某月某日

　御機嫌よう閣下。日報であります。
　戦線拘着。
　散発的な応酬に終始。
　負傷十余名。死者は無し。
　うち後送5名。欠損を補修する為、既定の賞与と休暇を申請。

　北部戦線異常なし。

　某月某日

　ご機嫌よう閣下。本日の日報であります。
　酒保にて嗜好品を手配した所、練達産の紙巻き煙草を所望する声大なり。ご検討の程を。

　戦線膠着。
　弓兵によるハラスメント多し。
　小官の私見でありますが、“薔薇”も、寒さであまり咲く気が無い様子。

　北部戦線異常なし。

閣下。
ひとまずは、ご英断に感謝を致します。
閣下がお立ちにならなければこの戦線は、擡げるべき頭を喪って崩壊していたことでしょう。

そしてなればこそ、今こそ申し上げます。
閣下、帝政派との共和を成すべきです。

無論、納得せぬ者も居りましょう。ですが、打破すべきは独力で倒し得ぬ敵です。
私は、正直なところを申し上げて、我ら鉄帝軍には改善すべき点が多々あると愚考しております。イレギュラーズ達と。他国の、そして異世界の、様々な思考に触れたからこそ一層思います。
ですが閣下ならば、他ならぬ閣下であれば、私の言う事にご理解を頂けると信じて一筆を採っています。軍事行動とは力の優劣のみに於いて決するものに非ずと。束ねた力にも意義があるのだと。

閣下。
今、鉄帝国は。
今こそ鉄帝国は、割れてはならぬのです。
私がそれを訴えたところで一将校の泣き言と捉えられるでしょうが、しかし。
閣下ならば。
閣下の言葉ならば。

……色良い返事を、願っております。