グラーノさんはワタシの義父らしい。
でも依然ワタシには記憶がなく、どうにも自分の話だという感覚が薄い。
先日の依頼ではグラーノさんとまともに話せなかった。
ワタシは今が楽しいから自分の過去を探したいとは別段思わなかった。
けど、あの依頼で少し考えが変わった。
このままただ倒してしまうには惜しい気がして。

エディさんだけでなく、別の情報屋さんにも当たってみようと思う。
エディさんが言っていたように旧縁の軍人さんとか、トラモント家の使用人とか、グラーノさんと近い部隊の人とか、グラーノさんのお友達とか……。
何か手掛かりがありますように。

最初の手紙はエディさんの言っていた……グラーノさんが御者とワタシを連れて馬車で出かけた話のあたりかな……。
山に差し掛かった時に、馬に矢が刺さった……。そして馬車は谷底へ……。
そして大量の血痕はあれどグラーノさんとワタシは見つからなかった。
叩きつけられた衝撃で死体はどこかへ飛ばされたか……あるいは川へ流されたか。

でも……エディさんは推察を語ってくれた。
グラーノさんは瀕死のワタシを助けるために魔種と……回復の力を持つスティルバースと取り引きしたのではないかと……。

これは旧縁の軍人さんに宛てた手紙……。どのくらいの仲なんだろう？
どこかで存命中だったりしないかな……？
知り合いが魔種になったなんて、いい顔しないかなあ……。
それか奥さんや娘に会えたり、連絡取れたりしないかな……。

……………。
グラーノさんはワタシが大事だったんだね。
軍人のお友達さんの奥さんや娘……つまりはワタシと同性。
ワタシが寂しくないように配慮してる……。

侍女のメイドリーさんは初めて見る名前だね……。
この人も連絡取ってみたいかも……。

刺客もグラーノさんは心当たりないみたいだね。
幻想と敵対関係にある鉄帝軍人……刺客を雇えるくらいの地位のある人、なんて推理もしたけど。
そうじゃないとグラーノさんは思ってるみたい。

2通目……これは……。
グラーノさんが魔種になりながらも誰かに宛てた手紙……？
ん……宛先……差出人も、水でにじんで読めない……。

ジルさんがグラーノさんとの最期の戦いで……「どうしてワタシ……フラーゴラを呼んだのか。スティルバースのためにワタシを殺して、いちからやり直すためなのでは」と問いかけた時に
グラーノさん……動揺していた。
当たりの推察だったのか……それとも思う所があったのか。
2通目を読む限りではワタシと縁を切ろうとしてるけど……、でも今回は違った。
……心変わりするようなことでもあったの？

そういえばあのホルスの子供達……特にマルガレータさんはグラーノさんの奥さんを模したもの……1通目に記載されてるけど本当の奥さんは亡くなられてるんだって改めて聞くと……。
ホルスの子供達にすがるくらいだから……。そう……。
まがい物でも、グラーノさんのマルガレータさんへ向ける視線は優しいものだった。
ワタシがアトさんへと向けるような……そんな視線。
ワタシの記憶が戻らないから……そのあたりも詳細を調べるのが良さそう。

ん……？エディさんはグラーノさんの奥さんは行方不明、おそらく死亡。って言ってたね……。
……グラーノさんは奥さんを死んだと思っていたのかな……。あるいは地位ある人だから……理由があって行方不明なのを『死んだ』と言っていたのか。