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文通

何時かの魔術師【書籍卿】との文通

(自由図書館に見慣れない書籍が紛れている。手に取って開いてみると、そこに手紙が挟まれていた)

若き私に告ぐ。

お前はかつて『首狩り兎』に襲われ生死の境を彷徨った。
その時に赤羽を名乗る霊に取り憑かれ一命を取り留めた。

しかしそれは正しい歴史ではない。
今お前が生きている世界、歩んでいる人生は時の歪みが生み出した紛い物。
真実はこの書の中にある。

だがお前の血を引く娘は目覚めぬ夢に囚われている。
それは赤羽との融合の反作用。
時の弾力性をもってしても未来と調和出来なくなっている証左である。
そして今また愛しき妻の存在もが掻き消されようとしている。

お前はその身で妻以外の誰かと契りはしなかったか?
その者は本当にお前を愛しているのだろうか?

よく思い出して見るがよい。
お前より赤羽の言葉を信じていなかったか。
赤羽に愛と感謝を捧げていなかったか。

二人はやがてお前を邪魔にするだろう。
裏切られ、傷付きたくなければ、赤羽共々その者をすぐに遠ざけるのだ。
お前を真に愛するのは後の世で会うアイリスただ一人である。

Tierra

(その書籍は『Biblioteca Tierra(大地の書)』と題されている。内容は後に魔導国家・自由図書館の大魔術司書となる三船大地の自伝となっていた)
2021/01/30 21:12:27
我が未来へ

貴方は、赤羽を酷く憎んでいる。
以前よりその態度は明確ではあったが、その動機や原因が不明な以上、こちらとしても、何一つ言葉を返しようが無かった。

そして今になって、貴方は、この大地に向けて、極めて重大なメッセージを残した。
貴方の置いていった『Biblioteca Tierra』には、既に目を通した。
なるほど、確かに三船大地の未来は、本来ならばもっと美しく、恵まれたものであったのかもしれない。

しかし、貴方が素晴らしき世界の王であったと知った今だからこそ、貴方の言葉には、疑問が残る。
斯様に、三千世界を見渡す能力を有していて何故、『赤羽』の介入を止められなかった?
そもそも、三船大地が『首狩り兎』に襲われなければ、彼が赤羽に助けを求める必要さえ無かった。
何故、事前に三船大地の破壊者たる彼女を、この世から排除しなかった?

貴方の未来が崩れようとしているのは、『赤羽』の存在による時空の歪みとやらでも、彼と手を組んでしまった『大地』の愚かさでも、まして愛おしく、愛らしい『ダイヤ』と交わした契りのせいでもなく。

他でもない、貴方の怠慢が、貴方の未来の崩壊を招いているのではないか。
この身には、そう思えてならない。
さあ、答えてみろよ、書籍卿。

大地



(そこまで書いて、『赤羽』はペンを置く。
書籍卿の残した本。あれを全て読み切ってしまった『大地』は、動揺のあまり声も出ず、自分の意思では手も動かせず、自力の呼吸すらままならない有様だ。
それを支えるのが、今の自分の役目だ。
だって、今ここで彼が発狂して、錯乱して、自らの喉を掻き切ってしまおうものなら。

『大地』は勿論のこと、この『赤羽』までもが死に至る。
それだけは、何に変えても避けなくてはならない)
2021/01/31 01:02:57
若き私に告ぐ。

今お前は私に宛てて手紙を寄越してきた。
だがそれはお前の意志によるものではあるまい。
もしお前が手紙を書いたことさえ気付いていないのなら、それは赤羽なる死霊に肉体を奪われ、お前の意識は失われつつあるということだ。

よく思い出して欲しい。
自分の意志に関わらず、誰かと話していたり、体が動いていることはないか。
そしてそれは頻繁に起こっていないかどうか。
お前が仮にそれを知っていたとしても、別の誰かの意志が働いているなら同じこと。
やがて体を動かすのは赤羽の方が多くなり、お前は意識すら保てなくなるだろう。

二重人格と憑依とでは訳が違う。
二重人格は共存出来るが、憑依は乗っ取られるだけ。
乗っ取られた肉体からお前の自我は消滅する。
つまり「三船大地」はこの世から消滅し、起きるはずだった未来は完全に潰える。
赤羽がお前の肉体に宿る限り、「三船大地」の生存ルートはないのだ。

あのダイヤという若者を脅威に思うのは、あの者の心が赤羽の方により重きを置いていると見てのこと。
三船大地の消滅が加速した原因はそこにある。

赤羽をその身より追い出すか、赤羽とダイヤが結ばれるのを見届けて消滅するか。
よく考えるのだ。

Tierra
2021/02/03 21:47:09
(最初の文から数日の後、『大地』は落ち着きを取り戻し、目を覚ました。
『赤羽』とともに、どうしたものかと思案する。)

(彼の言葉は、『赤羽』には耳が痛い。自分の存在が、器である大地を侵していたのは事実だ。
だって、もう二度と、魂は逃避できない。
本来ならば、擦り切れ、自壊を待つのみであった。
ここで自分が消えれば、もうオシマイ。
故に、大地の魂を『つまみ食い』してまで、生き長らえ、ゆくゆくは全てを奪い尽くそうとしていた。
大地は善良な人間だから、目を瞑ってくれると。
死にたくないのはお互い様なのだから、きっと許してくれると。

……ダイヤの事もそうだ。
ダイヤが、この身体に刻まれた傷をきっかけに、自分に惹かれたのを知り。
大地もまた、彼の者と文を交わす度に、恋を自覚したのは気づいていた。
自分もまた、ダイヤを手に入れたくなってしまった。
だから、大地の背を押して、契るように促して。
なんなら身体を『交わして』も良いように、導いた。
けれどまさか、この恋が、遠き未来まで壊していたとは。

今更大地に、許してくれとは言わない。間違いなく、自分は悪だ。
ただ、今は。)

(彼の言葉は、『大地』の胸に突き刺さる。
赤羽は、自分に肝心な事を伝えていない。
分かっていながら、問正せなかった。
だって、赤羽は命の恩人で、魔術の師で、運命共同体で。
だから彼は、自分には想像のつかないほどに素晴らしい事を企んでいるのだと。
そう、信じていた。

ダイヤの事もそうだ。
最初はただ、不審人物である彼の正体を見破りたかった。
君主を失い、寄る辺無きダイヤに、住処を与えたかった。
その想いが、恋心に変わったのは何時からだろう?
ダイヤ本人の魅力もあるし、文を交わすたびに人柄を知ったのはあるが……赤羽の囁きに耳を貸してしまった点もある……と言われれば、否定できない。

例えばダイヤが、『大地』より自分の中の『赤羽』を見つめているのだとしても。
ダイヤも、赤羽も、幸せであれるならそれで良いし。
誰かの幸せな顔を見るのは、自分の幸せでもある。
そのためにこの身体が『汚れて』も良いとさえ思ってしまった。

けれど今更、赤羽を裏切り者と罵倒する気はない。気付けなかった自分もまた同罪だ。
それよりも。)

(ここで口喧嘩などしていられない。
彼等の結論は同じだ。
【自分達は、争いを望まない】。
その意志を確かめてから『二人』は、筆をとった)

2021/02/04 00:52:16
尊き未来へ

確かニ、この『赤羽』ハ、大地の好意に甘えていタ。
樺根が豊かな土壌の全てを吸い尽くス、その日が来るのヲ、虎視眈々と待っていたのも事実。
お前の前に今更嘘は通じないだろウ。
故ニ、現在の大地、未来の大地双方ニ、赤羽の罪を告白すル。

先の文では、赤羽が無礼な物言いをした。
そしてこの『大地』は、赤羽の侵略を許してしまっていた。
長く共に在りながら、彼の真意を汲み取れなかった自分もまた、同罪だ。
赤羽と重ねて、贖罪の意を表したい。

しかしながら、書籍卿。
(貴方の知識と経験全てに敬意を評して、改めてこう呼ばせて欲しい)

甘えた事を言うようだけれど、俺達は、どちらかの未来のみが生き残るべきとは考えない。

俺達は俺達の幸せを手にし、貴方は貴方の世界を生きる。
どちらが優位ということもなく、平行に、それぞれの未来を生きる。

貴方がアイリスという人をずっと愛しているように。
この混沌で、俺達がダイヤと出会えたように。

互いに出会えた大切な人と共に歩み、日々を生きる。
その結果、互いの世界に悪しき影響をもたらすことも無い。

そんな手段は、本当に無いのだろうか?

俺達は、何も貴方の世界を消すために生きてなどいない。
貴方の祭祀を失う結末を望まない。
かといって俺達ハ、今の幸せを失いたくなど無イ。
ダイヤと交わした契りヲ、俺達だけの都合で無かったことにしたくなイ。
(ダイヤが何らかの理由で俺達に愛想を尽かすなどすれば、それはそれで致し方ない事だが)

『赤羽』
『大地』両名は、貴方との争いを望まない。

書籍卿。
偉大なる叡智を持つ、貴方の意見を聞かせて欲しい。

赤羽
三船大地
2021/02/04 01:47:17
三船大地、この愚か者め!
これがかつての私かと思うと、不甲斐なさに腹が立つ。

お前が赤羽を放逐出来ないのは、赤羽に対する依存心と同情、罪悪感によるもの。
消滅ルート回避し未来を繋ぎ止めるには、赤羽との分離は必定。
何故ならこの憑依自体が「歪み」だからだ。

本来であれば三船大地の魂が死んだ後、赤羽は肉体の乗り移るはずであった。
だが三船大地の魂は死んでおらず、三船大地の魂は赤羽により蝕まれている。
そして同時に憑依状態を維持するために赤羽の力も摩耗しているはず。
三船大地の魂が消滅して肉体が赤羽のものになったとしても、器たる肉体に強いた無理は肉体寿命を縮めるであろう。
このままでは共食いの末、双方にとっても望まぬ結末となる。
もし三船大地と赤羽が共に生き残ることを目指すなら、最終的に分離するより他にない。

私はこれについて完全なる策を知らない。
世界の叡智を集めた大図書館にもその解はないからだ。
だがひょっとしたらと思う糸口ならある。
お前が問題解決のために動くというのなら教えてやらぬでもない。
それを実行するには三船大地、お前の意志と自立が第一条件だ。

心を決め、赤羽との分離に向けて動くというときだけ手紙を寄越すが良い。

Tierra
2021/02/05 22:32:52
「……だってさ。赤羽」

「……あーア、折角、この身体をいい感じに仕上げてたのになァ。大地の方が先に壊れてくれりゃア、ゆくゆくは俺が有効活用してやるつもりだったんだガ」

「クソ野郎かよ」

「さテ、どうもこのジジイの話だト、中途半端に俺とお前が同居しちまってるかラ、色々問題が起きてるらしいナ」

「道理で最近身体が重かった訳だよ。後で色々覚えてろよバカ羽」

「バカ羽って言うナ。デ、どうするんだ大地? このままだと俺達仲良く共倒れだってヨ」

「俺は当然死にたくないし、赤羽も死にたくないんだろ。だったら、続きを聞くしかない」

「俺とお前が切り離されたラ、お前は俺抜きで生きていけるのカ?」

「……一応、俺も混沌でそれなりの経験は積んでるし、お前から教わった事が0になる訳じゃない。
無闇に危険に飛び込まず、鍛錬や研鑽を怠らなければ、多分、なんとかやっていける、と思う。
……赤羽が繋げたこの首が、急に千切れないかだけ心配だけど。」

「この赤羽だゾ? ンな中途半端な仕事するかヨ。……まア、心配事なラ、お前から離れるまでには方してやるヨ。
あちらさんはお前の意思が第一条件っつってるけド、どうせ俺にも色々仕事振ってくるだろうシ。そのついでダ」

「……うん、じゃあ。教えて欲しい、と返事するよ」

「……あァ」

(……というやり取りが、自由図書館であったか否かは定かではないが)
2021/02/05 23:36:55
書籍卿へ

第一に、ここに宣言する。

大地は、赤羽との離別を望む。
赤羽ハ、大地との因果を断ツ。

赤羽、大地の平穏のためなら、我々は別の道を行こう。

赤羽と離れたとて、大地に積み上げられた知識や経験は無に帰さない。
彼を失ったとて、この身に恐れる事は何も無い。

俺は大地から離レ、素直にこれまでの報いを受けるとしよウ。
大地をむざむザ、俺の業に巻き込むこともあるまイ。

この身は、既に過去より来たりし赤羽の知識や魔術の多くを授かった。
これに、未来たる貴方の教導が加わるならば、こんなに頼もしい事は無い。

即効性のある解決策は今は無いかもしれないが、赤羽、書籍卿、三船大地の智慧を結集すれば、きっと、何らかの解が見いだせると信じたい。

だから、書籍卿。
貴方の知るという、唯一の糸口を教えてほしい。

赤羽
三船大地
2021/02/06 00:09:03
宛先すら読めぬ愚か者に教えてやれるものはない。
私は赤羽の意見など求めておらぬし、お前が赤羽を頼る限り私は取り合う気はない。

何故赤羽と同化するのが良くないのかについては先に書いた。
イレギュラーな憑依状態を維持するのには無理がある。
お前と語り、お前の肉体を動かすことは消耗を早めるだけだ。
お前の心が赤羽を弱める一因となっていることを悟り、今は赤羽の意識を眠らせておかなければ、いざという時に赤羽の霊は弱体化して分離も憑依も不能となろう。

死霊が取り憑くというのはままあることだが、それは実のところ本人の意志を操って動かしているに過ぎない。
赤羽の場合は完全にイレギュラーかつエラーであり、お前と赤羽のみならず周囲にも悪影響を及ぼしている。

一人で決められぬのなら今は出直せ。
もしくは解法を自分で見つけ出すが良い。

Tierra
2021/02/08 23:25:15
(ある夜の自由図書館にて)

「……大地さァ」

「……何?」

「未来のお前、クソほど気難しいナ???何アレ???今のお前からああなるって俺、全然想像つかねぇんだけどド????」

「馬鹿、これから大事な事を教わる相手なんだぞ。口を慎め。……そもそも、あの人がそうなってるのは数割お前のせいだぞ。……残りは、俺のせいだけど」

「はン、らしくねぇナ。そんなにしょぼくれテ」

「……だってさ、幾ら俺にその気が無かったとはいえ。あんなに言われると、流石にちょっと落ち込むぞ」

「ふぅン、大地クンは繊細なんだなァ。……まァ、でモ、アイツが俺を嫌うのはともかク。『黙れ』とまで言ってるのハ、単に俺の言葉なぞ聞きたくなイ、っつうワガママだけじゃねぇんだろウ。
今はまだ致命的な影響は出ちゃいないガ、先にジジイが言ったとおリ、これからはお前が俺を頼りすぎるのモ、俺が主導権を握るのもよくなイ。こうして対話するだけでモ、俺の魂を削リ、お前の精神を擦り減らス。今までは耐えられてモ、この先の保証はねェ。俺かお前だけがぶっ壊れるならまだいいガ、両者共倒れなんて最悪だしナ。
これまでお前にゃあアレコレ指図してきたガ、そいつも暫く止めダ。俺に頼らずとモ、ローレットの連中とちゃんと付き合えりャ、そこそこ生き延びられんだロ。そこんとこうまく立ち回レ」

「やってみる」

「だかラ、これかラ、俺は暫く黙ル。眠ル。お前ニ、なるだけ干渉しないようにすル。ジジイが事態を動かすために『赤羽』も動ケ、と言った時だケ、俺を呼ベ。お前モ、その意志を強く持テ。
お前が殺されそうなときゃア、流石に黙っちゃいないガ。精々、そうならないようにしろヨ」

「……うん」

「……いいカ、金輪際、俺以外の悪霊に惑わされるんじゃねぇゾ。お前は暫く一人で動くガ、独りにはならねェ。ダイヤとかとモ、まァ、仲良くやるがいいサ」

「」

「あーあーそもそモ、俺ァ本当は相当なジジイなんだゾ。このジジイを酷使させんじゃねぇヨ、若モンの癖ニ。お前如きがこの赤羽に頼るなんて百年早かったんだヨ。……じャ、ジジイは暫く黙ってるからヨ。」

「……おやすみ」



(……それきり、しん、と『赤羽』は黙り込む。呼ぼうとは思わないけれど今、呼んだとて、けして返事をしないだろう。
頭の中がこんなにも静かなのは、いつぶりだ?
……『首狩り兎』に襲われる、その直前以来だろう。
兎にも角にも……兎は要らないが、改めて、彼に伝えなくては。)
2021/02/09 00:30:52
書籍卿へ

貴方の言うとおり、俺は、赤羽への甘えを充分に断てていなかった。
これまでの関係を続ける事は、赤羽のためにも、まして三船大地のためにならない、と、さんざ貴方は伝えてくれたと言うのに。

思えば、首狩り兎。三船大地の運命を大きく変えた彼女との出会いから、この心の休まることはずっと無かった。
今、この心は、不気味な程に静かだ。
けれど、こんなにも静かだからこそ、これからは何者にも邪魔されることなく、偽りなく言葉を述べられる事だろう。

改めて、俺の覚悟をここに宣誓する。

今より、この身体は、三船大地の意思のみで動き、言葉を残し、事を成す事を誓う。
赤羽に頼らず、俺の意思で戦い、俺の意思で選び、俺の意思で、貴方に向き合いたい。

だから、どうか、書籍卿。
この身に、未来を掴む解へと至る、その足がかりを、示しては下さらないだろうか。

三船大地
2021/02/09 01:12:04
若き私よ

お前の周辺にアイリスと言う名の者はいないか。
筆名や芸名かもしれぬし、似た別の名前かもしれぬ。
心当たりがあるなら、その者との関係を円満におさめよ。

私に分かるのはこれだけだ。
後は己で考えるがいい。

Tierra
2021/02/10 21:56:02
(アイリス……。未来の俺が妻にするという女性の名。けれど、今の俺は、若き三船大地には、そんな人に心当たりは、ない)

赤羽……も、何にも言ってなかったし……多分、そんな人は知らないよな……。

(今の自分に、眠っている彼の声は聞こえないが。
起きていたとて、これまでの反応からも、彼がそんな人物は『知らない』という事は、容易に答えが出るだろう。
何よりも、彼には頼らないと決めたのだから。別の糸口から答えを探らねば。)

……て言ってもなあ。
羽切は絶対違う。バリバリ日本人だし。
……てか、羽切と仮にケッコン……するんだったら、日本人と日本人だし、わざわざ俺がTierraなんて名乗る理由なくない?というかTierraって……何語?

……青刃。あいつは初めて会った時、アリスって名乗ってたから『アイリス』には近いけど。
……喧嘩ふっかける気は無いけど、中身が『赤羽の弟』って知れば、あの人も黙っちゃいないだろ……そもそも俺、目の敵にされてるし……。

ダイヤ……は、サリナスとは呼ばれてたらしいけど。……ちょっとアイリスとかとは遠い。
……いや、ダイヤ、そういやあ。『赤羽』が今寝てんの、気付いてるかな。
逆にダイヤの中では大地=赤羽ってことで、気にしないのかな。わっかんねえなあ……。

(とにかく身近な女性達(?)の名を列挙するも、やはり心当たりは無い。イレギュラーズの中にもそう名乗る者は居なかった、と思う。……と言うならば、自分はまだその人に『会えていない』という事か。)

……赤羽には頼れないし、書籍卿も意地悪でもなく、本当にこれしか教えられないんだろう。
だったら……彼の言うとおり『その人』に会えたなら、極力仲良く。
……そして、その人の身に危険が迫ったなら、守るしか、ないか。
2021/02/10 22:31:53
そうだよ、ダイヤといえば……俺は『契り』……交わしてるんだよな……。
(ぞくり、いつかの『夜』を思い出して、身震いする)

……書籍卿の事だ、『三船大地が契るべき人間はアイリスただ一人。アイリス以外認めない』って言いそう。てか、絶対言うだろ。

でも……いくら未来のためだからって言っても、今別れてダイヤは納得するか?『アイリス』がいつ現れるかもわかってない人なのに?
いくら俺の事とはいえ、自分勝手が過ぎるだろ……。
俺だって、ダイヤを守るって、決めたんだから。……そこは、嘘はつきたく、ない。

……そもそもの、こんな事になった原因。
俺が蝕まれず、赤羽が壊れないための対処は……その辺の問題を解決するには……もう一個身体を用意して、そこにどっちかの魂を移す……とか?
これはこれで、俺の魂も赤羽の魂も傷つかないように、慎重にやる必要が……あるけど……。
……いや、それこそ、書籍卿が嫌う赤羽の手法そのものだし……。

……ああああ……。
(胃が、痛い。痛いけれど、彼には【後は己で考えるがいい】と言われてしまった。きっとこの苦悶に答えなどはくれない。
なんの手掛かりもない状態でこれ以上の問答を重ねても、時間の無駄だろう。)
2021/02/10 22:54:23
書籍卿へ

『アイリス』。その人が未来を開く鍵にとなるのは、理解した。
必ずや、三船大地は、その人を守ってみせる。
また、いずれ。

三船大地


(……悩みに悩んだ末。今の大地には、こう返すのが、やっとだった。)
2021/02/10 22:57:09
書籍卿へ

しばらく、文を疎かにしていて申し訳無い。
近頃自分の周辺が慌ただしく、一段落つくまでは筆を執れずにいた。

今回こうして手紙を書いたのは、貴方に伝えておくべき事があるからだ。

率直に言おう。あれからしばらくして、『自分はアイリスに会った』。

貴方の妻である女性と同じ人物かはわからないが、色白の肌、長く風に遊ぶ金髪、深い青の瞳が特徴だ。
我が未来は、このような女性に心当たりはあるだろうか?

ただ、幾つか問題点がある。
彼女は、貴方の、そして俺の妻と呼ぶにも心身ともに『幼い』。

この少女が、もし、貴方の愛する人と同位の存在ならば。
未来たる貴方と過去たる俺がこの混沌に存在しているように、このアイリスという少女もまた、遥か過去よりこの世界に召喚された旅人なのでは、と考える。

しかしそれを確かめようにも、召喚の影響なのか、彼女の記憶には欠落が多く、本来の父母の顔と名前も思い出せないと言う。
それでも何とか絞り出してくれた断片的な情報から、どうやら地球出身であるとは推測されるが……。

問題といえば、その父母という点も一つ大きな問題だ。
貴方は既に見ているだろうが、この自由図書館には、俺以外にダイヤも住んでいる。

少女特有のカップルに対する憧憬か、それとも父母の記憶が無い事の不安感から俺達に縋りたいのかはわからないが……俺達二人を見て、その、『パパ』と『ママ』と呼んできている。
特にダイヤは俺と似合いと見られたのが嬉しくて、喜んでしまって、アイリスを着飾ったり、遊び相手になったり、色々と可愛がっている様子が見られる。ある意味では、この二人は相性がいいのかもしれない。

だが逆に、ある意味ではこれは好機であると考える。
アイリスには、戦う力は備わっておらず、守る人間が必要だ。まして昨今の奴隷事件、彼女を見放した結果、か弱い彼女が悪党に連れ去られたらと考えるだにぞっとする。
彼女がある程度俺達に信を置いているというならば、彼女を守る役目を恐れ多くも、俺が受け止めたいと考える。
貴方に彼女を託す事も考えたが、あまりに無責任に思われるのと……貴方のその怖い顔だと、その、アイリスが怖がってしまいそうで。

「アイリスとの関係を円満におさめよ」
貴方は過去に、俺にこのような事を伝えた筈だ。
ならば、この俺が彼女を近くで見守り、関係を育むことで、未来にも何らかの好転が見られるのではと、愚かしくも考える。

どうだろうか、書籍卿?

三船大地
2021/03/01 08:52:15
若き私よ

お前が言う者は私のアイリスではない。
恐らくはお前の縁の者ではなく、ダイヤという若者の縁に繋がるものと推測する。

今お前の周りには赤羽の縁の者、ダイヤという若者の縁の者が混ざり、お前の縁の者は退けられている状態にある。
それを放置したままにすれば私に続く未来は断たれる。
いや、もう既に修復不能なところに来ているのかもしれないな。

今は私もお前と同じこの世界に呼ばれたただの旅人。
何の力も持たぬし、狂いだした未来の行く末を知ることも出来ぬ。

さらばだ、三船大地よ。
お前は修復ではなく、代役を立てることを選んだ。
これから先はいちいち私に伺いを立てるのではなく、己で考え、選択の責は己で負え。
お前が誰かを選んで捨てた縁、歪んだ関係、そのツケは必ず支払わねばならぬ時が来る。

それもまたよかろう。
私にはもう関係ないことだ。

Tierra
2021/03/05 22:04:49

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