PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

一人で過ごす夜

関連キャラクター:ジョシュア・セス・セルウィン

ひとりで
 なぜ街の人に、毒のことが知られてしまったのかは分からない。ただ、誰かがジョシュアを指さして、この身体に眠る性質のことを口にしたのだ。途端、先ほどまでにこやかに接してくれていた人が青ざめて、周りの人がすっと遠ざかった。

 嫌悪、恐怖。そういった感情がむき出しのまま向けられて、その場で真っすぐに立っていることができなくなった。苦しくなる胸をおさえながら、強張る足を動かして、街から逃げ出した。
 そうしてどうにかたどり着いた森の中で、焚火の前に座り込んでいる。

 ひとりの夜は、辛いことばかり考えてしまう。

 いつもそうだ。毒のことを知られては冷たくされて、その場にいるのを許してもらえなくなる。出ていくように怒鳴られたことも、石を投げられたこともある。

 自分は毒の精霊だ。どうせ好かれない。こんなことをされても、仕方がないのだろう。
 だけど自分は、人にこの能力を使うつもりはない。肌に触れたくらいでは、同じ場所にいたくらいでは、毒にかかることもないのに。

 僕はこの先もずっと、こうしてひとりで過ごしていくのでしょうか。

 そう思ったら胸の奥が締め付けられるような思いがした。今日擦りむいたばかりの膝がじくじくと痛み出したような気すらして、焚火の明かりに縋るように近寄る。

 いつか誰か、自分に優しくしてくれるひとに出会えたらいいのに。当たり前の日々を、共に過ごしてくれるひとに出会えたらいいのに。
 湧き上がった想いを振り払うように、ジョシュアはそっと首を振った。
執筆:椿叶

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