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文通

リーゼロッテ・アーベントロートとの文通

 親愛なる薔薇の君へ。

 新年は如何お過ごしだったでしょう。
 今年はことさらに寒く、人々の声も遠く、民はみな家々にて大事なき日々を送っています。
 そちらはいかがですか?
 北にいらっしゃる時は、いつものように歓迎の支度を致します。
 きっと貴女の道行に華を添えることとなりましょう。
 どうか貴女が、幾久しく健やかに咲く花であられますよう。

 貴女を敬愛する黒鉄の女より。
2021/01/17 20:28:32
何方か知らない黒鉄の貴女江

こんなお手紙を交わす間柄を何て呼べばいいのでしょう?
戯れと言いましょうか、気まぐれな一時と言いましょうか。
何れにせよ、私らしくないのは確かですけれど――
こうしてお付き合いしているのだから、きっと貴女は何か『特別』なのでしょうね?

寒い季節に外に出るのは億劫です。
それでも貴女は北へ来て欲しいなんて言いたいかのよう。
領より北へ行けばそこは荒涼の戦線ばかり。私の薔薇が胸を張れば、そこはきっと血の海なのに――健やかに咲けなんておっしゃる。

貴女はどんな人なのでしょうね。
知りたいような、知りたくもないような――

ふふ。人生にはミステリが必要です。
秘密のヴェールを大切にするならばこの文もきっと素敵なリドルなのでしょうね?
2021/01/17 23:23:46
親愛なる薔薇の君へ。

このような私信を、果たして友誼と呼ぶには畏れ多くありましょうね。
しかし過分なお言葉、切に有難く存じます。
知らぬが花とは申しますが、私というのはそれこそそういうものです。
きっと貴女は私のかんばせを見、私の声を聞いた時、きっと花とは言い難いものを感じるでしょう。
きっと、これだけの言葉でも貴女には味わい深いリドルとなるのでしょうね。
いつなりと貴女にとって興味深い私でいたいものです。

北は、貴女にとっては些か退屈でしょうか。
もしくは、些かなれども咲き誇れる大事な花壇でしょうか。
赤い薔薇園ばかり求めるのは無粋なもの。
蒼い薔薇が何ゆえに尊き蒼であるのか、知っていれば急き立てる意味もないでしょう。

貴女を敬愛する黒鉄の女より。
2021/01/20 00:47:02

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