PandoraPartyProject
血の刻印より
血の刻印より
ブラッディ・レッドの鮮血が月明かりにぬるりと光る。
白い首筋から流れる赤。
刻まれた刻印が焼けるように熱を持っていた。
燈堂廻の視界に赤き魔法陣が浮かび上がる。
「な、に……これ」
己の血を媒介に組み上がっていく魔法陣。
廻はそれを掻き消そうと手を伸ばすが、電流が流れたように弾かれた。
魔法陣が光を帯びる程に、立っていられない程の目眩に襲われその場にうずくまる。
先ほど、燈堂本邸の和リビングで聞こえた声を思い出す。
あれは。あの声は。澄原龍成のもの――
『……ぐり、廻』
脳内に響く声がした。和リビングに集まっている人達の声じゃない。
夢の中で何度も何度も聞いた声だ。
身体の中を這うように。囁かれる言葉。
「……っ」
『廻、其処から離れて。今すぐに』
じわりと首筋が熱くなる。
焼印を押しつけられたような熱さ。
何か危険な物が内側から溢れ出すような危機感。
これは、危険だ。
ダメなものだ。離れないと。
『それとも、廻は皆を巻き込みたい?』
「――――嫌、だっ!」
仲間の制止を振り切り、裸足で駆け出した。
足の裏に砂利が食い込んだけど、それよりも大切な人達から『危険』を遠ざけたかった。
赤と黒に視界が明滅する。
息をすることさえ儘ならない。
胃の裏側にタールを流し込まれたみたいに吐き気がこみ上げる。
砂利の上に身を投げ出せば視界の端に魔法陣が見えた。
その中心から指先が出てくる。
「あ……」
魔法陣越しに見える紫色のシャツの袖。灰銀の髪。アメジストの瞳。
そして、悪性怪異『獏馬』の邪悪なシルエット。
廻に刻まれた刻印を介して。
白銀と牡丹が練り直した『結界の内側』に、獏馬と龍成が現われたのだ――