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ノート

『渡り鳥』の記録

"総ては、誰かの助けと為る為に。"

"その信条を以て、我々の力は揮われるべきである。"


目次

<概要>
 ・『渡り鳥』とは
 ・無辜の民
<『渡り鳥』関係者一覧>
●家族
 ・『影霞の鳥』クルーク・シュテル
《中立派》
 ・『廉潔な指導者』ルスティカ゠フェドー
 ・『真実辿りし一矢』シュティーナ・ステアンコプフ
 ・『灯せぬ翠光』ユーグ・ドゥビウス
 ・『寄添う月灯』ニネット゠ヴィルレ
《否定派》
 ・『黒白の突槍』フィン・シルヴェスタ
 ・『抑止の青白』エウリュス゠ラングフォード
 ・『燃ゆる花影』志斎 緋彩
《肯定派》
 ・『疑を語る者』イービス゠ブランカテリ
 ・『虚飾の青い鳥』プティ゠エンゲルベルト
 ・『惑う灰簾』レネ・スピネス
●その他
 ・『藍黒の長』ルイス゠フェドー
 ・『紅き遺志』エヴァルト・フリッツ
 ・『献身の白花』ジョアン・シルヴェスタ
 ・『彩る足跡』ミシェル・スピヌス
 ・『春告げぬ鳥』メルヒオール゠フロイント


(最終更新:2023/11/06)

『渡り鳥』とは

『渡り鳥』

全ての者が飛行種で構成されている一族。
いずれも魔術の才に富んだ者が多く、それぞれ異なる手法で魔術を扱っている。
杖を媒介に使う者もいれば、刻印、指輪や使い魔等。
誰かの助けとなる為に」を信条に掲げ、その力を揮っていた。

『渡り鳥』はその名が示す通り、安息の地を求め、各国を旅し渡り歩く習性があった。
自身にとって安息の地が定まった者は、その国に身を置き生涯を過ごす事になる。
反対に、安住の地に拘らず、旅をいつまでも気紛れに続けている者もいるのだとか。

現在、『渡り鳥』の一族は数少なくなっており、
「旅の途中、或いは戦絡みで命を落とした」事が原因とされている。
然し、風の噂によると原因は別にあるとされている様で──。


無辜の民

『無辜の民』

その機会は、幻想にて持ち込まれた狂言誘拐の依頼を『渡り鳥』の一人が請け負った事により訪れる。
政略結婚を防ぐ為に綴られた、令嬢と騎士を結ぶ為の筋書き。
……しかしそれは、見ず知らずの一族に罪を被せようとした貴族の罠だった。

『伯爵家の令嬢の許へと婿へ入り、かの領地を自身らのものとする』。
さらに、依頼人であった彼女を『傷物』にした等、謂れも無き罪を押し付けられたのである。

当時の長を始め多くの代表格が囚われた後、一晩の内に火の海へ潰えた。
──所詮、名も知らぬ一族が犯した罪だ。
何時しか事件の事は、人々から忘れ去られる事となる。


■関連文献
SS:無垢なる果実が腐る刻



残された者達の思想は違え、三つの派閥へと分かたれた。

人間種に対して、平等に接する者達──《中立派》
嫌悪し、厳しい眼差しを向ける者が集う──《否定派》
そして、友好的な姿勢を見せる──《肯定派》

僅かではあるがどの派閥にも属さない者がおり、チック・シュテルはその内の一人である。



家族

『影霞の鳥』クルーク・シュテル

『純然たる白翼』クルーク・シュテル

チック・シュテルの実弟。
兄同様に魔術の才能を持ち合わせていたが、何処か欠けたチックとは違い聡明な子。
故に比較され、兄よりも期待を寄せられていた。が、クルークにとっては無関心に等しかった。
魔術媒体は。嘗ては動物の姿に変えるなどして人助けを行っていた。

かたわれ──兄の事が何よりも大切で、唯一無二。
温かな時間も、歪な想いも。分かち合えるのはお互いだけ。
彼さえ傍に居てくれるのならば、他は何もいらない。

『渡り鳥』が事件に巻き込まれたあの日。兄弟は運良く逃げ延びる事が出来た……筈だった。
辿り着いた白花の花畑にて、兄は弟の命を絶つ為、手を伸ばした。

意識を失い、瀕死となった最中。自身を誘う"呼び声"に委ね、反転する。
──誰かの手によって傷つかぬ様に。傷つけられない様に。
その淡く歪んだ庇護欲を理解し、受け入れる事が出来るのは。「兄を助けてあげられるのは自分だけなのだ」という、傲慢さから。
「今度は僕が、兄さんを助けてあげなくちゃ」

『爛れ翼』クルーク・シュテル

生前は兄とお揃いの白翼を携えていたが、魔種となってからは黒く爛れたものへと変わり果ててしまった。
魔術は精神に干渉するものを中心に扱い、対象を狂わせる。

基本的に物腰が柔らかく、他の魔種達にも協力的な姿勢。
しかし目的である"兄"の為ならば手段を問わない、狡猾な面を秘めている。


とある天義の依頼にて。兄弟は遂に再会を果たす。
『先生』──後に『氷聖』という名と判明する遂行者の元で『お手伝い』をしていると語る彼は、数年前と変わらぬ姿をしていた。
しかし、チックの前から去る直前に『偽りの白翼』を変じさせ、魔種としての姿を露わに。
またすぐに会える」という言葉を残し、その場を後にした。

数ヶ月後。帳の出現を防ぐべく『ペルラ島』へ訪れたチックと邂逅。
その姿は前回露わにした『影』を感じさせぬ程、『白』を映したままだった。
島内にあるとされる触媒の情報を教え、別目的の為に兄と別れる。
特異運命座標達が依頼成功に喜ぶ裏側で、予め接触していた呪われし歌うたいに"原罪の呼び声"を掛け、反転へ誘う。

彼が苦悩していた、声を奪われし呪い。憧れチックの声を奪う事でしか解けぬ其れは、兄が大切な自分にとって容認出来るものではない。
故に、クルークは囁いた。
それ以外にも方法はあるよと、甘く優しい金糸雀めいた声で。

(やっぱり、僕の隣こそが『正しい』)
(兄さんは僕が守ってあげなくちゃ)


夏の季節。氷聖が用意した神の国にてチックと再会。
特異運命座標となってから今に至るまでの全て、現在共に暮らしている『家族』の事を、チックの口から直接打ち明けられる。
『あの頃』と変わらぬ姿で──笑顔で。「一緒に帰ろう」と告げて返されたのは、『決別』の言葉だった。

──おれ達は、お揃いの"色"に戻れないんだよ。クルーク。


『影霞の鳥』クルーク・シュテル

遂行者の本拠地である、『テュリム大神殿』にて。長きに渡り重ねられた邂逅の先に、幕引きの時は訪れた。
これまで『先生氷聖』によって与えられていた白き姿ではなく、黒く千切れた翼を持つ"本当の自分"として、兄と相対する。その表情には、より執着心と歪さを滲ませて。
さらに、氷聖の祈祷所を守護する触媒の役目を、自ら申し出て引き受ける。その際、心臓の真上に聖痕が刻まれた。

其れ等は全て、兄の為に。唯一無二との"ずっと"を、願うが故の行動。
兄を一番理解しているのは、目を覚まさせてあげられるのは、救ってあげられるのは──『かたわれ』である自分ただ一人。
それこそが『正しい』形であると、信じ続けていたから。

魔種となり変貌した影の魔術は、相対した特異運命座標と兄を翻弄した。
然れど、兄の幸せを願う気持ちの大きさから、心に揺らぎが生まれる。
――本当は殺したくない。明るい場所で笑っていてほしい。
だからせめて、兄が『今度はちゃんと』やり遂げられるように――己を触媒とした。


兄が紡いだ影の魔術──《荊棘》によってその身を穿たれ、息を引き取った。
最愛の『かたわれ』の腕の中で眠る彼の表情は安らかで、まるで眠っている様だったという。
クルークの姿が消えてしまうまで、チックはずっと弟の傍らに寄り添い続けた。




──同じ"色"には、戻らない。
それでも、ただ一人の『かたわれ』を。愛しています。
愛して、いました。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
シナリオ:Forget-Me-Not
SS:無垢なる果実が腐る刻
SS:不死鳥の子
シナリオ:星の海にかける橋
シナリオ:<spinning wheel>茨の夢
シナリオ:<祓い屋・外伝>ひとときの夢
シナリオ:おもかげ香
幕間:おもかげ香、幕間
SS:夜の爛れ
シナリオ:白は灰に、灰は白に
幕間:君が寂しくならないように
シナリオ:<廃滅の海色>人魚と泡と
シナリオ:<熱砂の闇影>リュクスな夜に溺れて
シナリオ:<信なる凱旋>黒き騎士は廃滅を喚ぶ
シナリオ:<神の門>落花枝に返らず

(Illustrator:雀居盟士ほったりょう)


《中立派》

《中立派》とは

人間種に対し、他の種族同様平等に接する性質の者が集う。
時に厳しい目を向け、時に温情から手を差し伸べる。
特異運命座標達とは、早く打ち解けやすいかもしれない。
……最も。一族が過去に受けた出来事から、何名かは人間──特に貴族の者には苦手意識を抱いている様だ。

『廉潔な指導者』ルスティカ゠フェドー

『廉潔な指導者』ルスティカ゠フェドー

《中立派》の創立者兼指導者であるツバメの男性。
一族の長であった、ルイス゠フェドーの息子。
指導者となるべく育てられたため厳しい一面を見せることもあるが、様々な飛行種を束ねるために寛大さも兼ね備えている。

担う魔術媒体は血晶石の短杖
防御や支援面に優れており、また周囲をよく目配りし、柔軟に、そして的確に人を采配する。
戦闘においては頼もしいサポーターであると同時に、司令塔として能力を発揮するだろう。
以前は攻撃魔法を得意としていた様だが、現在は積極的に使いたがらない。

笑顔を浮かべる事が希少である為か、冷酷無比な人物に捉えられがちであり、彼の悩みの一つ。
人間種の義娘・アンネリースと共に暮らしている。
血の繋がりは無くとも、その絆の深さは確固たるもの。
時折親馬鹿の節が見え隠れするが、本人は無自覚。

罪と標

チックの幼馴染にして親友。彼を名前で呼ぶ、一族の中では数少ない一人。
嘗て一族の者達から邪険に扱われ、名前すら与えられていなかった少年に『チック・シュテル』という名を授けた。
親友以上の感情を内に秘めており、それは『親』が『子』に向ける愛情に近しい。
『渡り鳥』が事件に巻き込まれた後。一度チックを保護しようとするも、彼が『空中庭園』へ召喚された事により離れ離れに。
その後月日を経て、二人は再会を果たした。

現在は《中立派》として人々を助けながら、父や仲間達を死に追い込んだ男の行方を追っている。


■ギフト『リロンデル』
名付けた生物の親として振る舞うことで自分の庇護下に置き、体調の不良や負の感情を察し取りやすくなる。
また名付けた相手に懐かれているとより察しが良くなる。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:青い瞳と赤い石
設定委託:心に翼を
SS:リロンデル、リロンデル
SS:玄鳥のトロイメライ

(Illustrator:雀居盟士しもふり)


『真実辿りし一矢』シュティーナ・ステアンコプフ

『真実辿りし一矢』シュティーナ・ステアンコプフ

《中立派》の一員であるツグミの少女。
魔術媒体は水宝玉の装飾が施された弓
寡黙で一見無愛想の様に見えるが、自然を愛する温和な性格。
脅威に対しても物怖じしない精神を持つ。口数が少ないため彼女をよく知らない者は誤解しがちだが、行動を共にすればきっと解ることだろう。

幼少期に両親を旅の途中で亡くし、長の補佐役であったエヴァルト・フリッツの保護下で育った。
彼の元で育ち、生きてゆく術を教わる中で弓の才を見出される。
後に一族が事件に巻き込まれた後。エヴァルトは《否定派》の指導者となったが、シュティーナは彼の誘いを断り《中立派》を選んだ。
違う道を歩む事を選んだ彼女の意志を、義父エヴァルトは尊重し、背中を押してくれた。

──彼の背中を追い、いつか恩返しが出来たらと
少女に『エヴァルトが何者かの謀略によって殺された』と報せが入ったのは、その選択からそう長く経っていない時だった。

以来、彼女は《中立派》の面々の事を常に案じている。
現在は鉄帝を拠点に活動しているが、彼等の身に何かあれば直ぐ様駆けつけることを密かに誓っている様だ。
また、《中立派》の指導者・ルスティカ゠フェドーの義娘、アンネリースとは特に仲が良い。
用事がなくとも時折、翼の無い彼女の元へ会いに行っている。


■ギフト『鶫の歌』
か細く歌う様に口笛を吹けば、自分に心を向けてくれている小動物達と簡単な意思疎通が出来る。
ただし鶫は、寒空の下でしか歌わない。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:見据える先に
設定委託:心に翼を
設定委託:洞見せし

(Illustrator:珀織ヒスイ)


『灯せぬ翠光』ユーグ・ドゥビウス

『灯せぬ翠光』ユーグ・ドゥビウス

《中立派》の一員であるコチドリの少年。
魔術媒体は翠玉の装飾を施した腕輪
過去に『渡り鳥』が巻き込まれた事件を通し、人間不信気味。
然しながら、彼が《否定派》ではなく現在の派閥に身を置いているのは、
同族を殺してきた人間種達は許せないが、その復讐心から奴らと同じ存在に堕ちたくはない
という一心が故である。

「種族すべてが悪なのではなく、他に仇為す思想を抱く者こそ悪」という事実をきちんと理解しており、
多少の冷たさは覗くものの、付き合いは人間種達相手でも不可能ではない。
見ようによっては「素直になれないだけ」と受け取る事も出来るかもしれない。

現在は深緑に身を置き、妖精たちと友誼を結びながら魔術の研鑽を積んでいる。

彼が得手とする魔術は、支援と回復(特に後者)。
嘗て彼が師事していた人間──ジョアン・シルヴェスタの影響を大きく受けている。
白く輝き、けれど眩くは無い、暖かな光。
一族の中でも治癒魔術の才人と言われた彼に教わった技術は、今は未熟ながらもユーグの中で確かに息づいている。

……同時に、彼の遺志も。
「誰も怨まず、憎む事無く。幸せに──」。襲撃した人間種たちから逃げる直前、最期まで彼の傍に居たユーグは、自らの師が己れのに向けた最期の言葉を確かに聞き取っていた。
叶うならば、それを知らない師の弟へ遺言を伝えたいと思いながらも――ユーグは、未だその人に向き合う決意がつかずにいる。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:踏み出す一歩目は、未だ遠く。
設定委託:献身の惜別

(Illustrator:ぺいゆ)


『寄添う月灯』ニネット゠ヴィルレ

『寄添う月灯』ニネット゠ヴィルレ

《中立派》の一員であるアカエリヒレアシシギの女性。
魔術媒体は月長石の装飾が施された銃
得手とするのは攻性魔術と回復魔術。
使い捨ての弾丸に込めた術式と、銃身に施した宝飾魔術による『重ね掛け』を以て編み出す。
それらは嘗て才に恵まれなかった彼女が鍛え上げ、辿り着いた独自の技法である。

ニネットは《中立派》としてのスタンスを他者へと向けており、主たるものは身寄りのない人々への慈善活動。
その在り方と他者の好意を惹きつけ易い性質から、彼女に対する人気は極めて高い。

美しくも近づきがたい魅力を放つ高嶺の花ではなく、傍らの人に寄り添い、元気づけるかのような野花のような存在。

時としていい加減なところもあり、自身の本心をのらりくらりとした態度で見せない彼女の本性は、慈愛と冷静さの両立と言うのがぴたりと当て嵌まる。
先述した通り、ニネット自身が他者に向ける慈しみは、本心からのもの。
が、その優しさだけを抱くばかりでは、何れ心無い人に利用されることも有るのだということを、彼女は過去の経験──『渡り鳥』が人間種に欺かれ、その多くを殺された過去から理解している。

過去に『渡り鳥』が人間種たちに追われた際、生き延びながらも仲間からはぐれた彼女は、とある小村の住民に助けられた経歴を持つ。
それが、現在彼女が行う活動の理由。
「尊敬する人たち」と同じ行為に身を窶す。それが彼女の選んだ生き方なのだ。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:冷たくも暖かく、或いはその逆さまに。

(Illustrator:二条)


《否定派》

《否定派》とは

人間種に対し、厳しい眼差しを向ける者が集う。
悪事を働く者には情け容赦も無く、牙を向ける。
特異運命座標と打ち解けるには、多くの時間を要する事だろう。
然れど、彼らの心を開く事が出来たなら──心強い味方として力を揮う筈だ。

『黒白の突槍』フィン・シルヴェスタ

『黒白の突槍』フィン・シルヴェスタ

《否定派》のであるキビタキの青年。
初代指導者であるエヴァルトが命を落とした事により、彼が『二代目』として引き継いだ。
一族が過去に受けた凄惨な事件を経て、人間種を激しく嫌悪している。
彼がそうまでして人間種を嫌悪する理由は、その事件で兄を失った事が起因している。
優しい兄が人間達の欲によって命を落とした――それをどう許せようか。

予てより"呼び声"が聞こえる事もあったが、幾度もそれを振り払った。
──魔に堕ちるくらいなら、抗い、命を捨てた方がマシだ。
兄が『魔に堕ちた自身を見てどう思うか』という一心だけで耐えている。

紫水晶が嵌め込まれた槍を魔術媒体とし、攻撃魔法の使用と近接位置での魔力強化を駆使して戦い続けている。
其れ等全ては生きる為に彼が身に付けた戦い方。
生きる為に各地を旅し、汚れ仕事に手を染めて。人間種以外には年相応の青年らしく振る舞えれど、人間種との蟠りはとけやしない。

兄・ジョアンは、しっかり者で素直になれないフィンとは対照的に、心優しく少々ドジであった。
だが、不器用なところはそっくりで――
仕事に向かおうとする兄へと、嫌な気配を察知しながらも「お人好しな兄さんの考えが、僕には理解できない」と素っ気なく告げた。
もっと他に何かを言えば、彼が生きる未来があったのか。そう考えずには居られなかった。

……兄は火の海で弟を逃すことだけを考えて潰えた。
どうか生き延びて。誰も怨まず、憎む事無く。幸せに――
その言葉は届かぬまま――今も、青年の心に深い傷を残し続けている。


■ギフト『オドゥールの煙』
完璧ではないこの能力は、今後起こるであろう『不確かな未来』を察知して、匂いで自身へと警告を送ってくる。
匂いであるが故に気づけぬ事もある。また、其れが本当に起こる事象かも判断が付かない。
あくまで可能性の範疇でのみしか感じ取れない。それ故に、不完全。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:リロンデルと鳴らせ
設定委託:献身の惜別
SS:二人、引き裂かれたその日にて

(Illustrator:42田)


『抑止の青白』エウリュス゠ラングフォード

『抑止の青白』エウリュス゠ラングフォード

《否定派》の一員であるブッポウソウの青年。
魔術媒体は両手の甲に彫り込まれた橙の刻印
戦闘スタイルは近接格闘。自己付与と攻撃魔術を織り交ぜた戦いを得手とする。

彼は人間種達にとって最も苛烈な対応を見せる《否定派》……という事になっている。
これは他の面々と比較すると人間種に対する憎悪が根深いものではなく、また生来の世話焼き気質から困っている人を見捨てておけない性格故だ。
それが稀に程度には。

他の派閥に傾倒しかねない危うさを指導者親友フィンは、
派閥内に於いて感情に瞳を曇らせる事なく、最もフラットな視点を以て行動する事が出来る
というメリットに目を付け、彼を自らの補佐に置いている。
エウリュス自身も「怒りに目を曇らせた同族達」が、これ以上感情に身を任せて己の身を滅ぼしてしまわぬ様にと、それを止められる役割を選んだ。

容姿そのものは美しく人の眼を惹くが、反して悪態を吐きがちで足癖も悪い。
『渡り鳥』の一部では、同じ派閥の者であってもエウリュスに悪感情を抱く者すら居るほど。
が、そうでない者はその内心……上述した「元々の人の好さ」を隠す為、彼が普段から無遠慮な態度を取っていることを知っている。

昔は髪も長く、細身な子供で母を始めとした様々な者達から美麗と言い囃されていたが、心底嫌気が差した彼は自身の『変化』を決意。
肉体改造、次に断髪、最後に口調と、達成が困難な順から様々な変化を積み上げて現在の姿へと至った。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:最後の一線足り得る者

(Illustrator:sima)


『燃ゆる花影』志斎 緋彩

『燃ゆる花影』志斎 緋彩

《否定派》の一員であるマナヅルの女性。
魔術媒体は橄欖石(ペリドット)の装飾が施された髪留め
彼女は一族の中でも珍しい、状態異常を主とする妨害術式と、植物を傀儡とした様々な異能を使う。
これは天性の才能ではなく、後述する事件から後に、血の滲む様な研鑽を得て彼女が獲得した能力である。

『渡り鳥』が人間種によって襲われた事件によって、彼女は大切な者──夫を喪った。
過去に病死や事故死等、親族との離別を幾度も強いられてきた緋彩は、自らの『家族』に対する執着を人並みに以上に抱いていた。
それゆえ良人と結ばれた彼女は、喪失ばかりの人生に於いて初めて得られたものを愛し、慈しみ、己の生涯を捧げようと誓ったのだ。
……それすら奪った運命に対して、彼女の慟哭は、憤怒はどれほどのものであっただろうか。

彼女もまた"呼び声"に惹かれし存在であったが、それを拒否し、あくまでを人間種達に企てている。
理由は単純なもので、「純種全てに害為す存在」であるそれらへと変じることは、同族である『渡り鳥』達にすら牙を向ける可能性が在る為。
──関わりが薄くとも、彼女にとって生まれを同じくする彼らもまた、一種の『家族』の範疇に居るのだから。

現在、緋彩は《否定派》の面々以外との交流を断ち、その住まいを豊穣へと移している。
今の時点で彼女が名乗っているこの名前も、その土地に合わせた偽りのものである。

また、《否定派》の長であるフィンとは、とあるを交わしている様で──。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:喪い、得て、奪われ、そして今。
設定委託:リロンデルと鳴らせ

(Illustrator:mu)


《肯定派》

《肯定派》とは

人間種に対し、事件以前と変わらず温厚に接する者が集う。
特異運命座標達に対しても非常に協力的であり、打ち解けるまでにそう長くはかからないだろう。
然し、彼らは派閥の志向とはそれぞれ別の思惑をそれぞれ抱えている様で……?

『擬を語る者』イービス゠ブランカテリ

『擬を語る者』イービス゠ブランカテリ

《肯定派》の創立者兼指導者であるアマサギの青年。
担う魔術媒体は、ターコイズの装飾が施された魔導書
三派に分かたれた『渡り鳥』の中でも、彼は人間種との融和を図る《肯定派》の旗揚げを行った人物。
仇の同族でもある人間種に対しても、異邦人の群れである特異運命座標達に対しても非常に協力的な姿勢を見せるその理由は、彼曰く至ってシンプルなもの。

怨み言を募らせてばかりでは、命を落とした長達も浮かばれないだろう?

そう語る青年の表情に、嘘偽りは見受けられない。

人間種に襲われ、悲しみや怒りを胸に生きる他種族達を見て胸を痛めた彼は、「彼らを繋ぐ架け橋となれる様に」という思いを形にすべく人々の笑顔の為に励んでいる様だ。

嘗てはルスティカとも友人関係を築いていたが、現在は疎遠状態にある。
それには、彼が秘めている『本質』に関係しているらしいが……。


■ギフト『猿の王に捧ぐ』
自らが嘘を吐いた際、それが他者にとって耳心地の良い事実に聞こえ易くなる。
この祝福は、彼の中に内在する本心をも現在まで隠し続けている。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:擬を語り、真を被る。その内実。

(Illustrator:ネムノキ)


『虚飾の青い鳥』プティ゠エンゲルベルト

『虚飾の青い鳥』プティ゠エンゲルベルト

《肯定派》の一員であるオオルリの少女。
担う魔術媒体は、瑠璃が嵌め込まれた首飾り
現在は天義に暮らし、人間種との協力関係を築いている彼女は、同じ派閥の者達にとっては一種の象徴である。
青空と白雲を思わせる美しい翼を抱え、物腰穏やかに接するプティに対し、他種族達もまた彼女を良き隣人として捉えている。

──それが、「本人以外にとってのプティ」の印象。
実際の彼女は外面ほどに清廉ではなく、他者と友誼を結ぼうとするその姿勢は、過去に自らを滅ぼそうとした彼らに媚びを売る為。また、自身の命が脅かされる事が無いよう「」を演じている為である。
この辺りのスタンスは、彼女の戦闘スタイル──攻撃に類する魔術を得手とせず、他者への支援や回復に長けている点──からも見て取れる。

現在の彼女の姿は、生まれついでのものではない。
元々の色彩は、母親譲りの凡庸な茶褐色の髪と黒の瞳。それが現在の様な蒼穹に似た色彩となったのは、皮肉にも自らの一族を滅ぼそうとした人間種が所以である。
自身を生んだ直後に亡くなった母に代わり育ててくれた父と兄が殺された後、彼女には頼る者も無く、一人様々な町村を渡り歩いてきた。

再び同胞達と見えるまでの間、人間種達に自らの姿を「以前取り逃がした『渡り鳥』の一人である」と気づかれないよう、彼女は自身の容姿を偽る術を模索し──その果てに発現したのが、『虚飾で彩られたカラス』という祝福ギフトであった。

既に襲撃者達の追手が絶えた現在に於いても、プティはそのギフトを介し、憧れていた父兄や愛していた青空の色に自らを染め上げている。
どうしようもない事だと理解しながらも、彼女にとっては幼き頃からずっと、焦がれてやまない色彩であったのだから。


■ギフト『虚飾で彩られたカラス』
自身の体色を変化させられる祝福。
このギフトによって、プティは自身の髪と瞳の色を青色へと染め上げている。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:怯え、偽り、媚び、それでも。
幕間:瑠璃が褪せるはなにゆえか

(Illustrator:流聖飛鳥)


『惑う灰簾』レネ・スピヌス

『惑う灰簾』レネ・スピヌス

《肯定派》の一員であるマヒワの幼子。
担う魔術媒体は、タンザナイトが嵌め込まれたブローチ
心配性で後ろ向きな考え方の持ち主。己のギフトの事を自覚しておらず、自らが『不幸体質』であると思っている。
過去に自らの一族を滅ぼしかけた人間種達に対し、争い事を好まぬレネは「戦い以外の方法によって、自分達を襲った人達に罪を償わせる方法が有る筈」と信じ、《肯定派》指導者であるイービスの誘いに応じた経歴を持つ。

……が、《肯定派》の内情が自分の考えとは違うものである事を知り、巻き込まれた事に気づいた彼女は後悔を抱いた。
然し一方で、『渡り鳥』が襲撃されたあの日。人間種達と内通していたと言われている『裏切り者』が派閥内に居るのではないか、とも考えている。

レネは「侮られない様に」という内実の基、自身の姿を敢えて中性的に彩る事で、
自身が《肯定派》を選択した事から、他派閥に頼る事は不義理に当たるとレネは考え、また同派閥の者に頼る事も得策ではないと判断した彼女は、独力で生きていく努力を現在も続けている。
……その『殻』が砕け、己の弱さが露呈する瞬間を。が心待ちにしている事など知る由もなく。

姉のミシェルは内向的な性格のレネとは違い、天真爛漫で快活な人柄だった。
時として周囲を顧みず、常日頃からレネを振り回す姉に対して、当の本人も悪意が無い事を理解していた為に諦観交じりにそれを受け入れていた。
襲撃後もレネ同様生き延びた彼女は、残った『渡り鳥』の三派に属する事無く当て所のない旅を続けていたが、ある時その消息が途絶えてしまう
現在に至るまでの数年、その行方は未だ解っていない。

……その「」が無い様にと願いながら。
レネは努めて振り切る日々を送っている。


■ギフト『啄むキビとレンズ豆』
端的に言うと「自身が無自覚に他者を小さな不幸に落とす」能力。
「他者を顧みない悪人寄りの者」にしか機能しない為、"本来であれば"機能することが少ない祝福である。
レネは現在、このギフトの存在を知らない状態。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:ただ一人、『本当の仲直り』を望むひと。
設定委託:ただ一人、『自分らしい生き方』を望むひと。

(Illustrator:壱ル)


その他

『藍黒の長』ルイス゠フェドー

『藍黒の長』ルイス゠フェドー

『渡り鳥』が現状に於ける三派に別たれる以前にて、長の座を務めた人物。ルスティカ゠フェドーの父親。何れは息子のルスティカに長としての役目を継がせる、筈だった。
担う魔術媒体は、紅玉の飾りを施した長杖(スタッフ)

明確な規律を設けて一族から逸脱者が生まれない様にする一方で、やむを得ず「」者──チック・シュテルを含め──に対しては陰で手厚い援助を施す姿勢から、彼が長を任じた間、一族間の摩耗や軋轢は極めて少なかった。

多くの一族の者等が犠牲となった、あの事件の日。
ルイスは自身の一族の無実を訴える為に貴族の屋敷に乗り込んだが、その訴えさえも聞き入れられず、他の者と同様に囚われ火刑に処されてしまう

清廉であり、誠実。
その性格を利用したのち、嘲笑と共に撥ね退けるほどの悪辣さが存在した事に気づけなかった事が、彼の唯一の弱点であり、同時に死の原因ともなった。

チック・シュテルがルイスから(自身の息子を通して)陰ながら援助を続けていた事について、「その理由は他にもあるのではないか」と囁かれている。
それは彼の息子がチックに向ける無意識の依存心に対する嫉妬故、と語る者もいれば、もっと『大きな計画』に絡んだ理由だとも言われているが──。
彼が死んだ今となっては、その多くの理由は謎に包まれたままである。


■ギフト『卑怯なコウモリ』
「自身に敵意を持たない対象」に向ける『嘘』の信憑性を上げる。
ルイスは生涯に於いて、このギフトを使う事が一度も無かった。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:清廉なるもの。悪徳の贄となったもの。
SS:リロンデル、リロンデル
SS:或る計画報告書

(Illustrator:しもふり)


『紅き遺志』エヴァルト・フリッツ

『紅き遺志』エヴァルト・フリッツ

『渡り鳥』に属していたオオワシの男性。そして、一族が襲撃された事件後に《否定派》を立ち上げた初代指導者。
現在彼自身は鬼籍に入っており、指導者はフィン・シルヴェスタへと継がれている。
担う魔術媒体は、紅玉が嵌め込まれた剣

事件前は、彼の友人であり一族の長でもあったルイス゠フェドーの補佐を務めていた。
自他共に厳しい性格だが身内や仲間には甘く、気配り上手であった彼は、仲間からの信頼も厚かった。
魔術の腕は勿論の事ながら、剣技の実力にも長けており、よく慕われていた。

事件後に《否定派》を作ったのは、理不尽に死に追いやられた仲間達の無念を思ってのこと。
正しき道ではないと知りながらも──仲間達の為に。

彼に番は居らず、自身に必要ないと感じていた為、実子も遺していない。
転機となったのはある日のこと。両親を失ったツグミの少女・シュティーナの世話役を担う様になってからだ。
エヴァルトは彼女に沢山の事を教えた。親の居ない彼女が一人ででも生きていける様に、と。その過程で見出した弓使いの才能も伸ばせる様に、助言を重ねた。
血の繋がらぬ関係であろうとも、二人は固い絆で結ばれた『師弟』であり、『家族』だった。

派閥が分かたれた時はシュティーナにも誘いを掛けたが、彼女は断り、別の道へ進む事を選んだ。
エヴァルトも彼女の意を尊重して受け入れ、背中を押した。

──しかしエヴァルトは、その道分かれからそう長く経たない内に、何者かの謀略によって殺されてしまう
以降、彼の愛剣は見つかっていない。


■ギフト『天際の大鷲』
滑空を得意とする翼は、羽搏かずとも滞空時間が他の飛行種よりも僅かに長い。
このギフトは羽根ひとつひとつに宿っており、彼の身から離れた後も効果は持続する。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:洞見せし
設定委託:見据える先に

(Illustrator:バクレツアロワナ)


『献身の白花』ジョアン・シルヴェスタ

『献身の白花』ジョアン・シルヴェスタ

『渡り鳥』に属していたキビタキの青年。フィン・シルヴェスタの兄。
担う魔術媒体は、白花の飾りが施された指輪
一族が現状の三派に分かれる切っ掛けとなった事件──人間種に因る襲撃の折、弟を守るために前線に立ち、その果てに襲撃者達が放った炎の中に消えた人物。

『渡り鳥』の中に於いても秀でた魔術の才覚を持ちながら、頻繁にドジを踏み、尚且つ他者の為に進んで不利益を被るお人好しな性格。
『優秀』であると捉えられる事はそれほど無かったものの、その分穏健な彼を慕う人は数多く居り、彼自身も喜ばしいと感じていた。

弟──フィンは、ジョアンにとってな存在であり、正しくその想いが故にジョアンは自らの行き着く先を定めていた。
人間種達が彼らを襲った際、自身を囮としてその気を惹き、弟を逃がす為に命を燃やした。
彼は決して襲撃者達を攻撃する事無く、自らや仲間を魔術によって癒し続ける事により、より多くの仲間を生き延びさせる事に注力。
ジョアンが命を賭して齎した癒術は、この事件に於いて想定を大きく覆した結果へと繋がった。

────ただし。
「誰かを癒し続ける」という自らの最期の在り様と、他者を怨む事無く生きていってほしいという言葉を伝えんとしていた最も大切な人の心は、その日を境に大きく歪んでしまう事となる。

多くの人間種達に傷つけられ、最期は炎に巻かれた彼の行く末を知る者はいない。
似た様な姿の魔種を見かけた」という者すら、時として現れるほどに。彼の死は現在に至るまで同族達に悼まれている。

『█████』███████████



■ギフト『みにくいインゲル』
自己の決断、決定に対する些細な躊躇や逡巡を消去し、己の判断を盲信させる。
彼がこのギフトを介したのはたったの一度だけ──人間種達の襲撃に抵抗し、命と引き換えに弟を逃がした時だけだった。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:献身の惜別
設定委託:リロンデルと鳴らせ
SS:二人、引き裂かれたその日にて
SS:或る計画報告書

(Illustrator:山神さやか)


『彩る足跡』ミシェル・スピヌス

『彩る足跡』ミシェル・スピヌス

『渡り鳥』に属しているマヒワの少女。
担う魔術媒体は、球形の水晶。戦闘スタイルは認識阻害を絡めた中・後衛での攻撃型。

現在人間種への対応を三派に分けている『渡り鳥』の中で、ミシェルはチック同様属する派閥を決めていない稀有な一族の一人である。
性格は天真爛漫そのもの。容姿は金のメッシュを入れた特徴的な髪と、所々に民族衣装等を交えた独自のファッションを構築しており、一種の「我が道を行く」タイプの人間であるとも取れるだろう。

ミシェルは一族が巻き込まれた事件に立ち会いながらも、人間種と友好的に付き合う日々を送っていた。
人間種との融和を目指す為ではなく、自らが実際に会い、会話し、触れ合った者を、でもって判断するというスタンスの持ち主。
相手が友好的であればその様に返し、逆に敵対であるなら終始警戒を解かぬ態度を崩さない。
多くの者達から「人懐っこく、親しみやすい女の子」という印象と受けられる事が多く、当の本人もそう受け取られる事を自然に思っている。

レネとは姉弟姉妹関係に当たり、ミシェルは「自分と彼女と仲が良い」……と思っている。
実際は「内向的な性格のレネを、ミシェルが引きずり回していた」という構図が正しい。レネも抵抗を諦めていたが故に拒んだ事は一度も無く、それ故にミシェルは「レネと自分が仲良し」だという認識を抱き続けていた。
また、旅の途中異世界人の少女、ジュリア゠リヴィと出会い、良き友人関係を築いている。

……尤も、現在ではその縁も途絶えている。理由はミシェル自身の失踪である。
それまで派閥に属さず、一人旅を続けていたミシェルは、ある日を境にその消息を完全に断ってしまったのだ。
死亡説や生存説など、同族間では現在も様々な憶測が飛び交っているが──その真実は、現在も明らかになっていない。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:ただ一人、『自分らしい生き方』を望むひと。
設定委託:ただ一人、『本当の仲直り』を望むひと。
設定委託:「ただ一人、」を探し続けるひと。

(Illustrator:)


『春告げぬ鳥』メルヒオール゠フロイント

『春告げぬ鳥』メルヒオール゠フロイント

『渡り鳥』の一人であったカッコウの青年。担う魔術媒体は、銀製のナイフ
現在に於いて三派に分かたれた『渡り鳥』──その発端となった事件を起こした犯人

その本質は「善良ならざる者」。
彼は愛情や友情、思いやりといった精神を理解する事が出来ず、故にそうした感情へ晒される事で過敏なほどの反応を返す。
元は孤児であり、嘗て『渡り鳥』の一族に拾われる事でその一員となった彼は、自らを拾った新たな家族からの愛情に嫌悪を覚えた結果、彼らを皆殺しにした。
ただ、「」という理由だけで。

『██』████████████

その後、前述の事件を起こす為の計画を立案。実行する為の下準備に身を費やし──結果としてそれを成功させた。
道ならぬ恋に焦がれた貴族の令嬢に狂言誘拐を持ちかけ」「その折に令嬢を『傷物』にし」「秘密裏にその事実を官憲と貴族の私兵に漏らす」。
これらを単身で成し遂げた事により、を始めとした多くの者達を犠牲に追い込んだ。

令嬢を貶められた貴族の報復によって『渡り鳥』が襲撃に遭った後。彼もまた捕えられたが、処刑前日に逃亡。
その後自らの記憶を封じ、「」として生きていく事を選択した。己の翼すら削ぎ落とし、見つかる可能性を出来る限り抑えてまで。

後に彼はとあるパン屋の夫婦に保護され、『カノン』という名前で第二の生を送っていたが──無論、この記憶は一定期間を経た後に『消去』され、元の人格自分が取り戻されるまでの仮初のもの。
それが叶った後は、また『新たな計画』の為に身を眩ませる予定であった……が。現在、実行される筈の魔術は未だ行われていない。

理由は単純なもの。メルヒオールには誤算があった。
──仮初の人格が、無意識に己の魔術にすら抵抗するほど、他者からの親愛によって強い自我を得てしまう、という事への。

尚、令嬢が『傷物』にされ授かったむすめは、一人のによって救われ育て上げられる事となる。
彼女の名は──アンネリース
ルスティカ゠フェドーの義娘。血の繋がらぬ親子ふたり
即ち、メルヒオールはアンネリースの真の父親に当たる。


■関連文献
資料庫(関係者設定)
設定委託:唯、『自己』に生きる者。
設定委託:『過去』の器は空だけど、『現在』の器は満たされて
設定委託:心に翼を
SS:「其が叶わじ」と。願わくば
SS:幕間劇が終わる時
SS:春告げぬ鳥の閑話
SS:或る計画報告書

(Illustrator:珀織ヒスイ八木ふつき)


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