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シナリオ詳細

ケイオス・シャークバズーカVSデビル・フランケンめんだこVSマール・ディーネー

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ケイオス・シャークバズーカVSデビル・フランケンめんだこ
 今、シレンツィオ・ビーチを舞台に、人類史最大最強の魔神が目覚める――!
 焼け落ちる都市(CG合成)!
 ケイオス・シャークバズーカから放たれる強烈な荷電粒子砲!
 迎え撃つ、もう一体の魔神、デビル・フランケンめんだこ――!
 勝手に戦って勝手に死ね! この夏最大スペクタクル!
 2体の魔神を相手に、果たして人類は生き残れるのか――。
 『ケイオス・シャークバズーカVSデビル・フランケンめんだこ』
 カミングスーン……。

「いやぁ、これは大作映画になりますねぇ」
 と、映画監督に適当なおべっかを言うのは、映画配給会社の人間である。
 サメ映画。
 それは、サメが出てくる映画である。
 サメといってもただのサメではなく、ロボだったり、幽霊だったり、高次元の存在だったり、神だったりする。
 でもサメである。
 サメであるという基本は外さず、しかしサメにありとあらゆる属性を付与して暴れさせる。
 そういうジャンルの映画である。
 だいたいはB級、いや、CからZまで、とにかく「メインストリームには決して登ってこない」タイプの映画になるわけだが、この手の映画には、なぜか愛好家がやたらといて、制作予算の割には結構みんな見てくれるのである。特に再現性東京あたりだと、鮫映画は大人気だ(要出典)。
 そんなわけだから、混沌世界でも鮫映画は、なんか知らないが「それなりに、それなり」という地位にいた。そのため、なぜか定期的にサメ映画はこの世に誕生し、それなりの利益を生み出し、映画史の闇に消えていったり消えなかったりしていった。
 ここは、アホウドリ映像社の新作、『ケイオス・シャークバズーカVSデビル・フランケンめんだこ』の撮影場所である。何故か奇跡的にシレンツィオ・ビーチの使用許諾が下りてしまい、制作陣は「明日世界が滅ぶのかもしれない」とか思いながら、それでもシレンツィオ・ビーチでの撮影を決行した。バイオ・マジック・テクノロジーで生み出したケイオス・シャークバズーカとデビル・フランケンめんだこをビーチで思う存分暴れさせ、一応の絵はとれた。あとはしょっぱいCGとかで誤魔化せば映像も完成である。そんな状況なわけで、先ほどの映画監督への適当なおべっかは、「クソ映画撮影お疲れ様でした」的な意味合いを込めての発言でもある。
「そうだねぇ、売れるといいねぇ」
 カスタードプリン・イースト林監督。言わずと知れた名映画監督である。名映画監督であるが、趣味でサメ映画を撮っている変人である。サメ映画を撮っている監督など、映画界隈では厄介者のように扱われているわけだが(偏見)、イースト林監督を配給会社が無下にできない理由は、とにかく「サメ映画さえ作らなければ巨匠」という一点に尽きる。でも、サメ映画を作らないとイースト林監督は狂って死ぬので、定期的にサメ映画を撮らせないといけないのである。
「売れるわけねぇだろ」
(いやぁ、大ヒットになりますよ!)
 配給会社の男がそういうのへ、イースト林監督がにこにこ笑った。
「本音と建前が逆だねぇ。まぁ、わかってやってるんだけどね。ライフワークっていうのかな。
 ある日、神が言ったんだ。君はサメ映画を撮るために生まれてきたんだよ、ってね。だから僕は映画監督になった……」
「狂ってるんですか?」
「そう、僕は映画に狂っているのさ」
 なんかそれっぽいことを言いながら、監督が笑った。と、そこで後ろの方から悲鳴が上がった。慌てて二人が振り返ると、そこには、檻から逃げ出して元気にビーチを駆けまわる、ケイオス・シャークバズーカとデビル・フランケンめんだこの姿が!
「なんかそんな気はしていたんですけど」
 助監督が言った。
「バイオ生物が逃げ出しました!」
「マジで!?」
 配給会社の男が目玉を跳び出さんばかりにびっくりした。
「いや、まずいでしょ! シレンツィオ・ビーチで問題起こしたら、僕はリアルに首が飛ぶよ!?」
「いや、待ってください、ジョニーくん」
 と、イースト林監督の目が光る。それは、映画人としての、監督としての、逃れらぬ宿業ゆえの瞳。
「今映画とったらすごい絵がとれる気がする……カメラを回せ!!!!」
 イースト林監督がそういえば、現場で逆らえるものはいない。というわけで、リアルに暴れる怪物たちを、クルーは撮影し始めたのである。
 ちなみにここまでの話で一番恐ろしい事実は、特にここまでの話を読む必要がないという事だ。

●なにもしらないマール・ディーネー(p3n000281)
「シレンツィオと言ったら、やっぱりアイスかなぁ」
 ふむふむとそういうマール。隣には、妹であるメーア・ディーネー(p3n000282)、そしてどういう組み合わせだろうか、鉄帝のラド・バウ闘士、メルティ・メーテリア(p3n000303)の姿があった。
 この三人(厳密に言うと、二人と一人)が出会ったのは、つい先ほどである。リトル・ゼシュテルへと休暇に来ていたメルティは、シレンツィオ・ビーチに足を運び、道に迷いそうになっていたところをマールとメーアに出会った。マールといえば、道に迷いそうになっている観光客に声をかけないはずがないタイプの人間である。いい子なのだ。そこで案内がてら、街を散策。どちらもローレットに世話になった人間として、話が弾まないはずがない。
「三番街は観光地で、二番街が下町って感じ。有名店とかみたいなら三番街で、穴場なら二番街だよね」
「なるほど。孤児院の方にお土産も持って帰ってあげたいのですよね。やはりこの場所ならでは、となると、三番街がおすすめでしょうか?」
「そうですね、高級なお店はたくさんありますよ。その分、とてもいいものがそろっています」
 にこにこと笑う、メーア。そんなわけで、三人は仲良くシレンツィオ・ビーチを歩いていたわけなのだが、そこで後方から、耳をつんざかんばかりの悲鳴が鳴り響いた。おや、どうしたのかな、と三人が振り向いた刹那、そこで目にしたものは、ケイオス・シャークバズーカと、デビル・フランケンめんだこの追いかけっこだ!
「あ」
 マールが声を上げた刹那、ケイオス・シャークバズーカがびゅん、とそのわきを通り過ぎる。わわわ、とバランスを崩した次の瞬間には、通りがかったデビル・フランケンめんだこが、その短い触手でマールを捕まえ、すれ違いざまに何となく持ち去っていってしまった!
「あ」
 メルティが声を上げた。
「わ、私が反応できなかった……?」
 わなわなとふるえるメルティ。それはさておき、メーアが、「わー!」と悲鳴を上げた。
「お姉ちゃん! お姉ちゃん!? そんなギャグマンガみたいなさらわれ方を!?」
「落ち着いてください。まだ慌てる時間じゃありません」
 メルティは、ふむ、と唸って、
「ごめんなさい、多分慌てるタイミングです。
 ローレットの支部に行ってきます!!!!!」
「お、お願いしますー!!!」
 メルティが大慌てでローレットの支部に向かうのへ、メーアがわたわたしながら、とりあえずケイオス・シャークバズーカとデビル・フランケンめんだこを追いかけていったのである――!

 さて、そんな混とんとした状況で仕事を依頼されたのが、あなたたちローレット・イレギュラーズだ!
 ケイオス・シャークバズーカとデビル・フランケンめんだこを倒し! マールちゃんを救出し! ついでに良い感じの絵面を監督に提供して映画を完成させよう! ファイト!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 サメ映画VSマールちゃんです。

●成功条件
 すべての敵を倒す。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●状況
 サメ映画、『ケイオス・シャークバズーカVSデビル・フランケンめんだこ』を撮影していた映画クルー。ふとした油断から、撮影用に作り上げたバイオマジカル生命体ケイオス・シャークバズーカとデビル・フランケンめんだこが脱走してしまいます。
 そんな時、シレンツィオ・ビーチに遊びに来ていたマール、メーア、メルティの三人。事件に巻き込まられた三人の内、またしてもなにもしらないマールちゃんが、おまけ感覚で攫われてしまいました――!
 一刻の猶予もありません!
 ケイオス・シャークバズーカとデビル・フランケンめんだこを倒し! マールちゃんを救い、映画クルーに説教しましょう。
 作戦決行タイミングは昼。周囲は砂浜になっています。少し動きづらいかもしれません。

●エネミーデータ
 ケイオス・シャークバズーカ ×1
  バズーカを持っているタイプのサメです。
  バズーカからは強力な荷電粒子砲を放ち、火炎系列のBSなどを付与する強力な遠距離攻撃を行ってくるでしょう。
  上述の通り、得手はバズーカ。基本的には遠距離攻撃タイプであり、接近戦には弱いタイプのサメです。

 デビル・フランケンめんだこ ×1
  悪魔の呪によって復活したフランケンタイプのめんだこです。
  悪魔の呪による強靭な肉体は、何者にも傷つけられぬ鋼の体。そして強力な触手の近接攻撃で、手痛いダメージを与えてきます。
  主に前衛に位置し、盾役と近接アタッカー役をこなします。見てるとなんかイラつくため、『怒り』がわくかもしれません。


●味方NPC
 マール・ディーネー
  巻き込まれた竜宮の少女。デビル・フランケンめんだこに捕まっています。
  特に戦闘に巻き込まれたりはしません。時々応援してくれます。皆さんへの、ちょっとしたバフになるでしょう。

 メーア・ディーネー
  巻き込まれた竜宮の少女。戦場の近くで「はわわ」ってなってます。
  特に戦闘に巻き込まれたりはしませんが、時々回復やバフを飛ばしてくれます。結構強力なユニットです。頼っても大丈夫。

 メルティ・メーテリア
  巻き込まれた鉄帝の少女。初めてのネタ依頼なので困惑しています。
  結構強力なユニットで、高い命中とCTによる強力な攻撃で敵にダメージを与えてくれます。
  が、はじめての変な依頼なので困惑しているため、このシナリオに限ってFBが凄いことになってます。

 映画クルーの皆さん
  皆さんも知っている天災映画監督の率いる一団です。
  皆さんの活躍を良い感じに撮影して、映画に利用しようとしています。
  手を出す必要も守る必要もありませんが、全部が終わったら一発叩いておくのもいいでしょう。こいつらが原因なので。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • ケイオス・シャークバズーカVSデビル・フランケンめんだこVSマール・ディーネー完了
  • 今、この夏最高の冒険が始まる!!
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年08月28日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
ノア=サス=ネクリム(p3p009625)
春色の砲撃
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー
フーガ・リリオ(p3p010595)
青薔薇救護隊
佐倉・望乃(p3p010720)
貴方を護る紅薔薇
ピリア(p3p010939)
欠けない月
カトルカール(p3p010944)
苦い

サポートNPC一覧(3人)

マール・ディーネー(p3n000281)
竜宮の少女
メーア・ディーネー(p3n000282)
竜宮の乙姫
メルティ・メーテリア(p3n000303)
エンゼルブレイド

リプレイ

●バトルオブビーチ
 そんなわけで、シレンツィオ・ビーチでケイオス・シャークバズーカとデビル・フランケンめんだこが暴れているわけである――!
「映画の撮影という事で、一般人の方がすでに避難していたのは不幸中の幸いでしたね」
 ふむ、と唸る『酔狂者』バルガル・ミフィスト(p3p007978)。
「そうですね……こんなことに巻き込まれるのは、私たちだけで充分と言いますか」
 メルティが嘆息した。こんなこと。危険なことでもあるし、妙な事、でもある。メルティはいまだに困惑の表情を隠せない。
「まったく、バニーさんに被害が発生するかもしれないとは。世界の損失です。
 そうでなくても、知り合いがさらわれたわけですから。真面目にやるとしましょう」
「バルガルさんは相変わらずですね……」
 メーアが苦笑する。
「でも、頼もしいです。よろしくお願いします」
「おねがーーーい!」
 めんだこの短い触手にわちょわちょされながら、マールがくすぐったそうに言う。めんだこの触手にはマールが捕まっていて、一応、戦闘に巻き込まれたりはしないようにセッティングされているわけだが。
「だとしても、心配よね」
 『春色の砲撃』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)が、周囲を警戒しつついう。幸い、前述したようにあたりに人はおらず、のんきに映画を撮影しているクルーが居るだけである。
「……マールちゃんの災難を引き寄せちゃう体質には困っちゃうわねぇ」
「うえーん、そんな体質じゃないよー!」
 ノアの言葉に、マールが声を上げた。
「……そんな体質じゃないよね?」
 ちょっと自信なかった。
「……ぎりぎり、セーフな気がするであります」
 『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)が頷いた。
「いえ、ヒロイン力が高い、といえばそういうものかもしれないですね。
 ヒロイン……期せずして映画のヒロインのようでありますね。巻き込まれた方としてはたまったものではないでしょうが……」
 そういって、映画クルーを見やる。さすがのムサシも、苦虫を嚙み潰したような顔をした。
「……撮影は安全面に配慮して迷惑がかからないようにしないと人の道として駄目でありますよ……?」
 ド正論である。
「すみません、一応、逃げないようにしていたのですが」
 助監督が困ったような顔をした。
「いや、そもそも撮影終わったらどうするつもりだったの? その面白ナマモノ」
 『苦い』カトルカール(p3p010944)が、本気で困惑した表情で言った。
「生き物はちゃんと最後まで面倒見ないといけないんだぞ!
 万が一当てが無いならサヨナキドリのコネクションで水族館とかのコーナーに展示してもらうからな!」
「ほんとですか!? あとでスタッフがおいしく食べようとしていたところですが展示しておいてください!」
 まさにやぶ蛇である。面白生物を押し付けられることとなってしまったカトルカールが、「しまった」とつぶやいた。口は災いのなんとやら。
「……どうも緊張感が感じられないんだよな、あのスタッフ」
 さて、『君を護る黄金百合』フーガ・リリオ(p3p010595)といえば、真面目な怒りを覚えいていたといえるだろう。そもそも、妻である『貴方を護る紅薔薇』佐倉・望乃(p3p010720)とのささやかなデートの最中に事件に巻き込まれたわけであるが、そうでなくとも、一般人に被害をもたらすかもしれない撮影方法はいただけない。さらに、ああも無責任というか、ノリが軽い……となれば、仕方あるまい。
「うう、海で可愛い水着を披露して、夏の限定スイーツを堪能して……っていう一日だったはずなのに」
 望乃も肩を落とした。災難といえば全くその通りであるといえた。
「うう、ごめーん!」
 マールがぺこぺこと頭を下げるのへ、フーガが頭をふった。
「いや、マールはほんとに被害者だからな……謝ることはないけど」
「そ、そうですよー! むしろ、怖い目にあってるのですから……!」
 わたわたと、望乃が手を振った。マールは確かに被害者であるが、なんだか申し訳なさそうな顔をしている。
「マールさん、うみちゃんも、しんぱいしてるの……」
 と、うみちゃんを胸に抱きながら、『欠けない月』ピリア(p3p010939)がしゅん、とした様子で言う。
「すぐに、たすけてあげるの! こわくないから、だいじょうぶなの~!」
 うん、と力強くうなづくピリア。マールはもちろん、メーアも頼もしそうに笑って返した。
「ピリアさん、お姉ちゃんをお願いします……!」
「まかせるの!」
 ぐっ、と胸を張るピリア。さて、一行の決意は固まった。とにもかくにも、この迷惑面白生物を何とかしなければならないわけだ。
「ええと、本調子ではありませんが。私も手伝いますね」
 と、メルティが若干困惑しつつ、刀を握る。
「映画という物は、どんな物を選択したとしてもその時間を消費して、一つの芸術作品を鑑賞するものだ」
 『死神の足音』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)が、静かにそういった。
「それを最近はタイムパフォーマンスを選択しすぎてほぼ早送りで見るのが流行りらしい。
 クソだった。時間返せと嘆くのも一つの楽しみだというのに。
 ではいいだろう。カメラを寄こせ。俺が最短最速の映画を作ってやる」
「つまり――?」
 メルティが小首をかしげるのへ、ブランシュはうなづく。
「サメ殴りだ――ついてこい」
 構える。
 ライツ、カメラ――アクション!
 そんな声が聞こえた気がした。
 監督の声が聞こえたなら、あとは演じるだけだ。
 始めよう――少女と、ビーチを救う、ムービーを!
「クランクインだ」
 ブランシュの言葉に、仲間たちはうなづいた。
 かくして――カチンコの音は鳴り響く!

●ケイオス・シャークバズーカVSデビル・フランケンめんだこVSローレット・イレギュラーズ
 さて、このムービーで最もファスト(速い)な奴は誰だ――?
 サメか? めんだこか?
 否――。
「死神、だ」
 ブランシュが飛ぶ! 青と白の水平線、海と空、砂浜の内を!
「めんだこは任せた――サメは50秒で蹴り殺す――!」
 跳躍! 一方、その後に堂々たる姿をみせるのは、ムサシだ!
「待てッ! 怪物共!
 それ以上暴れさせるわけにはいかないでありますッ! この宇宙保安官、ムサシ・セルブライトが……お前達を止める!」
 びしいっ、とポーズを決めるムサシ。敵の注意をひく理由もあるが、ここはムービー。ならば多少は、演技を決めてもいいだろう。
「おー……!」
 思わずマールがぱちぱちと手を叩くが、すぐにふるふると頭を振った。
「えっと、メーアほどじゃないけど、あたしも援護するね!」
 と、むむむ、とうなると、キラキラとした海の輝きがイレギュラーズたちに降り注ぐ。
「わたしも、応援します~!」
 メーアもぴょんぴょんと飛び跳ねてみせる。マールとメーアのきらきらとした海の輝きは、竜宮の祝福。合わさった二人の乙女の祈りは、イレギュラーズたちの背中を押すのに十分すぎる声援だ!
「わ、綺麗です……!
 わたしも、頑張って応援しますね、フーガ!」
 と、サポート役として負けられないのは、望乃だ。その喉を震わせる、甘く切ないバラード。その歌声は不思議な魅力と魔力を乗せて、戦いを彩るBGMとなる。仲間たちはもちろん、愛するフーガに届け、この歌よ。
「ならば、おいらは演奏と行くか!」
 黄金の輝きが、夏の太陽を受けてさらに光る。取り出したトランペットを吹きならせば、甘いバラードに高らかな金管楽器の音色が足された。夫婦合作の音色が、夏のビーチを彩る。これを聞いているのが、大衆ではなくサメとめんだこなのは非常に残念だが。
「ありがと、フーガ、望乃!」
 カトルカールが声を上げ、竜宮イルカとともに前進する。
「まずは、めんだこからやっつけるよ! マールを助けたい!」
「そうなの! はやくたすけてあげるのー! おめめぐ~るぐるの、がお~!」
 ピリアが頷き、その手を掲げた。紫色の終焉の帳が空から降り注ぎ、めんだこを包み込む! めんだこが「めんだこ!」と悲鳴を上げ、身をよじらせた。
「カトルカールさん、こうげきなの~!」
 ピリアがそう告げるのへ、カトルカールはうなづいた。手にしたショットガンを構える。
「いけぇっ!」
 発射! だずん、と銃声が響いて、めんだこの体に直撃! 「ぎゅえー!」と悲鳴を上げためんだこが、たまらずマールを取り落とした。
「おっと!」
 飛び込んだのは、バルガルだ。マールを抱きかかえ、リトルワイバーンとともに一気に飛翔する。
「わ、バルガルさん、ありがと~!」
 マールがぎゅー、とバルガルに抱き着くのへ、バルガルは優しく笑ってみせた。
「いえいえ、バニーさんの損失は世界の損失ですので」
 本心か、照れ隠しか。いずれにしても、マールを見事に救助したバルガルは、そのままメーアの隣へと飛び降りる。
「引き続き、援護を――ファスト(手早く)に片づけてきますので」
 リトルワイバーンの背中を軽くたたいて、飛翔を促す。ワイバーンが飛ぶと同時に、バルガルは鎖刃を振り投げた。きり、と魔力を帯びたそれがめんだこに突き刺さる。ぎゅい、とめんだこが悲鳴をあげながら、腐ったような匂いのする液体を吐き出した。デビル・フランケンめんだこ液である。喰らうと痛い。
「ふええ、きもちわるいの~!」
 ピリアが泣きそうな顔をした。確かにくさく、気持ち悪い。なんだか怒りもわいてくるというものである。
「うわ、めんだこくっさい……シンナーみたいな、溶けたゴムみたいな変な臭いがする……。
 厄介ね……やっぱりああいう……ああいう海生生物って、よくないわ!」
 ノアが叫ぶ。なんか脳裏に、以前相対した変なワカメが浮かんだ。方向性はたぶん違う気がするが、面白海生生物にひどい目にあわされて言うという事実はまぁ、同一である。
「マールちゃんにも迷惑かけて、私たちにも迷惑かけて……! 許さないのだから!
 マールちゃんの救出ヨシ! 射線上の味方ナシ、ヨシ! 遮蔽物ナシ、ヨシ!!
 最大出力で魔砲、発射します!!」
 ノアがその背に、懐中時計型の端末を展開する。禁断と、奇跡。二つの現象。その端末が全力のエネルギーを展開すると同時に、ノアはその手を突き出した。渦巻く魔力が、端末を通してその手へと注がれ、展開した魔力は光となって、その手より放たれる。
 ストレートに書いてしまえば、『強烈なビーム砲撃』。その水平線の先まで撃ち抜くような強烈な光の帯は、めんだこの体をその光のうちに飲み込む――!
「めんだこ!」
 めんだこが悲鳴を上げた! 断末魔の反撃とばかりに変な液体をぶちまけるが、イレギュラーズたちはダメージを受け止めて、耐えて見せた。
「この焔で……灼き尽くすッ! 焔閃抜刀・焔ッ!!!」
 ムサシの赤いマフラー、それが焔の刃と化した。高らかに掲げたそれを、頂点から一気に振り下ろす!
 焔の刃の一撃は、めんだこを真っ二つの一刀両断した! めんだこ! と悲鳴をあげためんだこが、その炎のうちに消え去っていく――。
「素晴らしい絵だ……」
 監督がなんか言っていたので、ムサシがあきれた表情をした。
「……こう、極まった人って、ああ言う感じなのでありますかね……?」
 この期に及んで映像をとっている根性は評価するが、しかし他人に迷惑をかけるのはよろしくはあるまい。ムサシはコホン、と咳払い。
「サメの方は……?!」
 と尋ねるのへ、フーガが頷いた。
「ああ、あっちにも援護中だ!」
「もうすこしだけ、頑張りましょう!」
 望乃とともに、フーガの『曲』が最高潮を描き出す。そのBGMを背後に、ブランシュが飛翔。
「ついてこい、メルティ」
「承知――と言いたいのですが」
 どうにも本調子でないメルティが、砂浜に足をとられているのをしり目に、ひとまずブランシュは飛んだ。速度を乗せる。限界まで。
「戦闘時間は50秒。残りは僅か――」
 この50秒にすべてをかける。
「マール! メーア! 俺にありったけの力を寄こせ!
 ピリア、フーガ、望乃、お前たちの力も速度にのせる!
 この映画を夏の劇場版『ケイオス・シャークバズーカVSデビル・フランケンめんだこVSマール・ディーネーVSタナトスwithメルティ&イレギュラーズ』に変えてやる!」
「おまかせなの~!」
 ピリアが頷き、くるりと術式を編み出す。
「がんばれ、がんばれ~♪」
「えっと、がんばれ、がんばれ~♪」
 ピリアの真似をするように、メーアもくるりと祈りを高める。背にのせた仲間たちの思いが、祈りが、この時、死神の背中を強く押した――。
「ジャスト50秒。いい絵はとれたか?」
 ブランシュがつぶやく――同時! 全速を乗せた『突撃』を敢行する!
 それは、星が落ちたがごとく。
 サメの体を、貫く――!
「しゃああああく!!」
 サメが悲鳴を上げた。でたらめに打ち放つバズーカは、さながら打ち上げ花火のようでもある。だが――。
「まだです、まだ!」
 バルガルが声を上げる。
 まだだ。
 まだ倒されていない――。
「言ったはずだ。withメルティ、だと」
 全身の装備から強制排気の煙をあげながら、ブランシュが言う。
「最後だ――転ぶなよ?」
 跳躍。メルティが、刃を振り上げ――。
「ええ、お任せを」
 振り下ろした。
 斬撃!
 一閃が、サメを切り裂き、その体が海へと投げ出された。
 巨大な波しぶきが上がって、サメの体がマジカルな粒子に溶けて消えていく。
 まさに、今日の映画のハイライトと言うべきか――イレギュラーズたちの繋いだ力が、悪魔のめんだこと混沌のサメを、うち砕いた瞬間だった――。

●撮影、完了
「おいらは映画制作者でなく演奏家だが、
 様々な人を楽しませる仕事であるのは共通なはず。
 なら、楽しくバカンスしてた人達のこともよく考えろ!
 下手すりゃ大事な家族まで失う所だったぞ!
 それで『勝手に戦って勝手に死ね』と宣う気か!
 人命救助よりサメ映画の撮影が大事なら、
 本物のサメに食われちまえ!」
 フーガの怒声が響き渡る。
 撮影チームが正座の状態で、フーガの前に座り込んでいた。
 いい絵が取れた。それは事実であるが、そのために多大な迷惑をかけたことも事実だ。特にフーガには、それがとても大切なことであり、犯してはならない罪のように思えていたのだ。フーガの怒りももっともだろう。エンターテイメントとは、楽しませるものだ――それで誰かが傷ついたことを、美談のように語るべきではあるまい。
「キャストに労いの言葉の一つもないんですか、このタコ野郎さん」
 ノアもまた、毒を隠さずにそういう。
「私たちもそうですし、巻き込まれたマールちゃんたちも……大変だったのですけれど?」
「コンプラ違反どころか倫理観糞ですね。
 そこまで撮りたいなら無番街案内しますよ。当方はちょっとは詳しい身ですからねぇ。
 マフィア物に抗争物はしょっちゅう、何もなくともドキュメンタリー程度は撮れるかと。
 そして運が良ければスナッフムービーも!
 …………その場合の犠牲者は貴方達ですが。
 それ相応の事をしたのですよ? 反省を」
 バルガルも、普段の様子とは打って変わって、怒りをあらわにしているようだ。色々な人に迷惑をかけたこともそうだし、バニーさんが大変な目にあったのも、彼の怒りに火を点けたのかもしれない。
「……確かに。おっしゃる通りです」
 殴られた頬に手をやりながら、監督はうなづいた。
「これからは改めましょう……やり方も。そうですね、この度はご迷惑をおかけしました」
 深々と頭を下げる。狂人ではあるが、無礼ではない、のかもしれなかった。
「そうでありますね。次からは、気を付けて映画を撮影してほしいであります」
 ムサシも、少ししかる様な面持ちで、声を上げた。
「えっと、あたしが言うのもなんだけど、そろそろ許してあげて?」
 マールが困った顔をする。
「せっかくシレンツィオに来たんだから、皆にはにこにこしててほしいの!」
「そうなの! マールさん、メーアさん、メルティさん、おけがはだいじょうぶ?
 もしげんきなら、ピリアもいっしょにおでかけさせてほしいの~!」
「ふふ、いいですよ。うみちゃんも、一緒ですよね?」
 メーアがほほ笑んでそういう。メルティが頷いた。
「そうですね。私も、皆さんの意見を聞きたいところです。お土産の」
「私も、おすすめのデートスポットとか、聞きたいです」
 望乃がにこにことほほ笑んだ。
「フーガさんと一緒にお出かけするんだね! いいところあるよ~! 教えてあげる!」
 マールが笑って、望乃に応えた。
「やれやれ、変な依頼だったけど、ひとまず一件落着かなぁ?」
 カトルカールが苦笑するのへ、ブランシュが頷く。
「ああ。これで、ENDだ。
 スタッフロールを流せ」
 ふ、と笑うブランシュが、ビーチを眺めた。
 あれほどの喧騒が嘘のように、ビーチは静かに、穏やかな海を移している。
 騒動が収まったことを気づいた客たちも、すぐにビーチに戻ってくるだろう。
 これからこのビーチで描かれるのは、アクションではなく、他愛のない日常ではあるが。
 それもまた、一種の芸術である――と、思ったり思わなかったりするのである。

成否

成功

MVP

ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 その後、サメ映画は上映され、カルト的な人気を博したそうです。

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