PandoraPartyProject

シナリオ詳細

運び屋さんのお仕事

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●明日の希望をまもるため
 ごとごとと揺れる馬車の床。
 御者席に敷いたクッションもだいぶボロけてきたようで、手綱をもつ老人は腰を丸めて痛みに耐えていた。
 夜になれば真っ暗闇になる森を抜け、時折サソリのようなモンスターの出る谷を抜け、揺れる吊り橋を抜け、長い長い街道を抜け……。
「今、ようやくだ」
 夜景に浮かぶ町明かりが見える。
 幻想(レガド・イルシオン)フィッツバルディ領に続く、街道の風景である。

●運び屋、募集中
「あら、ご機嫌はいかが? あなたが気に入りそうな依頼が入っているの。少し話を聞いていかない?」
 賑わう街のギルド・ローレット。
 張り出された依頼書のひとつをさして、『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)はあなたにほほえみかけた。
 依頼書のタイトルはなんともシンプル。
 『運び屋募集のお知らせ』である。

 木目のテーブルにフルーツのタルトが運ばれてきた。
 人数分のティーカップと角砂糖の小皿。オシャレなティースプーン。
 そんな風景に不似合いな、よれよれの老人がテーブルの一角に座っていた。
 白い髭をたたえた老人は日除け帽子を脱ぐと、はげ上がった頭を撫でて言った。
「自分はジェイサムという。運び屋をやっている者だ。
 ここより東にある村まで、急ぎ荷物を運んでもらいたい。
 多くは衣類や嗜好品、工芸品などだが、一番運んで貰う必要があるのが……これだ」
 そういってテーブルに出したのは、錠剤の入った瓶だ。
「鑑定してもらえばわかることだが、中身は風邪薬だ。
 村で病気が流行ってしまってな、薬が足りなくなってしまった。
 なんとか薬のある街まで買い付けにくることができたが、
 長く患っていた腰が限界にきてしまってすぐに馬車に乗れなくなってしまったのだ」
 時と場合と土地によるが、薬は往々にして貴重品だ。
 これを狙う盗賊も現われるだろう。
 そうでなくとも、近道をしようとすればモンスターに遭遇することもある。
 それらを避けて安全な道だけを通ることもできるが、すこしでも早く薬を届けたいという意志から、ローレットに依頼することを選んだという。
「金も前払いにする。馬車も貸そう。だからたのむ! 村に薬を届けてやってくれ!」
 と、こうして、ギルド・ローレットによる運び屋仕事が始まったのであった。

GMコメント

 ご機嫌いかがでしょうか、プレイヤーの皆様。
 こちらは馬車にのって長時間の運び屋仕事をするというシナリオでございます。
 時としておこるアクションやスリル。スマートな仕事ぶりが成果を生み出す地道な場面。
 馬車の扱いや危険の察知。場合によっては修理技術なんかを持っていると、ここぞとばかりに活躍できるかもしれませんね!

【依頼内容】
 幻想(レガド・イルシオン)東にある村へ、馬車を使って荷物を届けます。
 完璧に安全なルートを通るなら5日ですが、危険な近道を使うと2日でたどり着くことができます。
 途中にはいくつかの難関がありますので、皆さんの知恵と力で乗り切りましょう。

【難関】
 近道をする以上相応のリスクが発生します。
 情報屋プルーからの情報を含めて、それらを解説していきましょう。

●盗賊の出る道
 商人がケチって近道する道ですが、それゆえに盗賊が略奪を狙って襲いかかってくることがあります。
 少なくとも『出る』ことは分かっているのですが、どの辺りで出るのか、どの程度の規模でトライしてくるかといった所がわかりません。
 道は木々がそれなりにあって茂みも多いエリアです。人が隠れやすい箇所が沢山あります。
 危険を察知、ないしは人の存在を察知できると奇襲に備えられるでしょう。
 尚、情報屋によると『盗賊が1チームほどでかかってきた場合はすぐにでも撃退可能。仲間を呼んで沢山集められたら全力で逃げたほうがいい』だそうです。
 また、急いで通る場合は夜間になります。
 馬車にランプは積んでありますが、一応暗闇への対策をしておくと安全性が増すでしょう。

●サソリの谷
 馬車の車輪がとられやすいでこぼこ道を通ります。
 ずっと走り続けていられればよいのですが、車輪が壊れたり外れたりすると流石にとまらねばなりません。
 換えの車輪やパーツは積んであるのでちょっとの時間をかければ修理できるのですが、とまっている間1mほどのサソリモンスターが集まってきてしまいます。
 『ハサミ(物理/至近/単体【足止】)』『尻尾針(物理/至近/単体【毒】)』の攻撃を行ないます。修理中にこれらを排除し続ける必要があるでしょう。

●一泊二日の長旅
 なんといっても30時間以上かかる旅になるので、その間の食事や睡眠はしっかり取って置いたほうがよいでしょう。
 それらを怠ると色々な精度が落ちていくので、チームで分担して休憩したり、栄養のある美味しいご飯を作ったりして乗り切りましょう。雰囲気をよくするための工夫もきっと効果があるはずです。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』と書かれたお客様にはアドリブを多めに、逆に『アドリブなし』とお書きくださればアドリブ控えめで対応できますので、ぜひご活用くださいませ。

  • 運び屋さんのお仕事完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月02日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

春津見・小梢(p3p000084)
グローバルカレーメイド
Suvia=Westbury(p3p000114)
子連れ紅茶マイスター
セララ(p3p000273)
魔法騎士
巡離 リンネ(p3p000412)
魂の牧童
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
オズウェル・ル・ルー(p3p001119)
贄神
玉藻前 久右衛門 佳月(p3p002860)
双刀の朧月
雫(p3p002862)
生き人形

リプレイ

●届けたい場所がある
 太陽がオレンジ色をしている。
 賑わう町の外れにとめた馬車は、いつもの御者であるところのジェイサム商人を欠いてすこしがらんとしていた。
 どこか寂しげな馬の頬を撫でてやる『贄神』オズウェル・ル・ルー(p3p001119)。
「……病は、つらいから。できるだけ早く、届けてやりたい」
「大丈夫、風邪くらいカレー食べたらなおるよ」
 『カレーメイド』春津見・小梢(p3p000084)はスプーン片手に首を傾げた。
 いつわりゼロカロリーで述べているのか、目がどこまでも澄んでいた。
 確かに栄養をとって眠ればよくなるかもしれないなんて想いながら、オズウェルは馬に向き直った。
 そこへ。
「わーい、馬車だ! 馬車で旅なんてはじめてだよ! 大事なお仕事だってわかってはいるけど、ワクワクしちゃうよね!」
 お泊まり道具を詰めた鞄を手に、『魔法騎士』セララ(p3p000273)がやってきた。馬車の周りをくるくると駆け回っている。
 ふと振り返ると、いつのまにか合流していた『年中ティータイム』Suvia=Westbury(p3p000114)が頬に手を当ててなにやらうっとりしていた。
「今回のお仕事でお金をためて、茶葉を買うんです。素敵な茶葉を見つけたので、なんとしても成功させて手に入れなくては……」
 準備もモチベーションも充分なようだ。
 他のメンバーも集まってきて馬車にそれぞれの荷物をちょこちょこと乗っけていく。
 風呂敷包みを乗せる『生き人形』雫(p3p002862)と、皮の鞄を詰め込む『銀閃の騎士』リゲル=アークライト(p3p000442)。
「遠回りをすれば安全だけど、やっぱり……」
「ええ、近道しましょう。早く着くにこしたことはないでしょうし」
「だよね。朝まで待てば森も安全にぬけられるけど」
「夜のうちで構わないわ。それに……多少危険な方が楽しいでしょう?」
 小首を傾げてみせる雫。
 その後ろで『双刀の朧月』玉藻前 久右衛門 佳月(p3p002860)が腕組みをしてうんうんと頷いていた。
 分身能力で手伝いができたり戦闘に加わったりできるという話もしたばかりだ。
「けど急いでも一泊二日になるんでしょ?」
 いつの間にか屋根に乗っかっていた『魂の牧童』巡離 リンネ(p3p000412)が頬杖をついて見下ろしてくる。
 うーんと背伸びをして、リラックスする顔をした。
「無益な死っていうのもシゴトじゃないしねー。ま、一肌脱ぎますか」
「うん」
 胸に手を当てるリゲル。
「騎士の誇りにかけて、必ず薬を届けよう!」

●通り抜けたい場所がある
 突然だが、夜。
 セララは揃えた二本指を右目の前でピッと開いた。
「セララ・アイ! きゅぴーん!」
 目がキラリと七色に光ったとか光らないとか。セララは温度視覚で周囲の風景を探り始めた。
 一見して森。木々の上には小動物らしき何かがいて、通行人であるところのこちらを観察しているかのようだった。
 時には鳥が頭上を通り過ぎ、それがぼんやりと見えてくる。
 セララは馬車の後ろを開いて、後方の見張りを続けていた。
 一方で馬車の前方、御者席にはリゲルが腰掛けていた。
 彼も透視や温度視覚を使って周囲を探っている。
 このおかげで、夜中でも充分に敵の接近に気づくことが出来た。
 例えばこんな風にだ。
「皆起きて、前方に人影がある。集団だ」
 小声で呼びかけたリゲルに応じて、休憩していた小梢とオズウェルがぱちりと目を開ける。
 馬を狙って矢が放たれたが、飛び出した小梢が鍋の蓋で弾き、飛んできたかぎ爪つきの縄を佳月が刀で切断する。
「他にはいる? 何チーム?」
「1チームだ。迎え撃とう」
 リゲルは馬と馬車を守るように銃撃で牽制を開始。
 それをかいくぐって迫る数人の盗賊の眼前に、くるくると何かの小瓶が迫った。
 ばきんと割れる小瓶。ぎゃあと悲鳴をあげ、盗賊の一人がもんどりうって転倒した。
「このお茶はとっても苦いからご注意くださいね。それはもう、人が飲めないくらいで」
 馬車の上に立ち上がったSuviaが液体の入った小瓶を無数に指の間に挟んで構える。
「くそっ、護衛つきかよ! お頭を呼べ!」
 一人の盗賊が逃げ出した。
 残りの盗賊が襲いかかろうとライフルを構えるが、オズウェルの生み出したマジックロープが手首や肘に巻き付いて銃口を無理矢理上げさせた。
 明後日の方向へ飛んでいく弾。
 オズウェルはリゲルに『止めなくて大丈夫だ』と伝え、追いすがろうとする盗賊たちにさらなる牽制を放っていく。
 ライフルを手にした盗賊が路上に飛び出すが、オズウェルの遠術をくらって倒れた。
「おわりかな?」
「そうでもなさそうだよ」
 おたまを持った小梢が鍋蓋の影から顔を出す。
 セララが飛行をはじめ、馬車の後ろにつくように飛び始めた。
 蹄の音が近づいてくる。それも複数だ。
 馬車を両サイドから挟むように、二頭の馬にそれぞれ二人乗りした盗賊たちが追いついてきたのだ。
 馬の後ろに乗った盗賊がライフルで射撃してくる。
 セララと小梢はそれぞれ盾を翳して射撃を防御。
「諦めないみたい。帰って貰わないと」
「出番みたいね。踊らせられる?」
「あいよー。そこそこ」
 馬車の上によじ登ってきた雫が、最初からそこで見張りをしていたリンネと共に戦闘の構えをとった。
 といっても二人とも独特なものだったが。
「それっ」
 ベルのついた杖をりんごんと振り回し、遠術を飛ばすリンネ。
 追いつく寸前だった盗賊にヒットし、盗賊は馬の制御を失敗した。
 一方で雫。
 は目をぎらりと光らせて手を翳す。
 すると、まるで長い髪の毛のような呪術が盗賊の身体に絡みついた。
 一度Suviaの毒薬(?)を食らっていたらしく、それも相まって盗賊はひどく苦しんで馬から転げ落ちた。
 それぞれ馬が暴れ、後ろにのった盗賊もろとも転げ落ちていく。
「止まれば仲間が追ってきそうだ。このまま行くよ」
 リゲルの呼びかけを聞いて、すとんと座るリンネ。
「ごめん、死んでたらあとで成仏させてあげるからね」
 馬車はがたがたと森を進んでいく。
 Suviaは小瓶をポケットへしまうと、ひょいっと馬車の荷台へと下りた。
「森を出たら球形にしましょうか。疲れのとれるお茶をいれますね」

●夜は長いから
 ぱちぱちと音を立てる薪。炎が闇をかきわけて、あたりを暖かく照らしていた。
 揺れる灯りに照らされて、からからと人形を動かす雫。
 雫は仲間たちに人形踊りの演目を披露していた。
 洗練された動きや空気は見る者を夢中にさせ、セララたちは幾度も拍手を送っていた。
「……」
 そんな空気からちょっぴりはなれたところで、オズウェルが馬に水を与えていた。
 危険のある2日の旅路。休みなしで進めばそれだけ早く進むことはできたかもしれないけれど、しっかりとした休憩をとらなければ皆精彩を欠いていく。馬の疲れも深刻なものになるだろう。
 薬をいち早く届けたい気持ちもあるが、依頼人の財産でもある馬と馬車をあまり傷付けずに返してやりたいという気持ちもあった。
 そんなわけで、彼らはたき火を囲んで休憩することにしたのだった。
「うーんむにゃむにゃ、もうカレーはたべられないよ」
「……」
 馬車のそばでリンネがすやすやと眠っている。横では佳月が腕組みをして馬車をみはっていた。
 オズウェルは暫く、佳月とお喋りをして過ごすことにした。

「さあみんな、カレーができたよ」
「わあい」
 小梢がお鍋に作ったカレーを掲げた。
 彼女の作ったカレーのおいしさたるや凄まじく、旅の途中でちょちょっと作った筈なのに高級なお店出ててくるようなグレートな仕上がりだった。
「魔法料理人セララ参上! 皆の胃袋をハートキャッチだよ」
 カレーばっかりだと飽きちゃうかもと気を利かせてセララがサンドイッチとか作ってくれたのだが、びっくりすることに小梢のカレーに飽きることはなかった。
 一週間コレでも飽きないんじゃないか、とまでは言い過ぎだろうか。
「くやしい……結局三食カレーを食べてるボクがいる」
 サンドイッチとカレーをそれぞれぱくつくセララ。
「カレーは無限の工夫ができる完全食だからね」
「魔法料理人としてまけられないっ!」
 セララと小梢がはりあっている中、Suviaが人数分のカップを持ってやってきた。
「皆さん、お茶が入りましたよ。長い旅になりますから、気持ちがすっきりするお茶を」
 目を覚ましたリンネや見張りや馬の世話を交代したオズウェルや佳月たちがやってくる。
 たき火に薪を足して、リゲルがにっこりと笑った。
「ありがとう。皆のおかげで長旅が快適にできてるよ。気分転換でもどうかな」
 リゲルは仲間にカードゲームの誘いをした。

●サソリの谷
 一行の旅路は順調だった。
 馬が機嫌を損ねることもなく、盗賊に荷を奪われたり大けがを負ったりすることもない。
 ご飯で手を抜いて体力が落ちることもなかったし、定期的にいれてくれたお茶で集中して作業をこなすことができた。
 たまに遊びを提供しあうことで気分がだらけることもなく、全体的に楽しく落ち着いて旅をすることができた。
 しかしトラブルは突然に起きるもの。
 谷を進む途中、がたんと音を立てて馬車の車輪が壊れてしまったのだった。
「どうかな」
「……疲労、みたいだね」
 商人が幻想まで急いだことで車輪に無理が重なっていたのだろう。
 壊れた車輪は捨てて、新しいものに交換しなければならない。
 破損箇所を診断したオズウェルは、予備の車輪を荷台から引っ張り出し始めた。
 そんな隙をつくかのように、谷のあちこちからかたかたという音が聞こえてきた。
 いち早く気づいたのは周囲を警戒していた小梢だ。
 姿を見せたサソリのモンスターたちに鍋蓋を構えた。
「すぐにできる?」
「……五分、あれば……」
 オズウェルがぱっと振り返ると、『まかせろ』とばかりに佳月が分身していた。
 それぞれ馬車に駆け寄ってオズウェルのサポートを始める。
「うん、三分でできそう」
「オーダーりょーかーい」
 飛びかかってくるサソリを鍋蓋で受け止める小梢。
 その隙を突いて別のサソリがしっぽの毒針を繰り出してくるが――。
 すっと割り込んだSuviaが代わりに毒針を受けた。
「うーわ、大丈夫!?」
 飛行して戦闘モードになったリンネが慌てて駆け寄るが、一方のSuviaはまるで平気そうだった。
「平気です。日頃から毒消しのお茶を呑んでいますので」
「お茶無敵すぎる」
「ボクも日頃からグリーンカレー食べてるから」
 小梢がむんという顔をして振り返った。なんか顔が緑色だった。
「全然毒ってるー!」
 うりゃーと言いながら毒消しの祈り(?)を捧げるリンネであった。

 サソリは馬車の進行を阻むかのように前後に展開していた。
 ここを通る獲物を確実にしとめるために普段からこうしているのかもしれない。
「けれど、俺たちは餌になってやるわけにはいかないんだ!」
 こっちへ来いとばかりに天空に射撃をしてみせるリゲル。
 後方の守りを小梢たちに任せて、自分は前方の守りに専念することにしたのだ。
 リゲルの挑発をうけてサソリたちが次々と飛びかかってくる。
 それをリゲルはマスケット銃で殴りつけたり盾で打ち払ったりしながら振り払っていく。
「手伝うよ! 片方は任せて!」
 魔法で飛行したセララが盾を構えてサソリにプレスアタックを仕掛けていった。
「小さいからって甘く見ないでね」
 剣をずばっと抜いて、側面から掴みかかるサソリを切り払う。
 馬車の前に立った雫が、まだまだ沸いてくるサソリたちに視線を走らせる。
 ちらりと見れば、馬車の修理がそろそろ終わりそうだ。
「三分とかからなかったわね。みんな、馬車を出すわよ、早くのって」
 雫が髪の毛のような針を無数に投げると、サソリたちにざくざくと刺さっていった。
 ぴょんと馬車の荷台に飛び乗る雫。オズウェルが手綱を握り、馬を走らせ始めた。
 リゲルも銃で牽制しながら走り出す馬車へとダッシュ。
 セララはギリギリまで戦ってから飛行して馬車の柱につかまった。
 サソリたちは更に集まってきていたが、速度ののった馬車においつける程の足はない。
「なんとか峠は越した感じかな」
 遠ざかるサソリの群れを眺めながら、リンネは杖でぽんと肩を叩いた。

●届けたい人がいる
「お待たせー! ジェイサムさんからのお届け物だよ! 病気のひとに持って行ってあげてね!」
 薬の入った瓶を高く掲げ村を走るリンネ。
「依頼は済んだけど、もうひとがんばりしようかな」
「ああ、皆を病気から救えるように頑張ろう!」
 セララとリゲルが腕まくりをして村の家々への配送を手伝い始める。
 小梢やSuviaもこれなら任せてといった得意分野のある身である。誰に言われるでもなく村のあちこちへと歩き出した。
 そんな様子を見ていたオズウェルや雫や佳月たちも、それぞれ顔を見合わせて仲間たちに続いた。

 こうしてジェイサム商人の手に入れた薬は、彼が持ち帰るよりずっと早く村の人々へと届いた。
 病に苦しんでいた人々もその日の夜には落ち着きを取り戻し、かいがいしく世話を手伝ったイレギュラーズたちのおかげで傾き書けていた村のサイクルも取り戻された。
 翌朝、彼らは沢山貰ったお土産を馬車に載せた。
「さてと、馬車をジェイサムさんに返しに行こう」
「今度は安全な道でゆっくりね」
 彼らの旅は、まだもう少しだけ続く。
 楽しくて豊かな、あったかい旅路として。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お帰りなさいませ、イレギュラーズの皆様。
 戦うばかりの依頼では見られない、食事や娯楽や安全確保といった分野の特技が沢山発揮されておりましたね。皆様、大変輝いておられました。
 なにより村の人々のために最短距離を突き進むその気概、ご立派でございます。
 きっと村の人々の感謝はお金以上の価値をもったことでしょう。

 それでは皆様、名残惜しゅうございますが、また次の依頼でお会いしましょう。
 ごきげんよう!

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