幕間
混沌スポット巡り
混沌スポット巡り
関連キャラクター:カイト・シャルラハ
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- 静寂の青
- 「ここへ来るのはいつぶりかな?」
「ああ。あの海戦からもう二年も経とうとしてる」
リリー・シャルラハとカイト・シャルラハはかつて絶望を謳っていた海にカイト自身が操船する紅鷹丸で訪れていた。あの海洋王国大号令が発令されてから二年。あの時の怒号が信じられないぐらいにはこの海に静けさが戻ってきている。
「あの時水竜様が助けてくれなかったら……今俺達はここにいないんだよな……」
「うん……あの時はとても怖かった……でもね」
「リリー?」
真剣な眼差しで海を見つめるカイトの胸にリリーは飛び込む。カイトは少し驚きつつも彼女の方へ視線を向けた。
「あのピンチを乗り越えたら……きっとカイトさんと一緒にまた笑い合えるって思ってたから……その気持ちが水竜様に届いたんだって思ってる!」
「リリー」
リリーの背をカイトの大きな手が包み込む。海に深く深く沈んだあの時。
──だめだ……このままじゃ、二人共……。
傷付いた全身に冷たい水が絡み付く感覚は今でも覚えている。絶望の青──それはその名の通り絶望的な程に死そのものを体現したかのような海だった。
けれど今や穏やかそのものの静寂。失った命も多かったが、それでも得た希望も大きかった。
「あれから海洋は復興の日々を送ってきた。その甲斐あって嘗てあった賑やかさが戻ってきている……いや、前以上に盛り上がっているよな!」
「うん! そしていつかこの静寂の青にも静かなだけじゃなくて、賑やかさも増えてくるといいよね!」
「そうだな!」
あの海戦から二年。
海洋は少しずつ立ち直る為に前を進んでいるのだ。 - 執筆:月熾
- バンジージャンプ。或いは、夏の空から…。
- ●度胸試しのその先に
バンジージャンプと言うものがある。
ところは海洋。
山岳地帯の多いある島での出来事だ。
「おぉー! おぉ? あれは、一体?」
「あの程度の高さから飛び降りるのに、何をはしゃいでるんだろうな?」
丘の上には旅行客らしき女性のグループ。
そのうち1人が、身体の数ヶ所にしっかりと縄を結び付け、半泣きになりながらも丘の端に立っている。その後ろでは、口々に囃し立てる友人たちの姿。
丘の高さはおよそ30から40メートルほどだろうか。
「どうやら度胸試しの一環みてぇだな。体に縄を括りつけて高いところから飛び降りることで勇気を示すって書いてらぁ」
案内板に視線を走らせ、カイトは「はて?」と首を傾げた。
元はとある密林に住む小部族の儀式であったらしい。
成人の儀式の一環として、勇気を示すために行うらしいのだが……その意味がカイトには理解できなかった。
「怖いのか、これ?」
「リリーぐらい小さかったら、怖いかもしれないね。でも、落っこちる途中で風に流されたり、鳥に捕まっちゃうかもしれない」
「あぁ。海面に跳ねた魚よりも捕まえやすいんなら、猛禽にはいい餌だろうしな」
カイト・シャルラハ(p3p000684)の発言に、リリー・シャルラハは思わず1歩、後ろへ退いた。
もちろんポーズだ。
リリーとて、カイトが自分を餌のように見ているなどとは思っていない。
「俺には分からない感覚だな。高いところが怖いってのは……高ければ高いほどに景色はいいし、風も気持ちいいもんだ。そうだろ?」
「ワイバーンで飛ぶ方が高いもんね。風が強いと、吹き飛ばされそうになるけど」
なんて。
言葉を交わしながらも、2人は何ともなしに丘を登って行った。
その途中で、甲高い女性の悲鳴が聞こえる。
次いで、友人たちの笑い声。
先ほど、飛ぶのを躊躇っていた女性が、ついに勇気を示したらしい。
「無粋なことを言うつもりは無いんだが……翼が無いってのはどうにも不便に思えてならねぇ」
「生まれた時から翼があるなら、きっとそう思うんだろうね。リリーは小さくって不便な思いをした記憶があるけど」
何しろ人の視界に入らないので。
通行人に、うっかり踏まれかけたのも1度や2度では無かったはずだ。
「生まれについて色々言っても仕方ねぇか。リリーは高いところ、怖くねぇのか?」
「あんまりね。このバンジージャンプって言うのもやってみたいかも」
「いいんじゃねぇか。でも、この辺りは鳶が多いぞ? 攫われでもしたら大変じゃねぇか?」
丘の上に辿り着き、カイトは空へ視線を向けた。
遥か頭上には、円を描くように跳び回っている鳥がいる。
観光客の手にした食べ物でも狙っているのかもしれない。
追い払うべきか、と思案するカイトの前でリリーはくるりと身体を反転。
カイトへ向けて、両手を一杯に広げてみせた。
「大変じゃないよ! その時はカイトさんが助けてくれるでしょ?」
夏の花が咲くように。
リリーは笑って、そう言い切った。 - 執筆:病み月
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