やぁ、ギルバート。

ベネディクトだ、皆は元気でやっているかな。
こちらはひとつ大きな戦いが終わって、少し腰を落ち着けた所だよ。

陛下から黒狼の勇者として任命されたりして、俺個人としても大きな出来事があったりもした。
……命を軽んじる相手を幾ら倒した所で、槍が重たくなる事が無い。だが、そうでない相手を倒した時はどうしても槍が重たく感じてしまうな……と、済まない。愚痴の様な事を言ってしまった。

そういえばギルバートは好きな動物は居るのかな？
俺は可愛らしい感じの動物が結構好きでね、使い魔も偶然出会ったポメラニアンと呼ばれている犬を使い魔にしたんだ。

と、余り長くなりすぎてもあれだから、今日はこの辺りで失礼するよ。
それでは、また。

やあ、ギルバート。

先日、君がこちらに足を運んでいるのを見かけたよ。
女性と二人だった様子だったから、声は掛けず仕舞いだったがギルバートが息抜きをしている事に安堵したよ。君も些か、真面目過ぎる様なイメージがあったからね。

俺も狼や小鳥は好きだよ。
自然の中で生き抜く動物達の生き抜こうとする力強さや、あれだけ小さい翼でも一生懸命に羽ばたいて自分の目指す所へ飛んでいくその姿に俺も惹かれるのかも知れないな……。
ポメ太郎もきっと喜ぶだろうから、もし出会う事があれば撫でまわしてやってくれ。

……次の機会にでもそちらに赴く事があれば、君の従姉妹に挨拶をさせてくれ。
君の友人として、挨拶の一つくらいはしておかねばな。

この短い時期にもすべき事があるだろうし、そちらも大変だろう。
また何か力になれそうな事があれば教えてくれ。
君の頼みとなれば、すぐさま飛んでいくよ。

ギルバート、君のあの時の問いの俺の答えはこうなると思う。

今の君にこの手紙が届くかは解らないが、俺は『許さなくても良い』と思っている。

だが、報復の方法が相手をただ殺すのは……そうだな。
俺の場合は、虚しくなったんだ。

俺は、返して欲しかった。友人を。仲間達を。
……怒りよりも、虚無が先に来てしまった。
殺しても、殺しても、誰も帰って来なかったんだ。

後は、そうだな。友人が、褒めてくれるような人間で居たかったんだと思う。
「それで良い、お前はそうでなくちゃな」と。
まあ、俺が考えている勝手なアイツの妄想の様な物だから、失笑されても仕方ないが。


俺は騎士が聖人である必要があるとは思わない。
騎士とは、主君に。国に、或いは──自分が守ると決めた物の為に戦う者だと俺は思う。
そこには怒りも、悲しみも、人としての感情が当たり前の様に混じっている筈だ。

……ギルバート、君はその剣で、今、何処で何を為そうとしている？
君を心配している者も居る。無事な姿をまた見せてくれ。