宮仕え、っていうのは、僕がおひいさまに仕えてるようなものなのかな。
　ははぁ、それじゃあちゃんとやらないとね。でも、大丈夫？　仕えてる人に迷惑かけたりしなかったわけ？

　楽しかったのは事実だから、またどっかに出かけてあげないこともないよ。
　っていうか、仮にも僕が気に入ったニンゲンの一人なんだから、あんまりしおらしくされてもね。
　竜に気にいられたんだぜ？　もうちょっと得意げでもいいんじゃない？
　ま、あんまり調子に乗ったらつねるけど。

　あーんとかそういうの、もう雛竜じゃないんだからやめてよね。それとも、ニンゲンって大人でもああいうことやるの？
　たみこに世話焼かれるほど僕も子供じゃないからね。逆に、僕があーんとかする方だよ、うん。
　……いや、やらないけど？　ちょっと期待した？

　僕が欲しいもの？　なんだろうな。ああ、好きか嫌いかで言えば、ニンゲンが食べるお菓子みたいなの好きだよ。たまにストイシャが真似して作ってるのを盗んで食べるんだ。ああいうのを作れるのは、ニンゲンの評価できる部分だと思わない？
　ま、でも、キミたちからは、もう充分大きいものをもらってるんだ。
　おひいさまと、ストイシャと、また一緒にいられる。
　そこはほんとに感謝してるよ。キミにも、キミと一緒に戦ってくれたニンゲンにもね。

　じゃ、今日もちゃんと寝なよ。それとも、添い寝して子守唄でも歌ってあげようか？

　ん……ありがと。貰っとく。
　……なんだいその顔。リアクションが薄いとか、そういうふうに思ってる？

　……まぁ、なんだい。僕もね、ストレートに好意をぶつけてくる奴は――たぶん初めてだからね。
　戸惑ってないといえばうそになる。
　ストイシャとか、おひいさまはノーカンだよ。身内、というか、家族というか。そういうやつだからね。
　僕がキミの琴線の、どこに触れたのかほんとよくわかんないんだけど――まぁ、キミが好んでくれるなら、いい、のかな。

　この服は――ストイシャの趣味でね。誰かに仕えるものの服なんだそうだ。アイツのもそうらしいんだけど、僕は結構気に入っててね。ストイシャは――陰気だけど趣味はいい。菓子作りもうまいからね。僕の自慢の妹だ。あ、言うなよ？　アイツ調子に乗るから。
　だから――キミが、この服に似合うのをくれたっていうのは……結構、家族もほめてくれたみたいでうれしい。琥珀糖も……別に不味くないよ。形も悪くない。友達がくれるものってのは……悪くない。

　菓子を作る方ってのは、僕にはわからないけど。ストイシャが、今ニンゲンに教わっていろいろ勉強してるらしいから、いつか教わるといい。話は通しておくよ。キミなら――アイツもビビらないだろうからね。そうして、いつか慕ってるって奴に渡せるといいな。

　今日は別に、揶揄わないでおいてやるよ。そういう日があってもいいだろ。
　でも、明日も同じノリで接してきたらつねるからな。あんまり調子にのるなよな。

　なんかいきなりバカデンとか言われたけど！？
　いやぁ、ちょっと急ぎの依頼だったからね。たみこに頼んでもよかったんだけど、たみこもいろいろ大変っぽいじゃん。
　次はちゃんと呼んであげるよ。すていすてい。

　まぁ、確かに力は戻ってないんだけど、それでもキミよりは強いからね？　僕。
　心配は不要だよ。それより、キミの方も気をつけなよ。キミこそ、厄介ごとに首を突っ込むタイプじゃん。
　……まぁ、その辺上位存在的なのかな。そういう所、良いんじゃない？
　なんか、僕がキミを否定しなかったとか言ってたけど。
　まぁ、別に僕はキミのこと嫌いじゃないよ。僕キミより偉いし。

　僕がおひいさまやストイシャの事を好きなのは、まぁ、なんか直で言われるとざわざわするな……照れるってこういう感じか……。
　そりゃ、僕にとっては唯一の家族だからね。別に家族全員が仲いいわけじゃないってのは、先代の態度見てればわかるんだけどさ。それでも、僕はやっぱ仲良くしたいし、守りたいと思うよ。
　たみこだって、好きな人くらいは守りたいだろ？　たみこが好きな人はいっぱいいるみたいだからね。頑張りな。

　しかし、なんだ……やっぱりたみこ、最近気やすいな？　わからせておくために一回つねっておくか……。

　あっ、たみこ誕生日だ。
　おめでと。

　なんかあげる、ってのが難しいからごめんなんだけど……。
　うーん、そうだな、何か一つ、いうことを聞いてあげよう。
　竜にこういうこと言わせるの、なかなかレアなんだぜ？

　あー、その。いろいろ言わなきゃいけないことがたまっててゴメンなんだけど。
　ほら、依頼の報告書見ただろ。
　どうしてもいっておかないといけないなと思って。

　ありがとな。

　あんまり……自分のこと、気にしたことなくて。
　ほら？　竜だし？　僕強いし？　本来なら心配されるなんて鼻で笑っちゃうんだけど？
　メリーノにも言われたんだけどさ。なんか。うん。
　僕にとって、手のひらの中にあったのは、おひいさまとストイシャだけなんだ。
　その逆もそう。僕がいたのは、おひいさまとストイシャの手のひらの中だけ。
　……だったんだけど。

　……まぁ、いいや。この話終わり。
　次になんかあったら呼んであげる。それでいいんだろ？　ふん。

　ふん。いちいち聞くなよ。教えるもんか。

　……なんか最近生意気だな、たみこ。
　
　べつに、いいけど。

　……なんだい、急に。
　泣きそうじゃん。
　……僕はさ。こういう時に、なんていえば、キミが喜ぶのかわかんない。
　だからこれは……なんていうかな、僕が必死になって考えた言葉だとおもってくれていいよ。
　前も言っただろ、たみこは頑張りすぎだよ。
　あと、たぶん、優しいんだろうな。
　……僕なんかにまで、手を差し出すくらいなんだから。
　……何があったかは聞かないよ。だから、何か楽しい話をしようか。
　別にいいよ。僕にメイド服を着せる話だっていい。いっしょにお菓子を食べに行く話でもいいし、きっと楽しい話は、キミとならたくさんあるだろ。
　それに、ドラゴンの住処なのは悪いけど、ニンゲンの真似して、寝るところくらいはあるからさ。
　疲れて眠れるまで……いいよ。今日くらいは、傍にいてやるから。