PandoraPartyProject

幕間

なんでもいいですよ

関連キャラクター:すずな

氷水
「ねぇ、szn」
「アルファベット辞めてもらっていいですか?
 誰の影響ですか? 純和風ですよね? おさよさま???」
「ねぇ、すずな」
「……まあいいです。何ですか?」
「尻尾揺れてるわよ」
「見えないでしょう!?」
「気配が……」
「まあ! いいです!
 ……どうしたんですか?」
「最近暑いわね」
「はい。ずいぶんいい気候になりました」
「この間、知ったんだけれど。『アイスバケツチャレンジ』というものがあるそうよ」
「……はい?」
「思い切り良くバケツ一杯の氷水を被ってチャリティーするらしいわ」
「どうして? 私に???」
「最近暑いから……」
「暑いからじゃないですよ!」
「sznだから……」
「アルファベットに戻ってるでしょうが!!!」
執筆:YAMIDEITEI
もてなしの心
 たん、たん……たたん。
 夕焼けの空、硬い石で塗装された道が紅く染まっている。
 たたん、たたたたた。
 その影が、姿が見えれば我慢できずに足が前へと、彼女達の方へと向かってしまう。
「小夜さん! フィーネさん!」
 声を上げて名を呼ぶと二人共顔を綻ばせてくれるのが理解って、待ち遠しかった心が漏れてしまった事が知られてしまった事に頬が夕陽色に彩られていく。無かった事にはならないのだ。もういいやと二人の前まで駆け寄ると早速黒髪の彼女は微笑みながら声を掛ける。
「すずな……お店までの道は貴女が教えてくれたのでしょう。どうしてここまで?」
 意地悪だ。盲目の彼女は時折こんな意地悪をする。わかっているだろうに、知っているだろうにこの人はこんな風に意地悪を言う。
「ちょ、ちょっと迷ってないか……心配になった、だけですし……」
 心中を見透かされたかと焦り、恥ずかしくて言い訳の語尾も弱くなってしまう。しかし、そんな言葉と感情を向けられるに焦がれているのもまた事実。誤魔化す様にフィーネの方に顔を向ければ此方は純粋な笑顔を向けてくれる。
「すずなさん、お仕事、お疲れ様です」
「フィーネさんもわざわざありがとうございます」
 お仕事着も、似合ってますね。とフィーネの言葉に何故か照れが隠せない。
 今のすずなは親友であるマリア・レイシスが切り盛りしている串カツ屋の制服姿。休憩中に迎えに行ってもいいかとマリアにお願いし、笑顔で送り出された所であった。
「はっ……! 休憩時間! じゃ、じゃあ行きましょうか、案内しますね」
 ここで話していたい気持ちも無くはないがもう少しで戻らなければ自由時間も減ってしまう。この後は貸切にしてもらったが、それでも働いている者達に任せっきりにする訳にもいかない。
「ゼファーさんは先に店で待ってます、ここまで来たらもう近いのでもう少し頑張りましょう」
 かつんかつん、小夜の杖が鳴る。
 たん、たたん、フィーネとすずなが大事な彼女の速さに合わせ歩く。

「ふふ……こんなに近いなら店で待っていても良かったのよ、すずな?」
「も、もう! いいじゃないですか!」

「串カツ……」
「大丈夫ですよ、揚げ物以外もありますから」

 刃を振るわない日があっても良い。
 剣を振るう代わりに誰かを饗す日があっても良い。
 この時間もすずなにとって、大事な一時であることに違いない。
 扉を開けば聞き慣れた声がする。
「先に頂いてますよぉ」
「いらっしゃい! 小夜くん、フィーネくん! 先ずは飲み物から注文いいかな!」
 手を洗い、制服を整え二人を席まで案内する。そして満面の笑顔を向けながら。
「串カツマリ屋にようこそ、ご注文は何にしましょう!」
執筆:胡狼蛙
灯り揺れる
「ンア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!」
「今日も元気ですね」
 暖簾を落とし、営業中の板を逆に向けて扉の施錠を行う。正純は厨房内を横目にレジカウンターを開いて売上を数え始める。
「全く、なにをやらかしたんです?」
「さぁ……つまみ食いがバレたとかじゃないんですか」
 すずなの呆れ声にもう慣れたと言わんばかりに感情の無い声が返ってくるだろう。
「コルネリアさん、どうしていつもやられると分かってるのにつまみ食いするんだろう……」
 奥から出てきたのは洗濯した割烹着の換えを入れた籠を抱えるタイム。純粋な疑問だからこそ鋭い刃となって対象を切り裂く。
「仕方ない、もうそろそろとらぁ君を止めてあげるとしようか」
 流石のマリアも閉店一時間前からバスターを受けている彼女を憐れに思ったのか、席を立ち厨房に向かおうと。
「お待ちなさいマリア、コルネリアは私のボトルを勝手に開けて飲み干してしまった罰を受けているのです。罪を洗い流すまでもう少し待ちまし「わかったよヴァリューシャ♡」ょう」
 慈悲は無かった。
 そもそも客に出すものであってヴァレーリヤのボトルでは無いということは誰もツッコミはしない。
「こんななんて事ない一日が、ずっと続いていけば良いですね……」
 目を細め己の指を見つめる。戦場に立ち敵と切り結ぶ、血塗られた手でも誰かを笑顔に出来る、好きな人達と楽しく働ける此処が好きだった。
「すずなさん……」
 すずなの独白にしんみりとした空気の中、正純が声を「ンア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」うるさい。
 正純が声を掛ける。己の心中が言葉として出ていた事に気づいたすずなは紅くなった頬を誤魔化すように笑みを浮かべ。
「さ、片付けも終わったし、正純さんがお金数え終わったら帰りましょう!」
 パンっ!
 柏手を打つと皆も微笑み頷く。
「お疲れ様! 明日も沢山頑張って沢山飲みましょう!」
「ヴァレーリヤさんはせめて納品来るまで飲まないでくださいね。お客様に出す分が無くなってしまうので」
「えっ」
「そもそも商品飲んじゃだめなんじゃないかな……」
「ヴァリューシャ……♡」
 タイムの声を締めに、今日もマリ屋の一日は何事も無く終わりましたとさ。

 ンア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙。
 一人を除いて。
執筆:胡狼蛙

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