……驚いた。あるかないかでいえば『ある』ぞ。
　とはいえ、公に話せる話では……まぁ、当に終わった事件だし、依頼主から「こちらに大義名分があるのだから触れ回ってくれて構わん」とは言われているが……。

　……『de=Lafs』というのは数年前、俺が、若い頃に暗殺した貴族の姓だ。
　何処で調べたか分からないが、ユリーカやショウ辺りにその話の事を聞いたのか？

　書類か。まぁ、そういう事もあろう。

　それはともかく……その貴族達はブルーブラッドだったな。
　殺した時はどちらも命乞いをしていたが、“みっともないものだ”という感想に尽きる。なにせ拷問や殺しを生業にしていたような貴族だったからな。
　女子供もたくさんその手にかけたという。その者らの命乞いなぞ彼らは聞いた試しがなかったろうに。
　……まぁ、それが明るみに出たゆえに他の貴族から暗殺の依頼がきたわけだな。大義名分とはそういう事だ

　確かに、俺も誰かを殺す度に「本当に殺す必要はあったのか」と懸念が思い浮かぶ。
　だがあの時に殺しておかなければもっと被害者が出ていた。それだけは言える。
　もっとも、他の誰かがその役割を担うまでの一時しのぎなのかもしれんが……。

　片方については今説明出来る。『何かしらの役割で成り上がった者』などは、往々にしてそういう事になる。
　国に多大な貢献をした戦士や商人が貴族の称号を与えられるとか、そんなものをイメージしてもらえればいい。
　……『de=Lafs』はそういう黒い仕事で貢献して、もっと地位の高いヤツに気に入られて下級貴族として飼われた。
　大方そんなところだろう。

　子供がいたかどうかについては記憶にないが……まぁ、今度調べてみよう。下級貴族という事ならば、そういう記録がちゃんと残っているはずだ。