PandoraPartyProject

ノート

【悲報】世界が私を拒絶する

わくわく過去編


亜心って名前はママが付けてくれました。
大好きな魔法少女アニメの主人公が同じ名前だったみたいです。
あこの漢字は、亜祐美(はは)の亜、心陽(ちち)の心で亜心。
理由はどうあれ、私はこの名前が大好きです。
名は体を表す。私は文字通り、悪を愛し悪を崇拝する女ですから。

パパとママはどうしようもない親バカでした。
私は何一つ不自由なく、彼らの愛情を一身に受けて育ちました。
え、そんな両親をどう思ってたかって?キモいです。マジ無理、生理的に無理。今すぐ血液と遺伝子取り替えて欲しい!って感じでしたよ。
あのヘラヘラした顔とか、思い出すだけで吐き気がします。
じいじとばあばもほんと気色悪くて。
私にいつも「愛してるよ」とか「産まれてきてくれてありがとう」とか言いやがるんです。

てか、ウチの家族だけじゃありません。
私が元居た世界、奴らの大半はみんな同じことしか喋らないんですよね。
「幸せだね」「今日も平穏無事に過ごせて良かったね」
「平和が一番だよね」って。

意味が分かりません。
平和が一番?こんなに退屈で、何の刺激もない世界なのに?
何が楽しいんでしょう。何が面白いんでしょう。
もしあの世界に神様が居たのなら、真っ先に殺してやりたかったですよ。

刺激が欲しい。
心躍るような、ワクワクでキラキラな喜びが欲しい。
私だって人生を楽しみたい!


だけど、心を満たしてくれるような破滅と絶望は待てど暮らせどやって来ませんでした。
とにかく暇でした。暇で、退屈で、あまりにも退屈過ぎたからか迷走したJK亜心ちゃんはある日、恋愛ごっこを始めました。



麻資郎(ましろ)くんは、亜心から見ても不思議な男の子でした。
周りに一切馴染まずに、常に独りぼっち。

どこか近寄りがたい雰囲気も相まって、誰も彼に関わろうとはしませんでした。だからこそ、亜心ちゃんの心が動かされたんですけどね。

「俺は嘘吐きが嫌いなんだ」

「亜心はホントの本気でアナタ(が醸し出す犯罪予備軍的な雰囲気)を愛しています!」

「やめろ、気色悪い。女ってのはどいつもこいつも気色悪くて嘘吐きばっかだな。勝手に孕んですぐ死んだ母親も、俺が産まれた時からベタベタひっ付いてくるあの天使も」

「天使……?いやいや、とにかく亜心は本気ですから!!」

しかし、いざ蓋を開けてみたら、彼は私が期待していた王子様じゃなかったみたいで『捻くれているだけで根は良い子』という隠れ特大地雷だったんです。私が期待してたのは、もっと苛烈で暴力的で他人を見下すようなイケてる男だったのに!

一年と二ヶ月、あまりにも長い期間をドブに捨てさせられた亜心ちゃんは大大大大大激怒!乙女の貴重な青春を無駄にしたカスは死刑にすべしとの天啓を受け、速やかに灰にしてやりました。


「悪かったよ、俺が悪かった。期待に応えられなかったんだから殺されて当然だ」
「この世界でお前は誰よりも正直だった。そっちはどうか分からないけど、俺は結構本気でお前のこと好きだったよ」


うるせ〜〜〜〜!!そういうとこだよ、そういうとこ!!!
どいつもこいつも亜心ちゃんを分かったようなフリするんじゃねぇ!!
私に優しくあろうとする草食男子に用はねぇんだよ!!喰らえ、エターナルガソリントルネード!!相手は死ぬ!!

亜心ちゃんのかいしんのいちげきが効いたのか、麻資郎くんはその場に倒れ込み、ピクリとも動かなくなりました。



彼氏を殺した後、世間は見たことも聞いたこともないような大事件に大騒ぎになりました。事故はあれど、故意の殺人なんてこの世界にとっては『ありえないこと』なので。

「聞いた? 四肢欠損だって」

「心臓がなくなったとか」

余計な尾鰭までついた挙句、海外でも話題になったりして。
それだけの騒ぎになったにも関わらず、亜心自身の生活はびっくりするぐらい何の変化もありませんでした。
こと殺人に関しては、法整備もされておらず、犯人を探すための調査機関も存在しなかった為です。


結局、またいつものつまらない日常に帰ってきてしまいました。




そんな可哀想な私は、再び不幸に見舞われます。
混沌世界で悪役ライフを楽しんでいたところに、アレが現れたのです。

声も外見も、麻資郎くんにそっくりな青年。
転生?それとも生き返り?くそダメダメ元カレの癖に、運だけは良いんだなって感心しちゃいました。

あ、もしかすると、別人って可能性もあるんでしょうか?だとしたら、何のためにあの姿をしているんだろう。理解できませんね。


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