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シナリオ詳細

希望遊戯イフス・ローレット

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●副長、休暇を取る
 ゼノンは首を傾げた。机に出していた町全体の見取り図が無くなっている。
「おかしいな。確かにここに置いておいたのに」
 彼は幻想の田舎町デルーダの警護団で副長を務めており、今日は警備ルートの見直しを行うつもりであった。ふと机から視線を離すと、近くで武器の整備をしていた部下達と目が合う。直後、露骨に視線を逸らされたものだから、なぜこんな事をしたのかと視線で無言の圧力をかけてみる。

「だ、だって今日、ゼノン副長は非番じゃないですか! 何で普通に仕事しようとしてるんです?!」
「非番で外回りしなくていいなら、休みを業務改善にあてたっていいだろ」
「休みの使い方、間違ってません?!」
「そうかぁ?」
「たまには仕事から離れて、気晴らしでもしてくださいよ」

 それがいい、と見取り図を隠した部下に周りが同調し、ゼノンは仕方なく警護団の拠点から外へと足を向けた。背中を見送りながら、部下達はヒソヒソと声を落として話す。

「大丈夫かなぁ、ゼノン副長。あの人、仕事人間だから…」
「確かに。休みの日も拠点で労いに飯作ってくれたり、俺達の世話してくれるもんな」
「ありがたいんだけど、少しは体を休めて欲しいしなぁ…」

(俺は別に苦痛じゃないんだが、よくよく考えてみれば上司が四六時中、拠点に居座ってるっていうのも息が詰まるもんだよな)
……とはいえ、自分にとっては仕事が趣味のようなもの。遊び上手な団長と違って、暇を潰す術を持ち合わせていない。

 休日の過ごし方が分からず途方に暮れているゼノンだったが、ふと町中で見知った顔を見かけ、目を見開く。
 赤い電波の輪を頭上に輝かせる強面の男。確か、冬越 弾正と名乗っていたか。そういえば、彼の仲間であるギルド『ローレット』のメンバーに、"もっと我儘を言ってもいい"と助言を受けた事がある。

(……頼っていい、って事だよな。多分)

 ダメ元で助言をもらおうと、ゼノンは弾正の背中へ声をかけーー

●仕事人間、仕事で遊ぶ

「さっそく、今日の依頼の概要を説明しよう」

 数時間後。ローレットには4人の特異運命座標とゼノン、そして弾正の姿があった。
 テーブルを連結させて作られた広いスペースには、色とりどりのコマやカード、ゲームボードが置かれている。"ゲームマスター"と書かれた腕章を腕に着け、弾正は集まった特異運命座標たちを見回す。

「依頼の内容はズバリ、ゼノン殿とボードゲームをして遊ぶという内容だ。その名も『イフス・ローレット』。練達のゲーム即売会で買ってきたんだが、これがまた楽しくてな!
 皆に遊んで欲しいと思っていたところなんだ」

 ボードゲームの中には『ワーカープレイスメント』というジャンルがある。
 噛み砕いて説明すると、プレイヤーが企業の経営者となり、部下にいろいろな仕事をさせたり、売上で得た資源を使い企業を大きくしていく事で、勝利点を競うゲームだ。
 勝利点にこだわるのは勿論だが、自分の好きな施設を作って企業のコンセプトを固めたり、部下をエリートに成長させて大切に育てたり。
 勝ちをめざす以外にも色々な楽しみ方がある。

 弾正が持って来た『イフス・ローレット』は、プレイヤーが腰を痛めたレオンの代わりにギルドを経営し、最終ターンまでに多くのパンドラ(勝利点)を稼ぐ事で競うゲームだ。

 パンドラを稼ぐ方法は沢山ある。ローレットに舞い込む依頼を解決するのは勿論、闇市に人をやってレア装備を手に入れたり、情報屋を増やして特異運命座標の動きをサポートさせるのもいいだろう。
 成果をあげれば様々な国の土地を買い上げ、支部や施設を建てる事もできる。

 なるほど、とゼノンは顎に手を当てて盤面を眺めながら口元を緩ませる。
 最初はゲームをすると聞いて子供の遊びでもやるつもりかと思ったが、要は経営者としてのシミュレーション。警備団の副長として組織をどう営めばいいかの訓練になる。
 仕事に通じる物であれば、好ましい。

「俺、遠慮なくやるつもりなんで」

 ゼノンの目に鋭い光が宿る。さて、最初の手番はーー

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! NMの芳董です。
 こういうボードゲームが欲しいなぁ、を詰め込みました。

※Warning※
 こちらはライトシナリオです! そのため、いつも以上にアドリブが多めに入ります。アドリブが苦手な方はご注意ください。
 また、今回はボードゲームの性質上、順位がつきますが、芳董の方でダイス判定で順番を決める予定です。

⚫︎目標
 ゼノン(NPC)と一緒にゲームで遊ぼう!

⚫︎どんなゲームで遊ぶの?
『イフス・ローレット』というボードゲームで遊びます。
 ゲームのジャンルは「ワーカープレイスメント」。 要約すると、貴方はローレットの経営者となり、働き手である特異運命座標に色々な仕事をさせて、ローレットを繁栄させる……というゲームです。

 勝利条件は、決められたターン数の中で、最も多くのパンドラ(勝利点)を稼ぐこと。
 パンドラはゲーム上の色々な手段で稼ぐ事ができるので、プレイングでは「自分がローレットの経営を任されたらどんなローレットにしたいか」や「ゲームを遊ぶ時にどんな事にこだわるか」など、自由に書いていただいて問題ありません。

 ゲームのボード上では皆さんは経営のライバルですが、一緒にゲームを遊ぶ仲間ですので、お茶菓子を持ち込んでシェアしたり、NPCに話しかけるのもいいでしょう。

⚫︎ゲーム内にあるもの
 プレイングをかけるにあたって、イメージを膨らませるためのフレーバーです。資源チップやカード等、好きな物をプレイング内で作っても構いません。

 特異運命座標コマ(ワーカー)
  各プレイヤーが雇っている働き手です。4人分のコマがあり、ゲームのプレイングによっては増える場合があります。
  プレイヤー全員が自分の特異運命座標コマに仕事をさせきったら、ターンが終了します。

 共通ボード
  無辜なる混沌が描かれた巨大なボードです。ボード上には「依頼を受ける」「闇市を回す」「NPCを探す」「ローレットを強化する」などの行動が行えるスペースがあり、そこへ特異運命座標コマを置いて仕事をさせます

 資源
  パンドラ(勝利点)の他に、ローレットの強化や闇市を回す時などに使うGOLDのチップ、他にもパンツやら酒やらうどんやら、色々なチップがあるようです。

 カード
  このゲームではカードによるランダム要素が多くあります。
  どんな種類の依頼がローレットに舞い込んでいるのかを示す「依頼カード」、闇市などで手に入れられる「アイテムカード」、敵から味方まで様々な種類のある「NPCカード」、ローレットをどのように強化するか方針を決める「経営カード」があります。

⚫︎NPC
 冬越弾正(ふゆこし だんじょう)
  ローレット所属の音の精霊種。特異運命座標。
  今回のゲームをサポートするゲームマスターです。難しい事がわからないPCさんでも、親切丁寧にアドバイスをくれます。

 ゼノン
  幻想の田舎町デルーダの警護団で副長をしている男性。現場では参謀役を担っており、依頼を通してローレットに信頼を置くようになりました。腕利きのスナイパーでもあります。
  重度のワーカーホリックで、今回は働きすぎにより警護団から暇を出されてしまい、ローレットに暇潰しを依頼しました。
  ゲームのプレイスタイルはコツコツ慎重派。依頼や闇市、領地経営などまんべんなく手を出して堅実にパンドラを稼ぐようです。

 説明は以上となります。それでは、よいゲームを!


プレイスタイル
 当シナリオにおけるキャラクターのプレイスタイルを、以下のうち近いものからお選び下さい。

【1】バランス型
依頼もその他も、バランスよくこなす事で手堅い経営を行う事を目指します。
ゲーム終了時にボーナス条件を満たしやすく、安定してパンドラを稼ぎやすいです。

【2】ギャンブル型
セオリー通りに遊ぶより、ゲームはやはり運否天賦。
ハイリスク&ハイリターンな選択肢を積極的にとっていきます。
上手くハマれば多くのパンドラが稼げますが、失敗すれば経営難に?!

【3】コンセプト型
「ローレットをお花屋さんとしても有名なギルドにしたい!」「シュペルシリーズのアイテムを揃えてコンボをきめたい!」「天義の依頼を受けまくって天義に支店を建てたい!」など、自分がゲーム内で目指したいコンセプトを大切にするゲームスタイル。
 強さは目的と手元のカードの噛み合わせ次第だが、上手くいけばコンスタントにパンドラが稼げる。
 勝利するかどうかはさておき、ゲームが終わって盤面を見た時の満足感は高い。


プレイ中の様子
 当シナリオにおけるキャラクターのゲーム中の様子に近いものをお選びください。

【1】ゲーム初心者
ボードゲームってあまりやった事がない!
あたふたする事があったり、ワクワクしたり。一喜一憂します。

【2】ベテランの風格
ボードゲーム熟練者、もしくは知能戦に手慣れている者のソレ。落ち着いてゲームをプレイします。

【3】ポーカーフェイス
焦りも喜びも全て、ポーカーフェイスで表にせず優雅にプレイします。
内心ではテンパっている事も?!


重視するリソース
 当シナリオにおけるキャラクターが重要視するリソースはどれかお答えください。

【1】特異運命座標コマ
特異運命座標コマを増やしたり、レベルを上げるなど、ワーカーを大切にします。

【2】アイテムカード
闇市や依頼などで、色々なアイテムを集める事にこだわります。

【3】NPCカード
情報屋やネームドの特異運命座標、魔種など人物カードとの縁を大切にします。

【4】経営カード
ギルドの施設を拡充したり、他国に外交したりする事を大切にします。

【5】依頼カード
ギルドに届く依頼の解決を大切にし、高難易度の依頼を解決する事を大切にします。

  • 希望遊戯イフス・ローレット完了
  • ローレットの経営者になるゲームで遊ぼう!/NPCゼノン、冬越弾正
  • NM名芳董
  • 種別 カジュアル
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年08月24日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談0日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
月夜の魔法使い
猪市 きゐこ(p3p010262)
炎熱百計
レイン・レイン(p3p010586)
玉響
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く

リプレイ

⚫︎
 地獄の様にうだる暑さが続く日は、室内遊びが捗るものだ。空調の効いたローレットの室内で、『無辜なる混沌』を描いたボードを挟み、5人のプレイヤーが顔を合わせる。
 ゼノンから順に時計回りで『慟哭中和』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)、『炎熱百計』猪市 きゐこ(p3p010262)、『玉響』レイン・レイン(p3p010586)、『修羅の如く』三鬼 昴(p3p010722)の順に円卓の席へ。
 ゲームを始めるにあたり、全員の手元にへ初期資産が配られた。四人の働き手となる特異運命座標と、軍資金の500GOLD。そして初期の経営カードとアイテムカードだ。

「なるほどね。最初にもらえる経営カードがランダムだから、遊ぶたびに最初の立ち回りも変わってくるという事かしら?」
「おお、素晴らしい観察眼だな、その通りだ、きゐこ殿」
「中々楽しそうなゲームじゃない! 私こういうの大好きだわ!」

 弾正の賛辞を背に受け早速ボードゲームの分析をはじめたきゐこは、ベテランの風格だ。盤面を粒さに観察し、早くも最初の一手をどうするべきか思考をフル回転させている。
 その隣でフッ…と腕を組んだまま不敵な笑みを浮かべる昴。

「あら。昴さんはもう最初の動きが決まったの?」
「無論だ。要は私がローレットを経営する場合、何を成すか示せばいいのだろう?」

ーー力は全てを解決する。

 長い前髪の奥に隠れた瞳は、ボード上のある一点を見据えていた。
 一方、戦略を練る上級者達の隣では、レインがゲーム開始前の手伝いとしてトークンを盤面に並べている。

「…くらげトークン…あるんだ…」

 薄ピンク色の小さなくらげトークンは、触れると少し柔らかい素材で出来ている。制作者のこだわりを感じられるそれは、どうやら特定の条件を満たすと手元に増えて、施設や依頼の役に立てる代物らしい。どんな条件で使える様になるのかレインはほわほわと想像の翼を広げてみるものの、結局予想がつかずじまいだった。と、いうのも……

「…こういうの…初めて…」
「レイン様もですか? 実は僕も初心者なんです」
「…本当? 一緒に…頑張ろう…」
「はい。頑張りましょ――わっ」

 ジョシュアが冷たい深緑茶を配りながら微笑みかける。その肩にぬるんと冷たい物が飛び乗った。

「あら。ギルドの中にスライムが紛れ込んだのだわ?」
「そいつはいいんスよ。知り合いで腐れ縁なんで」

 きゐこの驚きの声と拳をベキバキ鳴らして立ち上がりかけた昴に、ゼノンが早口でフォローを入れた。
 ジョシュアに懐くこのスライムはニナ。元はゼノンを襲った悪い魔物だが、今は毒気が抜けて無害だという。

「ゼノン様、お久しぶりです。身体はもう大丈夫ですか?」
「見ての通り。完調したっつってるのに、部下達がどうにも休ませたがりで」
「それは皆さんがゼノン様を大切にしているからですよ」

 ジョシュアの素直な感想に、ゼノンは微かに口角をつり上げた。

「俺の準備は出来てる。早速始めよう」

⚫︎
「ゲームの基本はワーカーを動かす事。まずはその特異運命座標のコマを仕事をさせたい場所に置くところからだ」

 やってごらん、と促されてジョシュアは悩んだ末に依頼の受注スペースへ駒を置いた。手前に並べられた『依頼カード』の中から受けたい仕事を探し、成功できたら報酬を得られるそうだ。

「僕はこの『薬草の採取』を引き受けます。具合の悪いおばあさんを助けてあげられると書いてあるので」

 幸いな事に手元へ巡ってきたアイテムカードで薬学知識を使えるようだ。効率的に依頼を成功させる事ができ、少ない労力で報酬を得る事ができた。

(このおばあさん、足腰が悪いけど、まだ薬草は必要みたいですね。もっと簡単に手に入れられるようになる方法はないかな……?)

 手番が終わり、早速やりたい事を考えはじめたジョシュアの隣で、きゐこが自分のワーカーを動かす。

「ローレットといえば、やっぱりお困り事の解決よね。アイテムカードの『星読み眼鏡』を発動だわ!」
「星読み…?」

 カードを読みやすいようにと、きゐこがレインへ『星読み眼鏡』を見せる。

「依頼カードを選ぶ時に、場のカードだけじゃなくて山札からも依頼を選べるのよ」

 引き受けられる仕事の選択肢が増えれば、効率的にワーカーを派遣する事ができる。きゐこは練達の夜妖討伐を解決し、報酬を手元に集めた。

「貰えるGOLDは少ないけど、その分アイテムカードの『aphone』を手に入れられたわ! 次からの練達の依頼は楽できそうね♪」
「…もうカードを使いこなしてる…上級者…」

 まずは依頼で報酬を得ない事には始まらない。レインがたまたまクリア出来る依頼カードを手に取ると、その報酬はGOLDが少ない代わりに関係者カードを貰えるという効果があった。手に取ってみると、カードの中に描かれた『音の精霊種・柳生達郎』が「ご一緒させてくだされ!」とばかりに微笑みかけてくる。

「達郎の効果…毎ターン、少しお金が貰える…」
「それは便利だな。序盤に引けたのは運がいいんじゃないか?」

 私も負けてられないな、と昴は腕を組んで盤面を眺める。

「GM、ゲームを始める前に聞いたルールだと、同じ場所にワーカーを派遣する時は、一度に好きな人数を送れるんだったな」
「如何にもそうだが、マニアックなルールをよく覚えていたな、昴殿」

 大抵のプレイヤーは、初見のゲームで複雑なルールを聞かされると基礎的な部分のみ覚えるものだが、昴の場合は"やりたい事"に必要な部分を集中的に頭の中へ叩きこんでいた。ごそっと手元のワーカーのコマを掴み、依頼スペースに豪快に置く。

「私は全ワーカーを使って難易度Hardの依頼カードをクリアさせる」
「HARD? 僕達まだEASYをクリアしたところなんですが!?」

 強そうな魔物の描かれた依頼カードを昴が手に取り、ジョシュアが目を見開く。戦いは熾烈を極めたが、重症になりかけたワーカーを使い捨ての回復アイテム『ポーション』で叩き起こし、彼女は見事に依頼を達成してみせた。裂いたリソースは大きいが、手元に返ってくる報酬は当然デカい。

「随分と振り切った立ち回りっスね」

 後手番のゼノンは考え込んだ後、施設カードの『訓練所』をギルドに増設した。ワーカーの攻撃力を上げ、戦闘依頼を成功させやすくするつもりらしい。

「そういうゼノンさんは堅実な手を打つじゃない」
「きゐこは気づいてるかもしれないっスけど、皆と別の場所にワーカーを派遣するとボーナスがあるみたいなんで」

 しれっとのたまうゼノンの目は本気だ。盤面をよく見てワーカーを手配している――初心者・上級者問わず、特異運命座標たちはゼノンが強敵であると気付いた様だ。ならばどうローレットを成長させようかと、誰もが知恵を振り絞り、手持ちのコマを様々な場所に派遣して――


「ああぁ! あと歯車トークンが1個足りないわ!」

 目の前にある『鉄帝生産工場』の施設カードを前に、きゐこは手札とボードを交互に見た。フードや前髪に隠れた瞳に焦りが浮かぶ。
 無理をすれば施設を増設できなくもないが、他のワーカーでやりたいと思っていたゴーレム開発に素材回収のクエストを1工程挟まなければなくなってしまう。やりたい事の成功を優先したがゆえに、リソースが足りなくなっているのだ。

「きゐこ…困ってる? 僕のNPCカード…手伝わせても、いい……よ」
「ピンポイントなの持ってるじゃない! さすがレインね!」

 ターンを繰り返すうちにゲーム慣れしてきたレインは、もすもすと蒸しパンを食べながら自分の盤面を視線で示した。どの依頼も失敗がない様にと他のプレイヤーのサポートを重点的に行い、結果的に彼のローレットには便利な能力持ちのNPCが多く集まっていた。

「これで私のローレットでは、魔道アイテムの量産が出来る様になったわ」
「なんというか、魔科学の施設めいてきたな。きゐこのローレットは。……そのおかげで私の攻撃力が跳ねあがる」

 極限まで鍛えられた昴のワーカー達が、ついにはVERY HARDの依頼で巨大な蜘蛛の魔物を蹴散らした。スタートからブレずに魔物と戦い、訓練施設で鍛え、闇市で装備を固め――鍛え上げられたその姿は、ある種、軍隊めいていた。

「魔物と戦闘力で大差がつくようになりましたね」
「万全の状態で挑めるおかげだ。今回もジョセの施設を使わせて貰うぞ」
「いつもご利用ありがとうございます」

 ジョシュアのギルドは今や、薬学研究所のおかげで栄えていた。最初に助けたおばあさんをきっかけに、治療薬の開発と緑化で収益と名声を得られるよう整備したのだ。結果的に毎ターン、依頼にいかなくても十分なGOLDを稼ぐ事ができている。

「ニナ様、施設カードを取ってくださいますか」

 スライムに山札の上からカードを持って来させ、確認したジョシュアは目を丸くした。

「この施設…『硝子の向日葵畑』を建てたら勝利点が100溜まります!」
「ジョセ殿がエンドを切ったな。この出番でゲーム終了だ」

 GMから告げられた最終ターンに皆が息をのむ。

「あっぶない! 危うくやりたい事をやりきる前に終わるところだったわ」
「私も何とかNIGHTMARE依頼に滑り込めそうだ。レインは…凄いトークンの数だな」
「昴の依頼…僕、サポートする…。くらげトークンの、数だけ…攻撃アップ……」

 最後の最後まで勝負はどう転ぶか分からない。わいわいと賑わう中で、ニナがのすりとゼノンの肩にのった。「楽しいか?」と言わんばかりだ。

「俺、今までゲームなんて、やるだけ時間の無駄だって思ってたっスけど」

 ゼノンの瞳に楽しそうな特異運命座標たちが映り、瞳が好奇心に輝く。

「十人十色、いろんなギルドの育て方があった。誰かを知るのに、こんなに面白いツールはないっすね」

 彼の表情を見て弾正は確信した――この依頼、間違いなく成功だと。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

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