油断していた――とは言い訳になるでしょうね。
これでは団員に示しがつきません。無論、このままで済ませるつもりはありませんが。

ラウリーナからの情報によれば、烙印は随分とエーニュ内部を蝕んでいるようですね。
ペニンドが何らかの対抗策を講じているようですが、おそらくは平和的なものは出てこないでしょう。
最悪を想定する必要もあります。
レナヴィスカも動いてはいますが……情けない話ですね。結局は、あなた方に頼らざるを得ない。

　ふ……ああ、失礼。あなたは不思議な男ですね。あなたに惹かれるものがいるもの分かる気がします。

　エーニュ、彼らはあるいは、幻想種の負の側面なのかもしれませんね。ローレットの介入なく、深緑が孤立する政策を取り続けていたら、彼らの様に内部で尖鋭化する者もあらわれたのかもしれません。

　彼らは名実ともに、危険な存在となりました。すむ地は違えど、同じ同胞として――ええ、お願いします。
　彼らを止めてください、冒険者。それはラサの意思であり――私の意思でもあるのです。

　オーダーの完遂、流石といったところですね。
　……いえ、あなたに世辞は不要でしょうか。まず、連絡が遅れたことを謝罪します。

　まず、さらに謝罪を重ねなければならないかもしれません。というのも、ラーガ・カンパニーに関してです。
　もちろん、我々も手をこまねいてみているわけではありませんでした。ですが、ラーガ・カンパニーは、先のネフェルスト襲撃に前後し、敵本拠地への逃走を図っていたようです。
　末端を抑えることには成功していますが、おそらく、彼が受け継いだ『ザントマンの遺産』もまた、敵の王国へと持ち込まれたものと推察できます。まぁ、あれだけのことをしでかして、のうのうとラサに居座ることはできなかったのはそうでしょう。こちらには、恐ろしい狼もいますからね。
　つまり……禍根を断つには、結局の所、この事件を根本から解決するしかないのです。

　エーニュの現状についても、ラウリーナの草から引き続き情報を収集しています。
　情報が固まり次第、ローレットへの作戦行動の依頼もあるでしょう。その時までどうか、英気を養っておいてください。

　それでは、また。

　お察しの通り、ペニンドのアンプルはラーガの手に渡ったようです。
　……結局、奴の手のひらの上というのは業腹ですが、同時にすべての因縁が奴に収束したともいえます。
　いまや、彼こそが幻想種の禍であるともいえるのかもしれません。それがまた、ラサから出てしまったのも……いいえ、これは感傷にすぎない。

　私からのオーダーはただ一つです。
　ザントマンから始まった、この悲劇を終わらせること。

　私も、私の縁に決着をつけるために戦いましょう。
　それから、私とてただ無様に散りゆくつもりはありませんよ。
　この戦いの後に、もう一度、あなたと言葉を交わせると、信じています。