいいでしょう? 狂暴な鶏になるってわかっていても。殺すのに躊躇しちゃうわね」
 生存戦略だ。それで人里で大人になれるゴブリンが確立すれば巣で一網打尽にされない子孫が出来上がる。
「そのひよこみたいにかわいいのを子供達が育てちゃってるらしいのよ。ゴブリンとわからずに。あちこちの村で子供が犠牲になってるのよね。もちろんその子供を食べたゴブリンはすぐ村の大人によってたかって殺されて敵討ちされてはいるのだけど」
 その件数がうなぎのぼりだという。
 どうやら、その村々のすぐ近くの山に大元のゴブリンの巣があるらしい。場所は特定できているそうだ。
 灯りは持参は基本。数の暴力で攻めてくるし、武器はなくても爪やギザギザの歯は十分脅威だ。
「ちょっと大きなリーダーもいるけれど、それを殺すと、みなてんでバラバラに逃げようとするのよね。タイミングを見計らってメスと子供の部屋を探してね。どのくらいの人数を割くかは相談してね。メスを殺してる間に背中から襲われたら、ダルダスティモーヴにもほどがあるわ」
 すすけてダルダルな腐れたような紫ですね。
「そういう変な進化しそうなゴブリンは元から立たなきゃダメよ。例え、くりくりとしたお目目がつぶらでおちょぼ口でふくふくしたかわいいファンシーイエローのふわふわ小人さんみたいに見えてもよ。一月で標準型ゴブリンに変態するって話なの」
 時間って残酷ね。と言うプルーに、そうですねと言ったら気まずい空気になるのは何となく察せられた。
「ゴブリンのえさにつれてこられた小人と間違えて連れてきちゃったどっかのパーティの女の子が喉笛食いちぎられたって言う話もあるのよね。アクアライト並に切ない話だわ」
 知らなければ種族を間違えるレベルということだ。
「その巣をつぶしてきてくれるかしら? そうね。巣がバーガンディチェリーの大惨事になると思うわ。ファンシーイエローは根絶やしね。絶対よ」

GMコメント

 初めまして、田奈アガサと言います。
 まずは名刺代わりに、最初のシナリオはゴブリン退治です。

目標:ゴブリンを一匹も逃がさないで殺して下さい。
 よろしくお願いします。

*攻撃対象
 ゴブリンリーダー×1
 明らかにこいつだとわかる大きさと武装具合です。
 割りとピカピカの斧を持っています。
 生きている限り、手下の逃走を許しません。
 大振り:物至列にダメージ
 縦割り:物至単に大ダメージ、出血 

 ゴブリン(武具)×8
 ありあわせの武器を持っています。
 近距離で戦いますが、質は悪くすぐ折れます。
 刺してその刃を折って敵の傷を大きくする戦い方をします。
 ゴブリンリーダーが死んだら、生存本能に任せ、てんでバラバラに逃走を図ります。
 刺して折る:物至単にダメージ、出血

 ゴブリン(農具)×8
 ありあわせの農具を持っています。
 敵の下半身を狙い、昏倒させてようとします。
 ゴブリンリーダーが死んだら、生存本能に任せ、てんでバラバラに逃走を図ります。

 ゴブリン(雌)×10
 ゴブリン(子供)×15
 抵抗しますが、物の数ではありません。
 殺すと宣言すれば必ず1ターンで殺せます。
 ゴブリンリーダーが死んだら、生存本能に任せ、てんでバラバラに逃走を図ります。

 フワフワ小人(ゴブリン特殊幼体)×5
 知らなければゴブリンには見えません。
 身長30センチに満たない二頭身の黄色く短い毛におおわれた小人です。
 かわいらしいつぶらな瞳におちょぼ口です。
 人語は解さない様子ですが、動きもとても愛らしいです。
 ゴブリンリーダーが死んだら、生存本能に任せ、庇護を求めてすがってきます。
 ひと月ぐらいで大人ゴブリンになります。
 どう育ててもゴブリンになります。
 情けは禁物です。

*場所
 ゴブリンの巣です。
 天井が低く、道幅も狭い通路と半径5メートル前後の部屋が複数繋がって構成されています。
 文字通り、ゴブリンの勝手知ったる我が家ですので、隠し部屋や通路や夜逃げ用通路、ゴブリンは引っかからないが外敵は引っかかる罠が仕掛けられています。村人が報復の山狩りに出られないのもそれが原因です。
 夜行性なので明かりはありません。
 知能は低く、言葉を解しませんが、仲間同士連携しますし、ケガしたふり、死んだふりはします。
 入り口は一カ所ですが、隠し出口があるのは否めません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • かわいいけど、それはゴブリン。完了
  • GM名田奈アガサ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月18日 21時20分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

テテス・V・ユグドルティン(p3p000275)
樹妖精の錬金術士
リュグナート・ヴェクサシオン(p3p001218)
咎狼の牙
リン・シア・シアト(p3p001740)
自称トレジャーハンター
アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)
シティー・メイド
ケイティ・アーリフェルド(p3p004901)
トラッパーガール
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
願いの風を継いだ者
エリシア(p3p006057)
鳳凰
ガーベラ・キルロード(p3p006172)
noblesse oblige

リプレイ


 ゴブリンは、非常に派生種が発生しやすい。
 同じメスの腹からチャンピオンが生まれ、シャーマンが生まれ、雑魚が生まれる。同じ腹から生まれたのに、違う生物としての道を歩いていくのだ。
 はらみメスにかかったストレスが腹の子供の成長に影響するというものもいるが、何しろゴブリンを研究しようなどという酔狂もなかなかいない。
 群れで自分だけが親とも兄弟とも違う存在という中で、ゴブリンが何を考えるのかあるいは何も考えないのか。
 ともあれ、ゴブリンの群れはどれだけ変わった子供を生み出せるかに存続がかかっている。その変わった子供故に滅ぼされるのも、またよくあることなのだ。


「ぷわぷわふわふわ直立したひよこのような小人のような新種のゴブリン」
 同じ情報を手に入れても、イレギュラーズそれぞれ抱く感想が違う。
「なるほど、ハニートラップの一種ですのね」
『トラップ令嬢』ケイティ・アーリフェルド(p3p004901)は、かわいくとも倒す。そのときは目を合わせないように。と、決めた。
『農家系女騎士令嬢様』ガーベラ・キルロード(p3p006172)は、義憤にかられた。
「可愛い外見で騙して子供を襲うとは…なんて卑劣な!許せませんわ! 貴族として民を守る為にもこのようなモンスターは駆逐しなくてはいけませんわ!」
『鳳凰』エリシア(p3p006057)には、そもそも問題にならない概念だ。
「可愛い、がどうかしたか? 他者に害なす輩であれば、容赦はせん。それが神の仕事だ」
『自称美少女トレジャーハンター』リン・シア・シアト(p3p001740)にとっては、換金しにくそうなものに興味は特にないし、 『シティー・メイド』アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)にとっては、排除するごみの一種に他ならない。ゴブリンはゴブリンだ。
『樹妖精の錬金術士』テテス・V・ユグドルティン(p3p000275)にとっては、希少素材の元。
「ん? 見た目が可愛い? そんなことより希少素材だ!」
『寄り添う風』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は、生存競争と受け止めた。
「子供がやられてる、情けは禁物! それでも生まれたばかりの命を狩ってるのはアタシも同じ……ゴメンね!」
『咎狼の牙』リュグナート・ヴェクサシオン(p3p001218)は、それを適者生存と受け止めた。惨殺から逃れた子供を巣穴から最も安全に運び出してくれるのは惨殺した張本人たちだ。
「ですが、元海賊としては恐怖と実利のバランスを取らなければ滅ぼされるだけと申し上げましょう――さあ、鼠狩りを始めましょう」
 船乗りにとって鼠は最悪の密航者だ。食料や積み荷の質を下げ、病気をまき散らし、移動音が安眠を妨げる。只生きているだけで厄介な存在。お前らがいなければ少しだけ枕を高くして眠れる。
 カオスシードとゴブリンもそういう関係にある。


 ゴブリンの巣の厄介なところは、デストラップの宝庫であるということだ。
 住んでいるゴブリンはかからないが、それ以外の侵入者は引っかかって命を落とす。ゴブリンの巣を襲うには罠の専門職を用意するかデストラップを蹂躙する圧倒的な力が必要である。
 イレギュラーズ達は、ケイティとアーデルトラウトを中心に二班を作りそれぞれ捜索することにした。
 ガーベラ、テテス、エリシア、アーデルトラウトに、ケイティのファミリアが託された。子犬だ。キャー、かわいいー。とは、この面子だと起こらない。ガーベラ的にはそういう反応は令嬢としてふさわしくない。
 この子犬が見聞きしたものが、そのままケイティに伝わるようになっている。
「触覚共有で、耳の後ろに触られたと感じたら小さく吠えるように子犬に教えてあります。その回数と吠え方でこちらの情報をそちらに。伝える情報は、撃破数・ボス発見・合流要請・非常事態発生、などですわ」
 子犬の鳴き声の種類と回数で信号を形成する。手段が採用になってから、練習していよいよ本番だ。過程は割愛するが、それなりの努力は要した。
 移動が車いすであるテテスの膝の上に乗せられた子犬はおとなしく前を向いている。五感共有良好。
 各々頷き、早速の分かれ道で別進路をとる前にそれぞれ罠の有無を確認する。あとは子犬に頼るより連絡方法はなくなった。


「暗いところは苦手なのでランプでピカっと☆」
 リンは胸をどきどきさせながら、ケイティが足元をごそごそやっているのを注視している。掲げ持つカンテラの光が漏れないようにリュグナートが毛布で光の向きを調整する。周囲はミルヴィが警戒していた。洞窟内には緊張と恐怖と服従の気配だったのが、徐々に卑屈と鬱屈と行き場のない憤怒に変わりつつある。
「外しますわ。頭にお気を付けくださいね」
 それはどういう意味かと尋ねる間もなく、頭上で何か動く気配。ばたっと背後で何かが動く音に反射で飛び上がったリンは、リュグナートの鎧の角に頭をぶつけた。
 倒れてきたものはリュグナートが受け止めている。腐れた板だ。
 頭の上にかぶさってくるだけで判断が遅れるし、ゴブリンは倒れた板の隙間から逃げられる絶妙の大きさ。腐れ板が割れて、侵入者に刺されば御の字だし、はまってくれれば襲うのも楽だ。
 ケイティは余計な起動装置がないのを確かめ、速やかに割った。腐れた板などすぐ割れる。
「この道、閉鎖しましたわ。撤収時、私の前を歩かないでください――細切れになりますわよ」
 いつの間にとしか言いようがないが、ケイティがそう言うならそうなのだ。
 もう、この洞窟は不可視の牢獄の支配地で、ゴブリンを撃破させなければ脱出不可能なのだ。
 

 一方。
 ゴブリンの身長では引っかからないがカオスシードの身長に引っかかる縄が張られていた。そのまま楔が抜けて天井が崩れ落ちるようになっている。
 パラパラと小石が落ちてくる狭い通路から、やや開けたところにつながるようだ。アーデルトラウトは、見通しの悪いところで立ち止まり、向こう側に光がこぼれぬよう注意しながらカンテラをかざした。
 ガーベラが側によって、盾の角度を変える。ピカピカに磨かれた表面に移る影はない。
 テテスが車椅子を進め、その後ろからくるエリシアがおぼろな光を放っている。罠がないのを確認しながら進む。
 ガーベラは今で来たばかりのゴブリンの足跡を見つけた。乱れた足跡が奥に向かっているのが、浅慮ゆえか、はたまた罠か。
「ここまではそれらしい分岐はなかったな」
 罠はあったが、ほぼ一直線だった。入口から手ぶらで戻るには面倒な距離。十分深入りしている。細い通路の先にぽかりと開いた空間。今までより幾分天井が高い。
 間抜けな侵入者はここで料理しようとでもいうように、そこは生活臭ではない臭気が染みついていた。胸の底が悪くなる血と動物の脂のにおいだ。
「あら、こちらでしたのね」
 及び腰のゴブリンが二十足らずに、それを追い立てるようにイレギュラーズにかからせようとするひときわ大きな個体。
 テテスの膝の上の子犬が、元気に一つほえた。
 意味は『そちらにリーダー出現。確認』
 さらに続け様、わわんと吠えた。
『育児部屋、発見。行動に移す。急ぐ』
「貴様ら、他班が達成するまではリーダーは殺すな。粘るぞ」
 エリシアは神弓で手近にいたゴブリンを撃ち抜いた。


 乳にかぶりつく子供を胸にかき抱いて威嚇する母ゴブリン。
 床に乱雑にわらが敷かれた中、直立したひよこのような小人が澄み切った眼をイレギュラーズに向けている。子ゴブリンが小人をつかんだ。同種と知らなければ握りつぶして食おうとしていると思うだろ。だがおそらく兄弟だ。
 ミルヴィに伝わる勘定の波は恐怖と無垢なる好奇心だ。変異ゴブリンには子ゴブリンから感じる恐怖がない。幼いからではなくそういう精神回路なのだ。ゴブリンに備わった種族的警戒心がない。
 適者生存。全滅した巣で生き残る術。
「照準オッケーです☆ てー☆(撃て☆)」
 リンの棺がパカリと開くと、中から小さなバニードールが出てきた。
 銃を持った中にゴム鉄砲や水鉄砲を持ったものも混じっている。運よく水が当たっても次の瞬間には銃弾が飛んでくる。
「逃げないんですかぁ? 中型バニーも用意してるのにっ☆」
 ライフルを持った中型は、戦闘フィールドから逃げ出すものを狙撃するのだ。どこにも逃げ場はない。もう、ケイティが罠を張ってしまったので。
「嫌だけど……雌も子供も殺すよ……」
 ミルヴィの声は時に途切れ、それでも気持ちは途切れない。
 育児部屋は、ミルヴィの舞台に変わる。
「きっちりと……!」
 ゴブリンたちを見渡す視線に、母も子供を取り落とし、落とされた子も踊り子ににじり寄る。
 踊り手に手を触れてはいけない。踊りの神の機嫌を損なう。稀な踊り子ならなおのこと。踊りを止める無粋者は切り据える。
 その刀は妖刀。肉を切り刻む感触をほんの少し軽く、つんざく悲鳴をほんの少し遠く、吹き出す血しぶきをほんの少し褪せさせる。
 それは、狭い部屋の中で起きた、ほんのわずかの間。
 リュグナートは素早く視線をめぐらせ、不自然に握りしめた跡がある垂れ下がっているぼろきれをめくりあげた。
 細い穴。人は無理だがゴブリンは通れる穴。リーダーが生きている限り逃げられない。それでも姿を隠そうとした。引っ張り出すにはやや奥にいる。
 リュグナートは波濤の蒼をふるった。刀身の蒼が不浄の全てを拒絶した。臆病なほどに細心であることが板子一枚下は地獄で生き残るために必要なのだ。船室で鼠に鼻をかじられたりしないために。斬撃が飛んで行った。


「オーホッホッホ! 私こそガーベラ・キルロード! 民を守る盾ですわ! ゴブリンという害獣は一匹残らず駆逐してやりますわ!」
 名のり口上がここまで決められてこそ、戦場に立つ貴族令嬢の面目躍如というものである。
 足元につきこまれる農具をものともしない。足腰がしっかりしたご令嬢はゴブリンよりよっぽど農具に精通している。鏡の盾で押し潰し、絶妙の鍬さばきで命の畑を耕して、殺戮の畝が出来上がる。
「あー! 育児部屋はあっちか。彼らは貴重な素材をちゃんと扱って――」
 くっと車いすを傾げて突き出される錆だらけのシャベルの切っ先を交わすテテス。「――くれているんだろうな?」
 殺さない程度にリーダーに術をぶつけて肝を冷やしてやる。好きに動く自由は与えない。
 膝の上のケイティの子犬はよくしつけられているようで喉を鳴らしもしない。
「お掃除の観点から行けば、整理整頓してからです」
 アーデルトラウトは前衛で丹念に社会のゴミとそうでないのを分ける。
 只今街のメイドさんは、とびかかってくるゴブリンを障壁で阻み、どてっぱらにドリルをぶち込むお仕事に従事中だ。
「こちらも迅速に頭数を減らすぞ。さて、ざっと見、ここに全戦力投入か。逐次投入するより賢いが、存在の格を勘定しているのか疑問だな」
 レイリアは景気よくぶっ放すには狭い巣穴に閉口する。
 都合によりリーダーを殺せないので面倒だが端から倒していくより他はない。
 一撃一殺、突き出される刃物についている汚物が甚だ不愉快だ。原料は聞きたくもない。レイリアの詠唱により事なきを得ているが早々に済ませたい。
 そも、四方八方に勝手に逃げられると面倒なのでリーダーを生かしているわけで、逃げる者がいなくなれば生かしておく理由などないのだ。
 早々と血だまりと化したゴブリンが16匹。
 テテスの膝の上の子犬が大きく三度吠えた。
「向こうは30匹倒したのを確認したようじゃ――30? 変異ゴブリンも、もう片付けたのか!?」
「思ったより時間がかかったな」
 レイリアなら瞬殺案件だ。犬が吠える前に魔砲一発で終わる。
「確認に時間がかかる?――嫌な予感がする。大丈夫だな? 希少素材、あるんだな? 逃げられてないな?」
 子犬はキュンキュンいう。
「逃がしてない。ようですね」
 アーデルトラウトは、丹念にゴブリンにとどめを刺していく。
 テテスは渋い顔をする。何やら、いやな予感がする。
 テテスに足止めされていたゴブリンリーダーの斧はピカピカだ。どこかの冒険者が使い込む前に奪い取ったのだろう。
 腰だめから横に薙ぎ、文字通り空間を割る。
 アーデルクラウトとガーベラの二人が盾を構える。
 白い盾に無粋な横筋。割れた腕の痛みもガーベラがひるむ理由になっていない。
 アーデルクラウトに至っては、あらかたの攻撃がまともに通らない。
 アーデルクラウトの茫洋とした視線がゴブリンリーダーをとらえた。ガーベラの傷はエリシアが瞬時に治す。普段なら癒し手など早々に手下をけしかけて無力化するというのに。生物を最も疲れさせるのは、徒労だ。どれほど殴っても、さしたる威力はなく、あげた成果もすぐチャラにされる。
「お片付けの時間でございます」
 掲げられるドリルの回転は浪漫である。
「早々に合流するぞ!」
 テテスは、堕天の杖を構えた。今なら最大火力のレコードが出そうだ。この杖は、持ち主の欲望のままに力を与えてくれるのだから。
 ゴブリンリーダーはここまで死なないように自分だけに手加減されていたことを知らない。自分にはイレギュラーズの攻撃は利かないと理解していた。
 続けざま攻撃にさらされ、死の恐怖にかられ、死に物狂いのゴブリンリーダーはガーベラの頭上から斧を地面にたたきつけた。避けられない。火事場のくそ力といえるだろう。
 リーダーの脳裏には、血と臓物を垂れ流すガーベラが浮かんでいた。それが当然の帰結。
 しかし、ガーベラはそれを良しとしなかった。ゴブリンの前に沈むこと、自らにゆるさじ。故に、運命は逆転する。
「この程度で、私のドラグヴァンディルはとまりませんわよ!」
 擱座することなく、さらに戦闘の構えを見せるガーベラに、ゴブリンリーダーは咆哮した。恐怖、威嚇。そんな感情が垂れ流される。
「終わりだ」
 さもありなん。ガーベラの横を通り、ゴブリンリーダーに殺到するテテスの無数の不可視の糸。
 切り刻まれるゴブリンリーダーの肉がどちゃどちゃと地面に落ちた。
 臆病風に吹かれたものから死ぬのだ。


 子犬の鳴き声誘導に従い、合流を果たした一行。途中でケイティ製の罠を外してもらった。
 中は、フードプロセッサーをかけたようなありさまだった。
 テテスの不幸は、育児部屋の掃討を行った四人が変異ゴブリンの素材としての価値について無頓着だった点だ。
「全部混じって――変異ゴブリンが」
 狂奔した20体以上のゴブリンがミルヴィに殺到したのだ。親兄弟に踏みつぶされた個体もあるだろう。致命的に大きさが違う。
「どうにかならんもんか」
 それらしい黄色い皮は拾えたが果たして使い物になるだろうか。
 もったいないと漏らすテテスに、興味のない一同は首をかしげる。
「そうはいっても。話から行けば、一月たったら、ただのゴブリンだ」
 その一月の間、どのような変化が個体内で起こり、何を引き金に標準型に変化するのかそのプロセスうんたらかんたら。錬金術師が垂涎する生命の神秘の概念は、崩れぬバベルの恩恵を受けても伝わらない。それゆえ、イレギュラーズは無限の多様性をほこるのだ。等しく尊い。
「はああ、もったいない」
 錬金術師のため息が漏れる。真理探究の道は遠く、それでも、近隣の村は、これで枕を高くして眠れるだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。
 変異ゴブリンの血族は根絶やし。これで仏心出した人から死んでいく理不尽が是正されました。
 ゆっくり休んで、次のお仕事頑張ってくださいね。

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