PandoraPartyProject

幕間

カルセイン領の日常

関連キャラクター:シャルティエ・F・クラリウス

街道筋:〇〇〇がやってくる
「リル、どうかしたの?」
「ひゃわっ! しゃ、シャルティエ様!?」
 手にしていたチラシの隠し場所を失い、あわあわするリル。
 何事かと視線を落とせば、領地に移動動物園が来るらしい。
「隠さなくてもよかったのに」
「でも、タダではないらしいので……」
「僕も楽しみたいから」
 返した言葉に、リルの尻尾がふっくりと揺れた。
執筆:芳董
飛ぶために

「……それ、は」
「ああ、これかい? 義足だよ」
「ええと……はい。知っています。――あの、」

 僕に、義足について教えてくれませんか。

 どうしてそれを告げようと思ったのかはわからない。
 どうしてそれを知ろうと思ったのかも、わからない。
 ただ。優しいあの乙女(ひと)が再び飛ぶときに。もっと近くで、もっとしっかり。このちっぽけな手のひらで支えられたら、と。そう思ったから。だから。
 知るべきだと、思ったんだ。

 領民は優しく、義足についての注意点や配慮すべきところ、壊れやすさ等について教えてくれた。
 彼女はきっと義足についての懸念も不安も教えてくれないかもしれない。それなら――僕が先に、知っておけば良いから。
執筆:
幸運の白
 ここ数日カルセイン領では猛暑が続いていた。
「数日すれば雨だと耳にしたけれど、君はどう思う?」
「水源は大丈夫そうだが――農場が心配だな」
 各種資源に余裕はあり万一の際の対策もあるけれど、不幸を未然に防ぐことだって必要だろう。
 そうやってシャルティエは資料を机に広げ、長々とリオンと話し込んでいた。
「シャルティエ様、大変です!」
 挨拶もそこそこにやって来たのはリルだった。余程慌てたのか髪や服のリボンが乱れている。
「どうかしたの?」
「街道筋にあの白い――」
 と彼女が見た事を告げる。
「これは使えるかもしれないな」
「だね。リル、甘いお菓子をたっぷり用意してくれるかな?」
 乱れた髪をシャルティエは整えてやり、その幸運の正体を察した少年達はふふと笑い合った。
執筆:いつき
ご機嫌? 不機嫌?
「落盤、というのは。或る程度予想していたけど」
「土砂崩れかもしれません。雪解けで地中が空洞になると起こる場合もあります」
 鉱山管理人の悩める声に「むぅ」と頭を抱えるシャルティエの眉間へ、ぶすっと容赦なく指が刺さる。
「痛い」
「何の為の金だ? 私腹を肥やす為じゃないだろう。その金でさっさと二次災害の防止と工事に着手。現場の視察も」
 じとりと横目で話を聞いていたリオンは、二人を交互に見て溜息。呆れながらもサクサクと答える。まるで既に経験済みのように。
「……リオン。君って意外と、為政者に向いている?」
「意外ととは失礼な」
「はっはっは、優秀な右腕をお持ちで」
「いや、彼は――」
 ぶす。シャルティエが返答するより先に鉱山管理人の眉間を指で一突き。
「俺は『友達』だ」

PAGETOPPAGEBOTTOM