誕生日だと？　フン……なるほど。確かにそうだ。
その用務員もよく知っていたな。俺自身も忘れていたくらいだ。
プレゼントというなら、この酒は貰っておこう。

俺はお返しという文化が好きだ。『お返し』は必ず等価になりえないから好きだ。『お返し』は必ず嘘が生じるから好きだ。
同価値の商品を交換しても必ず前者が古くなり、釣り合いをとろうとすればその感情によって価値を重くする。
『お返し』は釣り合わず、天秤は傾き続け交互に行き交い続けることになる。それを卑しいととらえ、等価の嘘を人はつく。
俺はこの嘘が好きだ。
このときだけ、人間は価値を釣り合ったことにしてしまう。嘘をつき続ける限り互いに対等でいられる。

だから俺も嘘をついておこう。お前が校長室に来たとき、偽物のシャンパンをあけてやる。
俺とお前が対等だという嘘を、互いにつき続けようじゃあないか。