PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

悍ましき現世より、愛を込めて

 目まぐるしい一日は終幕を迎え、深い夜が舞い降りる。
 もはや見慣れた寝室は、今日という日を機にいくつかの変化を経た。
 彼はその変化の中でも、書き物机に置かれた物品に目を遣った。仮面越しではない、一種の独特な憂いを宿した眼差しで。
 白の花。赤の花。
 それから、銀色のインク。
 何秒か見つめた後、彼は寝床にその身を横たえた。一時の旅を終えた身体は直ぐに眠りへと導かれる。

「主よ」
 夢現を彷徨う最中、彼の唇が微かに動いた。
「私はあなたに感謝します。こんな私に、人と出会いを恵んでくださったことを」
 ……けれど、その代価として私があなたに捧げることが出来るのは、ただ愛だけで……。
 混迷とした考えは、やがて微睡みに塗り潰されてゆく。まるでそれが■■の赦しとでも云うかのように。

 ……眠りに落ちる直前、一日の思い出がそっと耳に囁きかけるのを、彼は感じた。


関連キャラクター:ルブラット・メルクライン

蒼の車輪、毒香水蒐集家
「神話の論文を探しているのなら稀覯本蒐集家を訪ねれば良いものを……これは何です? マンジウ。不思議な響きの甘味ですね。ではお茶を淹れてきましょう。もう一冊くらいなら好きな本を読んでいても構いませんよ。返報性の原理はご存じでしょう?」
執筆:駒米

PAGETOPPAGEBOTTOM