PandoraPartyProject
子午線のざくろ
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月光が祭司長クレマァダ=コン=モスカの壮麗な装束を、パライバブルーに染めていた。
厳かな祈祷が続く中、祭司の一人が美しい杖を抱えて祭壇へ一歩一歩進んで行く。
祭壇の前に立つクレマァダは杖を受け取ると、強かに地を打った。静謐を破る鋭い反響と共に、部屋の中央にすいとさざなみが広がる。
映し出されたのは海図であろう。そこにはザクロのように煌めく無数の光がちりばめられていた。
「オマエらに次の試練を与えよう」
祭壇の前に立つクレマァダの口調は些かつっけんどんで、たっぷりの諦観がこめられていた。
「さっさと並ぶのじゃ」
一仕事の成果はあったようで、クレマァダの視線は以前より幾分か和らいで見える。けれどその奥にこれまで以上に焦燥の影が揺らめいていた。
努めて冷徹たろうと振る舞う仕草は、かえって心配性な彼女の心を露見させているのだが――指摘も野暮に過ぎよう。ただ心配してくれているのだ、彼女は。
この度の海洋王国大号令は、『絶望の青』を踏破して未知の新天地を目指す国家プロジェクトにして海洋の民達の悲願である。
海洋王国はイレギュラーズの輝かしい実績を頼りにする算段を立てており、誰も彼もが大きな盛り上がりを見せていた。
ローレットには大量の依頼が舞い込み、イレギュラーズは盛大な歓待を受けながらも近海掃討や軍事演習に駆り出されている。
なんでも海に不慣れなイレギュラーズを訓練するという意図も見え隠れしているようだが、さておき。
クレマァダの説明によれば、『絶望の青』へと挑む前に、隣接するこのコン=モスカ領を清潔に保たなければならないと云う。
何の影響があるか――謂わずと知れている。そこは海の加護を司る祭祀の言葉なのだ。
海魔という存在の完全駆除は不可能だが、出立を前にして襲われでもしたら目も当てられない。
故に可能な限り海域の安全性を高めておく必要がある。これはその為の依頼と云う訳だ。
無数の赤い光は、全て魔物の群れらしい。
辟易とする数だが、事情が事情だ。やるほかないのであろう。
各々の海図に赤い光をそっと写し取り、イレギュラーズは祭室を後にする。
己の夢は口にせず。唯その心配を視線に乗せるクレマァダの寂しげな瞳に背を向けて。
――出立は翌朝だ。
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茫洋とした海原のただ中にあって。港では大きく見えたキャラベル船は、なんとも頼りなく思えて来る。
甲板に立つイレギュラーは、キビキビと動き始めた船員達を眺めていた。
「そろそろ目的の海ですぜ」
遭遇が予測される魔物は、海中から甲板に飛び上がり人を襲うという海の怪物らしい。
いつ来るか。どう来るか。
じりじりとした時間の中で、ふいに高い水しぶきが上がる。
刹那――明滅する視界。一瞬だけ太陽を隠した怪物が船上に落ちてくる。
「来たぞ!」
水夫達の怒号が蒼穹に吸い込まれ、幾本ものカットラスが陽光に煌めいた。
魔物の数は一体、二体。状況は見えた。
大きく傾いだ甲板を踏みしめ、イレギュラーは得物を抜き放つ。
掃討開始だ。
クエスト詳細
遭遇した海のモンスターを掃討しましょう。
『大海魔』
かなりのタフネスと、攻撃力があります。
流血のBSに注意して下さい。
若干の機動力があります。
『海魔』
一体一体はさしたる能力ではありませんが、それなりに強いです。
出血のBSに注意して下さい。
そこそこの機動力があります。
●注意
ストーリーに関係するクエストであるため1LVから遊べます。
敵は厳しいため、イレギュラーズの仲間を同行者として自由に指定しましょう。
また街角やギルドで腕自慢を募ったり、個人の伝手を使うのも良いでしょう。
●備考
本クエストは展開に特別な影響を与える『重要クエスト』です。
ストーリー展開の結果によって終了しますので、あらかじめご承知置き下さい。
開催期間は12/下旬頃までを予定しています。
本クエストのクリア状況によって特定対象者に『海洋名声』や『海洋王国事業貢献値』に一定のボーナスが付与される場合があります。(数値はあくまで一定程度となります)
担当GM『pipi』
戦闘。
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全ての海魔を掃討し、イレギュラーは大きく息を吐き出した。
幸いにも重傷者は居らず、帰路も順調に運ぶだろう。
甲板では早速、水夫達の酒盛りが始まったようだ。
「イレギュラーも如何ですかい?」
やれやれ、元気なものだ。
――祭司長クレマァダ=コン=モスカは、今宵も夢を見る。
焦燥と諦観を抱きながら『絶望の青』を見る。
頬を濡らす煌めきは、陽光を受けて輝く海原に一滴のパライバブルーを溶かすように。
それでも海は、今日も希望を湛えて見えた。