PandoraPartyProject
大海賊ブラックホーク
●海洋王国のお作法
「特異運命座標よ、良くぞ参った!」
風光明媚な異国情緒溢れるネオフロンティア海洋王国の中でも最も美しいのが、その首都リッツパークであり、今まさに特異運命座標が訪れたこの宮殿であった。特異運命座標と言えども用が無ければ中々踏み込む機会も少ない荘厳なる場所で特異運命座標を出迎えたのは、当然ながら玉座の主である女王イザベラであり、付け加えてその横には有力貴族のお歴々も歓迎の顔を揃えていた。
「今日はどれ位の事を聞いておるのじゃ?」
「……いや、流石に『海洋王国大号令』の話は聞いてるけどね。そこまでだ」
海洋王国大号令――即ちそれは、この程王国が始めた国家事業を表すホット・ワードである。
『絶望の青』と呼ばれる外洋の壁を超え、その先を目指すのは彼等の国是であり、悲願であった。これまでに幾度となく行われた国家的大遠征は尽く失敗の憂き目を見ていたが彼等はそれでも諦めてはいなかったのである。国力を溜めに溜め、『今まさにイレギュラーズという象徴的ピースを得た』彼等は意気軒昂に此度の事業を始めたのだとレオンからは聞いていた。
「今回はその協力要請……であってるか?」
「間違ってはおらぬがな、ある意味でその前段とも言える」
「皆さんを甘く見ている訳ではございませんけれど、海には海のお作法がありますから。
いざ、本格的な実戦に出ていただく前に簡単なテストを、と。
ああ! お気を害されないで下さいましな! これはソルベ卿が言い出した事なのですわあ!」
「誰がだ!」
女王の説明を継いだ海賊提督のトルタ・デ・アセイテに毎度お馴染み鳥貴族(ソルベ)が切れ味鋭くツッコミを入れた。
「お兄様って本当に……」
「憐れむな!」
「まあまあ。ソルベ様らしくて良いではありませんか。男の子っぽくて」
「母親っぽさを出してくるな! あと僕はもう三十だ! ホントによせ!」
妹のカヌレが、バニーユ男爵夫人がめいめいにソルベをボコって、ああもう! な全く平常運転である。
「――ま、つまりそういう事じゃ。
何かと不慣れな海戦の体験、それに大号令の景気付け……じゃな。
主等には妾の名の下に沿岸部で『おいた』をする海賊(バカ)共の仕置を頼もうかと思うたのじゃ」
「つまり、分かりやすい大号令へのチュートリアルって訳か」
「そのように受け取って貰って構わぬ。そなた等には眠い仕事かも分からぬが。
……それにの、その実績を以て海洋王国は主等に『私掠許可』を出したいという思惑もある。
政治的にも難しいのじゃ。『何せ何か理由が無ければそういう動きはそなた等への囲い込み』に受け取られかねぬ故の。
……先はバカと言ったが連中は大海賊という事になっておる故、思い切り暴れてくるが良いぞ」
要約すれば話はこうだ。
海洋王国はイレギュラーズに私掠許可を出し、謂わば国軍協力者として大号令の本番に赴かせたい。
大号令を果たすのは『海洋国民の悲願』だからイレギュラーズもそれに近しいポジションを得ている事が望ましい。
……が、各国で引っ張りだこのイレギュラーズを余り露骨に囲い込めば各国からの抗議を受けかねない。故に簡単な仕事の功績をこれ以上無く派手に大袈裟に広めて対外への強弁にしたいという事だ。
澄ました顔のイザベラも、まるで芸人のようなソルベも、海洋の宮廷も実際中々食えない連中ではあるのだろう。
「んンっ、それで受けて貰えますね?」
わざとらしいソルベが改めて咳払いをする。
(特異運命座標にとってもいい機会である。勿論、答えは――
クエスト詳細
※ストーリーに関係するクエストであるため1LVから遊べます。
敵は厳しいため、イレギュラーズの仲間を同行者として自由に指定しましょう。
また街角やギルドで腕自慢を募ったり、個人の伝手を使うのも良いでしょう。
担当GM『YAMIDEITEI』
戦闘。
●私掠船イレギュラーズ号!
仕事を果たしたイレギュラーズを海洋貴族の一同が満面の笑顔で出迎えた。
「良くやってくれた、そなた等こそ、まさに一騎当千の英雄よ!」
些か仰々しく、仕事の割にとんでもない高評価を下さるのは勿論イザベラである。
沿岸を荒らした大海賊ブラック何とかはイレギュラーズによって拿捕されたのだから当然である。
外向けには祝賀パレード位やってもいいという事になっている。これから山のようにイエロー何とかとかレッド何とかとか、次から次へとでっち上げられて、同じくローレットがやっつけるのだろうが、そんなものは余談なのである。
「私掠許可証なあ、これで海賊とか出来るのか?」
「理屈の上ではそうなりますわね。尤も、我が国の私掠許可証はどちらかと言えば身分証明書ですわね。
そうでもなければ往来を海賊が出歩くなんて――ぞっとするお話でしょう?」
カヌレの言葉にイレギュラーズは「成る程」と合点した。
そう言えばリッツパークには海賊を名乗る人間が何人も……かなり堂々と滞在していた。
特にその内の一人、義手をつけた銀髪の酔っぱらいはかなりしつこく絡んできたではないか。ついさっきも。
「ようこそ」
そう言ったトルタもかつては一介の海賊だったという。
度重なる功績をイザベラに認められ、一代貴族を拝命した女。
成る程、海洋王国には夢がある。
この先に待つ国家事業も――実に破天荒な結末を求めているのだろう。