PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

ローレットビギニング

 突然だが、あなたは過去の世界にいた。
 この時代の『無辜なる混沌』は今ほどとの混乱も世界的危機も訪れず、各国は各国なりに些細な(そして主観的には大変な)事件や問題でまわっていた。
 理屈など知らないし、強いていうなら今日が四月一日だからかもしれないが、それを追求するべき時では、きっとないだろう。
 さて、なぜ今が過去だと分かったかについて触れよう。
 あなたが何気なく幻想王国の首都へ、それも行き慣れたギルドローレットの酒場へとやってきた時……そこには、三人のギルド員しかいなかったのだ。
 一人が誰かは、すぐにわかった。
 若く逞しく、そして『まだ自分が世界を救うつもりでいた頃の』レオン・ドナーツ・バルトロメイ。
 もう一人は、雰囲気でわかる。
 ユリーカ・ユリカと同じような服装をした……しかし彼女とは比べものにならないくらい色々と豊かで女性的な女。
 女はどこかよそ行きの声で言う。
「いらっしゃい、ギルド・ローレットへ。私は『シラクサ』。こっちはレオン」
 それと……と向けた視線は、どこか深い親しみがあった。
 テーブルについて酒を飲んでいたレオンがそれにつられて顔をあげると、テーブルの向かいに座って同じく酒を飲んでいた黒髪の男性があなたに顔を向けた。
「こっちは『エウレカ』」
 シラクサ、エウレカ。後者は名前を聞いたことがあったかもしれない。
 そして二人の様子と雰囲気で、きっと察することができるだろう。
 二人は今は亡き、ユリーカ・ユリカの両親であったのだと。
 そしてこの時代は彼と彼女が世界に名を広めんとしていた小さな冒険者ギルドだった時代。
 つまりは――ローレットビギニング。


 ※4月1日が始まりました――

PAGETOPPAGEBOTTOM