サンディ様へ

あなた様のお姿を見てからというもの、あなた様を思わぬ日は一日たりともございません。
私の心はそれほどまでにあなた様に魅せられてしまったのです。

ああ、サンディ様。
わたくしの愛しい花盗人。

どうかこの恥じらい深き身を奥深くまで裂き、わたくしの全てを奪ってくださいまし。
あなた様の髪に少しでも近づけるよう乙女の血潮で髪を濯ぎ、あなたの腕に抱かれるために殿方の腕を切り落としました。
あなた様に手折られることこそ至上の悦び。
夢想の褥に委ねて今宵も独り眠っているのです。

あなた様はいつわたくしを迎えに来て下さるのでしょうか。
こんなにわたくしを焦がれさせて、悶えて死ねとおっしゃるのでしょうか。
どうか殺すのならあなた様のその手で、わたくしの息の根を止めてくださいまし。

わたくしはもうあなた様なしでは生きることなど出来ません。
ただひたすらにあなた様の訪れを待っているのです。

もしあなた様がわたくしをこのまま捨て置くと言うのなら、花は腐り果てて毒を纏うでしょう。
そうなる前にどうか、わたくしを愛してくださいませ。
わたくしはあなた様の愛の贄、哀れな虜なのです。

あなた様を想う者より


（赤黒いインクで綴られており、仄かに血の臭いが漂う）

サンディ様へ

今宵もあなた様はわたくしを奪いに来てくださりませんでした。
あなた様を待って流した涙に愛の花は露と濡れているのです。

ああ、サンディ様。
わたくしの愛しい花盗人。

わたくしを放り置きあなた様という蜜蜂は一体何処の花を求めていらっしゃるのでしょう？

もしあなた様の口唇が他の乙女の首筋に触れるのなら、白い花弁は刃で切り裂きましょう。
もしあなた様の両腕が他の乙女を胸に抱きしめるなら、か細い茎を紐で締めて縊りましょう。

ああ、罪なお方、わたくしに罪を犯させないで下さいませ。
あなた様を焦がれるわたくしに愛を囁いて下さいませ。

わたくしのこの手が赤く汚れるのは、全てあなた様に恋するがゆえのことなのでございます。
どうかこれ以上わたくしを苦しめないで下さいませ。
あなた様を思う余り全ての女を憎んでしまいそうです。

どうかわたくしの褥に忍び込み、あなた様のその剣でわたくしを深く貫いて下さいませ。
そして私があなた様の物であるという印に、この身に幾つもの愛の花弁を散らして下さいませ。
痛みこそが愛されたという証。
悦びだけがわたくしの生きる糧。

あなた様の愛を一身に受け、わたくしは美しく咲いていたいのです。

愛の証明にわたくしの身一部を同封致します。
これを身に着けていればあなた様は如何なる時もわたくしを忘れることがないでしょう。
肌身離さず持ち歩いてくださいましね。

あなた様を想う者より


（血の匂い赤黒いインク。赤い髪で編まれた腕輪を同封）

サンディ様へ

あなた様はご存知でしょうか？
乙女が想いを寄せる殿方に菓子を贈るグラオ・クローネという日を。

ああ、わたくしがあなた様に会いにゆけるのなら、この気持ちをチョコレートに託して贈りますのに。
蕩けるチョコレートはハートの形。
つまりわたくしの心の姿なので御座います。

わたくしの胸があなた様への想いで張り裂けそうになっているとき、あなた様はどれだけの乙女から心を捧げられたのでしょう？

金髪の娘なら黄金の槌を振り下ろし脳天を砕きましょう。
赤髪の娘なら燃えさかる炎にくべて墨に致しましょう。
そして黒髪の娘なら飢えるまで暗い部屋に閉じ込めましょう。

わたくしのサンディ様に想いを押し付けるなぞ、どうしてこのわたくしが許せると言うのでしょうか。
あなた様を謀る雌山羊はわたくしが始末しておきました。
ですが後から後から蛆虫のように欲深き蝿共は湧いてまいります。

ああ、サンディ様。
わたくしはあなた様の身が心配なあまり、夜も眠ることが出来ません。
蛆虫や蝿共を潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても潰しても、心安ぐことは出来ません。
ああ、今日もまた一匹、蝿の手足をもぎ取って腐った性根を生き血ごと絞り出さねばならないでしょう。

ですから魔除けにどうかこれをお持ちくださいませ。
わたくしの愛の証でございます。

あなた様を想う者より

（ハートのチョコレートと一緒に金の指輪を贈る。指輪の内側には「A to S 」が刻まれている）