PandoraPartyProject
高機動混沌伝説レリックL
はるか暗黒の海――銀河。
人類が汚染されすぎた地球という星を離れスペースコロニーへの移住を初めてより、銀河は真なる意味での海となった。
発達した宇宙航行技術はコロニー同士を島のように行き来し、各コロニーは移住した国々によって独特の発展を遂げるに至る。
――どこよりも洗練された航行技術と女王政治によって治安を保つ『ネオフロンティア』ブルーコロニー
――バイオテクノロジーの急速な発展によって力をつけた『ファルカウ』グリーンコロニー
――各コロニーの傭兵達と企業連合によって実質的な独立を果たした『ラサ』レッドコロニー
――外宇宙によるオーバーテクノロジーをいちはやく解明し軍事利用を果たした『ゼシュテル』ブラックコロニー
――地球におけるいくつもの宗教をミックスさせ精神衛生の意地に成功した『ネメシス』ゴールドコロニー
一方地球では、居住可能な大陸を併合し生まれたレガド・イルシオン連邦王国と企業連アデプトがひとつとなり、『レガド連邦』が完成しつつあった。
地球連邦はアデプトによる浄化技術の発達により、母なる星に再び青さを取り戻していく。
人々は宇宙をまたにかけ船を漕ぎ、地球はかつての蒼穹へと回帰する。それは人類宇宙の平穏へ導くと……そう、思われていた。
しかし、そうはならなかった。
ならなかったのだ。
「人類はいつも、過ちを繰り返す」
AR新聞を広げれば、一面には大きく『帝国軍、独立宣言』の文字がおどる。
ループするフォトムービーには、帝国軍の象徴であるリーゼロッテ・アーベントロートの演説風景が流れていた。
「皆様……いいえ、帝国臣民の諸君。いまこそ我々は立ち上がらなければなりません。
レガド連邦は浄化した星の広大な土地を我が物と主張し、いずれ帰るべき私たちをはねのけたのです。
そのうえ我々著名人のパンツを闇市に流すわ肌色の多いイラストを売るわ好き放題する始末!
このままで良いのでしょうか……!?」
問いかけるように叫ぶリーゼロッテ。
数秒の静寂。
壇を見上げる民たちは、ぐっと胸につまる想いに沈黙していた。
息をおおきく吸い込み、リーゼロッテは手を高くかざした。
「いいえ、今こそ反逆の時! 独立の時なのです!」
声が、爆発した。
オオと叫ぶ民衆。旗を振り乱す民衆。
リーゼロッテの後ろに大きく広がるウィンドウに、文字が燃え上がった。
――『リーゼロッテ貧乳帝国』!
振り返るリーゼロッテ。
親指をビッと立てる副官(名前募集中)。
腰から抜いたビームガンで副官(募集を終了しました)の額に穴をあけると、ついでにウィンドウの中央にもばすばす穴をあけた。
「言葉は正しく。世界標準帝国の正しさを証明しなければいけません。いいですわね、世界標準帝国です!」
オオと叫ぶ民衆。旗を振り乱す民衆。
リーズ! リーズ!
ヒョージュン! ヒョージュン!
湧き上がる民衆は、もはや止まらない。
彼らは巨大な一個体の神となり、地球連邦へ反逆ののろしを上げるだろう。
自らを真なる人類であると証明するために。
彼らの独立を確固たるものにするために。
「帝国、か」
新聞を閉じ、ギルオス・パンツポストは公園のベンチから立ち上がった。
腕時計型通信機からアラームが鳴り、空中投射ウィンドウが立ち上がる。
通話相手の名はレオンだ。
『ギルオス、いるか。上のお偉方が及びだぜ』
「分かってるよ。今行く」
空を見上げる。
吹き抜ける桜の先、青すぎる空に、無数のオートパンツァーが煙をひいて飛んでいく。
ウィンドウの声は続いていた。
『帝国軍は精鋭部隊を率いて地球連邦の拠点へ降下作戦を開始した。俺たちの――』
「ああ、僕たちの出番だ。僕と……」
サクラの木の横。ライフルを手に立つ巨大な人型ロボット兵器オートパンツァー。その専用機である。
「そう僕と、ギルオスマンダムのね」