PandoraPartyProject

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April 1, 5 p.m.

April 1, 5 p.m.

 空が茜色に染まり始めて、夕暮れがやってくる。
 四月一日の奇跡も夕暮れに染まって、もうすぐ夢はさめるかもよ、と語り掛けてくる。
 夢だ。夢なのだろう。全部。あなたは何かふわふわとした気持ちで、今日という一日を過ごしている。
 今日一日を、どんな風に過ごしたっけ、とあなたは考える。いつもと違う日だったかもしれないし、いつもと同じ日だったかもしれない。
 いずれにしても、時は万人に平等に与えられ、平等に去っていく。そして誰にも平等に、四月一日の午後五時は訪れる。
「あ、旅人さん」
 街を歩いていたあなたに声がかかった。振り向いてみれば、夕食の材料だろう、大きな袋にいっぱいの品物を抱えた少女、イレーヌ・アルエが立っていた。
「どうでしたか? 観光は。旅人さん、神出鬼没って言うか……いろんなところに、でかけられてるみたいで。ふふ、まるで伝説の勇者のようですね。大陸を冒険して回ったって言う」
 年相応の無邪気さを、イレーヌはその時みせてくれた。或いは、出会ったそれはついさっきでも、心を開いてくれているのかもしれない。
「良かったら、教会まで一緒に戻りませんか? 夜も観光なさるかもしれませんけれど、夕飯時です。少し休みましょう」
 願ってもない申し出だ。あなたは頷いて、イレーヌと一緒に教会へと歩を進める。
「平和ですよね」
 イレーヌが言った。
「あ、もちろん、いろんなところで戦争とかは起きてますし……幻想とかは、宮廷内でずっと権力争いは続いていますけれど。
 それでも、世界を破滅させるような存在は、きっとまだ見えなくて。
 なんだか……こんな静かな時が、ずっと続けばいいなぁ、なんて」
 イレーヌは苦笑した。
「変ですよね。こんなこと言うの……でも、なんででしょう? 旅人さんと話していると、本当に、世界を救う勇者様と話しているような気分になってしまって」
 イレーヌは、えへへ、と笑うと、少しだけ目を細めた。
「ねぇ、旅人さん。私、実は夢があるんです。いつか私も、幻想国に帰ります。その時、幻想国を、もっともっと、ずーっと、良い国にしたいんです。
 もしまた、私が旅人さんと会えたら。その時は、手伝ってくれると嬉しいです」
 秘密ですよ、とイレーヌは笑った。
「さぁ、帰りましょう! 今日のお夕飯は、ジャガイモのスープとパンなんです。ほくほくで甘くておいしいんですよ。ふふ。是非食べていってくださいね」
 教会へと向かう、あなたとイレーヌ、ふたりの影が、夕日に照らされて長く長く伸びていた。

 4月1日のお話です!

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