え、ちょっと待って!?
執政官の子を含めて今まで誰にも領主様とか呼ばれたことないわよ!?
前に酒場に視察に行った時とか、顔知ってる連中が
酌しろだの料理運べだの
挙句の果てにはお尻触ってきたり……ごめん、なんでもないわ。
でも勝手にシェリーの体に触ってくるような馬鹿いたら
遠慮しないで殴り倒していいからね。
そんなわけだから、気にしないで好きに呼んでね。
よっぽどな悪口じゃなきゃ大丈夫よ。悪口は聞こえないとこで言ってね。
あ、でも執政官の子の前でだけは領主様って言っといたほうが
後でいいことあるかもしれないわよ。
あんな事件の後だけど、ここの暮らしに慣れて
気持ちに余裕ができたら将来やりたいこととか考えてみて。
執政官の子の役に立てるくらい知識と経験が身についた時、
シェリー自身がなにをしたいのか。
決まったらこっそり教えてね。
……今日、また領地でダンジョンの入り口が見つかったわ。
やっぱり今回も探索したいって冒険者が願い出てきて。
絶対に誰か死ぬって分かってるのに、ロマンとか豊かになりたいとか
そんなに理由で危ないところに行くのの許可出す身にもなってよ。
命の危険があるって承知で行きたいなら止められないじゃない。
そりゃ酒場と鉱山のマーケットくらいしかないスラムだけど、そんなにここの生活って嫌なの……?
……ごめん、これこそ本当になんでもないわ。
寒い時期だから体に気をつけてね。
(悩んだ末に出さないことに決めて、机にしまっておいた手紙を
偶然誰かが見つけて配送屋に渡してしまう)
2021/01/27 20:56:17