PandoraPartyProject

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嵐抜のレイルロード

 ここに枕木がある。等間隔に並ぶ木製のそれは、二本にのびる金属のレールを一切の狂い泣く全くの等幅で延長させ続けている。レールにはゆがみもなく、まして枕木とそれを固定するためのボルトにまるでゆるみもない。
 それはひとえに、鉄帝鉄道公社によって小刻みなメンテナンスが行われ続けているからこその正確さなのだ。
 だがそれも。
「発破」
 砂利の地面もろとも吹き飛ばす魔術式爆弾によって吹き飛べば、意味を成さない。
 枕木は砕け飛び散り、レールは大きく歪んでしまう。
 当然ながらこのレールの上を列車が走ることなど不可能であり、この線路を使用する全てのルートは寸断されたも同然となってしまった。
「想定通りの破壊を確認。作戦完了。撤収する」
 破壊工作を終えた男は見るからに使用不能となった線路の様子を念のために確認してから、周囲で警戒していた兵たちに声をかけた。
 彼の制服は鉄帝陸軍のそれだ。軍服に刺繍された紋章は新皇帝派に属するグロース・フォン・マントイフェル将軍によって設立されたグロース師団のものであった。
 男は完了報告を届けるため、馬車へと乗り込む。
「主要駅を奪われるなら――使えないようにしてしまえ、ということか」

「実に結構!」
 椅子の上で足を組み、紅茶のカップを手にした幼女。いや、幼女の皮を被った悪魔ことグロース・フォン・マントイフェル将軍。鉄帝参謀本部にて実権を握る彼女は、自他共に認める『バルナバス信者』であった。
 幼く可憐な、そして不気味なほど美しく整ったグロースの表情は左右非対称に歪み、凶悪な笑みに彩られている。
 首都スチールグラードに存在する帝都中央駅にして地下通路へと続くブランデン=グラードをはじめ、列車砲の収められている巨大鉄道施設ゲヴィド・ウェスタン、古代遺跡を利用し未知なる技術を秘める北方の駅ルベン、西部の巨大鉄道都市ボーデクトン。
 これら鉄帝国が誇る主要駅を抑えることは、広大なゼシュテルの地における兵站および兵力運用を極めて大きく促進させると思われていた。
 当然、海路における重要拠点である不凍皆ベデクトと並びこれらの主要交通拠点は、バルナバスが新皇帝に即位してすぐ当時から既に旗揚げされていた一部新皇帝派の軍によって即座に占領されていた。
 だがそれが、帝政バイル派、南部戦線サーバ派、クラースナヤ・ズヴェズダー革命派、そしてラドバウ独立自治区によって各主要駅が攻略されつつある。
 ゆえに、グロース師団は『もしものための破壊工作』を行ったのだった。
「本当に宜しいのでしょうか。鉄道網を失えば、各地に駐留している新皇帝派の軍への補給も滞ります。この先の冬を、いかにして生き延びるか……」
 不安そうに呟いたのはグロース師団の紋章をつけた男だ。胸の階級章からして、かれは大佐にあたる人物だろう。歳にして60台。孫が成人してもおかしくないような年齢の彼が、ひどく緊張し、踵をぴったりとつけた『きをつけ』の姿勢で背筋を伸ばしている。
 グロースはそんな彼に『は?』とだけ返した。
 その一言で大佐の男はびくりと背筋をふるわせる。
「バルナバス皇帝陛下の勅令を忘れたのかね? ヴィーデン大佐」
「いえ」
「唱えたまえ」
「――『強ぇ奴は勝手に生きろ。弱い奴は勝手に死ね』」
「結構」
 震えた声で述べるヴィーデン大佐に、グロース将軍は深く頷いた。
「鉄道網を守り切れたなら、使える部分だけを補修しなおせばよい。その程度鉄帝の技術者であれば造作も無かろう? そして守れなければ、更なる破壊を続け冬までの時間を引き延ばせばよい。
 いずれにせよ、バルナバス皇帝陛下に牙を剥く愚か者共には負荷を与える必要があるのだよ」
「は、はあ」
「わかったら、同じ手順で各地の線路を破壊しろ。配置と指揮は貴様に任せる」
「は!」
 ヴィーデン大佐は踵を鳴らし敬礼すると、急いで部屋を出て行った。
「さて……」
 一人になった執務室で、グロース将軍は椅子にせをもたれる。
「各派閥は拠点警備と奪還作戦に手一杯だろう。……そこで貴様等はどう対応する? ローレットのイレギュラーズ」

クエスト詳細

 鉄帝国各地にて、大規模な鉄道線路の破壊作戦が実行されました。
 このままでは主要駅を確保しても暫くの間は線路の補修をするなどの時間を要してしまうことになるでしょう。
 ですが軍からのリーク情報によって作戦のポイントや兵力がローレットへともたらされました。
 この情報を元に先周りをしかけ、鉄道線路の破壊を阻止しましょう!

リザルト

「くそっ、撤退だ……!」
 新皇帝派グロース師団の兵士たちは馬車へと乗り込み撤退していく。
 負傷した兵も多いらしく、このあとすぐに別の作戦へ移ることはできないだろう。
 『軍部にお灸を据える』という意味では充分な成果だ。
 早速あなたは同行したスタッフと共に線路の様子を調べてみた。爆破解体を行う準備まではできていたようだが、肝心の爆破はできていない。丁寧に爆発物を取り除き、ついでに線路をキレイに整えてやった。
 こわされるどころか、前よりもちょっと良くなったくらいだ。
 いずれこの線路を列車が通り抜け、物資や兵たちを運ぶだろう。
 それはいつか来る戦いのためにも、そして目前に迫る冬のためにもなるはずだ。
 勝利と平和。そして未来。
 あなたはこの無限にも思えるほど続く二本のレールのさきにある、それを守ったのだ。

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