PandoraPartyProject

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Battle of Orangebene


 幻想南部、肥沃な高原部が多くを占めるその地に存在する統治者不在の空白地帯。
 オランジュベネ領とも呼ばれていた彼の地では今、混乱が起きていた。
 今や血の古城と呼ばれる小さな城は、嘗ては栄華を誇ったある貴族の終焉地。
 オランジュベネにとっては、ある意味では始まりの地であり、没落を仄めかす最悪の地でもある。
 石積みで作られた古風な城、城内の全てが重要文化財とでもいえそうなこの古城は、ある種の観光地として名があった。
「――なんたることだ、なんたることだ、なんたることだァ!! このざまは何だ!?」
 苛立ちに顔を覆う男の手を、白髪が混じりつつあるオレンジ色の髪が微かにくすぐった。
 胡乱な瞳はたった今、帰還した一人の兵をねめつける。
 仄暗い光を宿すオレンジ色の双眸が男を射抜く。
「も、申し訳ございません! イレギュラーズなるもの、相当の手練れの様でして……
 各地で勃興させた大規模の有力部隊はほぼ全滅いたしました」
 オランジュベネ領にて起こった暴動事件は、その多くがイレギュラーズの活躍によって、最小限と言って過言ではない規模で鎮火されていた。
「このッ――雑魚が!!」
 音が衝撃となって兵士の鎧を切り裂き、壁に叩きつけられ、ずるずると崩れ落ちた。
 音は反響して甲高く轟き、棚を裂いて収められた本がバタバタと倒れていく。
「げほっ、げほっ……かふっ……。オランジュベネ様……。
 か、閣下……お許し下さい……どうか、どうか我々に……」
 兵士は、ぱっくりと開いた腹部を抱えるようにしながら起き上がり、ずるずると這いずるようにして近づく。
「……機会が欲しいか?」
「はい……はい……お願いします……どうか、どうか」
 縋りつくようにイオニアスの足元に縋る兵士を、彼は静かに見下ろしていた。
「……そうか……そうか、くははは……そうだな、その手があるか」
「……閣下?」
「あははははは!! よかろう、よかろう! では貴様に我が祝福をやろう!」
 イオニアスの高笑いが、響く。

 ――――それは、常識を穿つような耳障りな音。

 ――――――それは、甘く甘く、蕩けるような心地よい音。

 ――――――――混沌に住まうあらゆる者達が聞く、原初よりあるかのような懐かしの音。

 脳髄を揺らし、全てを飲み込むかのような深い音色がした。
「狂気を伝播せよ。大規模な精兵などいらぬ。数を持て、人を、獣を、ここに呼び寄せよ!
 この地はわが国、我が地、我が天なり――――狂気を伝播せよ!
 怒れ、怒れ、イカれ、我が憤怒を――」
「ハハッ――!」
 傷だらけだった兵士に、イオニアスがそっと手をそえる。
 その直後、見る見るうちに傷がいえていく。
「行け。多くの生き残りの兵を、騎士を扇動せよ。
 虐げられし獣達の憎悪を駆り立てよ」
 兵士が立ち去っていくのを見ながら、貴族が口角を小さく釣り上げる。
「敵が強者あれ、所詮は数があるだけの者どもよ。
 数が多ければどうということもない」


「特異運命座標さん、呼びかけに応じて頂きありがとうございます」
 王都メフ・メフィートにあるローレットが本拠に訪れてきたテレーゼ・フォン・ブラウベルクがぺこりと頭を下げる。
「皆様のおかげで、オランジュベネ領を中心地とする暴動のうち、大規模な物は鎮定されました。
 まずはありがとうございます。ただ、その……言いづらいのですが、
 まだ小規模のものが続いています。引き続き、こちらの鎮圧をお願いしたく思うのです」
 少しばかり前、幻想の南部を中心に、複数の暴動事件がほぼ同時に発生する事態が起きた。
 イレギュラーズはそれを見事に鎮圧したのである。
 だが、大規模な暴動事件が鎮圧した今でもなお、旧オランジュベネ領の内部にて、小さな狂気に侵された人々の事件が起こっているという。
「散発的かつ、多発的に勃発し続けてイタチごっこな状況になっており、
 到底、手が足りないのです。これがただの余波ならばよいのですが――」
 そう言いつつ、テレーゼは小さく首を振る。
「そう楽観的に見える者も少ないでしょう。
 きっとこれは、イオニアス・フォン・オランジュベネの第二撃……
 敵の居場所は未だふんわりとしたまま。どうか、お手伝いください」
 申し訳なさそうに頭を下げる少女が若干やつれているように見えるのはきのせいではないのだろう。
「とはいえ、一人で向かうと厳しい面もあるやもしれません。
 その場合は、他の方もお連れになって向かっていただければと思います」

クエスト詳細

そんなわけで、鎮火しきれていないイタチごっこが続きます。
敵としては凶暴化した魔物と暴徒と化した兵士達になります。

・敵
『暴徒化した兵士』
 剣と盾を持つ者、槍を持つ者、銃を持つ者がいます。

『凶暴化した魔物』
 凶暴化した魔物達です。
 狼に似た姿を持つ『ウル=カグラ』は牙で至近戦を。
 大鳥とも言うべき『アルハ=ニグスト』は爪で至近戦~風を巻き起こし中距離戦を仕掛けてくるようです。

●備考
 本クエストは<薄明>の展開に影響を与えます。
 本クエストの参加PC数に応じて、後に公開されるイオニアス討伐シナリオにおいて情報面で有利になる他、大きな優位性を持てるようになります。

 担当GM『春野紅葉

戦闘発生

 == 戦闘 ==
 あなたは敵と交戦し、撃破した。

リザルト


『ォォォオン』
 獣の遠吠えが響き、ぱたりと倒れた。
「くそっ! 退くぞ! 死ぬならば閣下のために死ぬのだ!」
 兵士が叫ぶ。数人が逃亡を果たさんとする中で、逃げ足が遅いやつが一人。
 逃がす道理もない。君達は自らのできる捕縛手段でそいつを捕まえる。
 逃げていく兵士の方角もしっかりと覚えておこう。

 ――――――

 ――――

 ――

「どうして俺が閣下を裏切るのだ! くはは、お家の復興は近い。
 屍山血河築こうとも、我が主はこの地を塗り替えよう!」
 狂乱に満ちた双眸で兵士が笑う。こいつもまた、狂気にどっぷりのようだ。
 ――けれど、そんな風に忠誠を向ける相手としては、隠れ続ける男は足るのだろうか。
 縛り上げる兵士を見ていると、ふと君は古ぼけた紙片を見つけた。何かの書物の欠片のようだ。
 若干不吉にも見えるが、敵の居場所のヒントになりそうだ。

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