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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

旦那様錬成研究報告書

関連キャラクター:耀 澄恋

旦那様錬成奮闘記
「60ぱぁせんとの水に、炭素50ぱぁせんと。えっと、酸素が20ぱぁせんと、水素が……10ぱぁせんと」
 分厚い教本と睨めっこしながら、ビーカーに少しずつ何か液体を注ぐ。
 ちなみに彼女が手に持っている教本の続きはこうだ。
 窒素原子…8.5%。
 カルシウム原子…4%。
 リン原子が2.5%…。
 カリウム原子…1%。
 その他……。
 それは人間を構成している元素である。

 澄恋は愛おしい旦那様をお迎えする為に日夜研究に勤しんでいた。人はそれを人体錬成と呼ぶ(澄恋の場合は旦那様錬成)
 こぽこぽと泡立ってきた水面を眺め、澄恋は婚活の日々を思い返していた。
 牙で怖がられ。
 下戸故に酒で失敗してドン引きされ。
 漸くお付き合い出来たと思えば博愛主義が祟り「恋人としてみてほしい」と泣かれながらフラれ。
「僕と結婚してください」
 跪いて婚約指輪を差し出した男には、指輪の何倍以上もの額の全財産を騙し取られた。
 一言で言えば余りにも惨敗していた。
(今思えばわたしが甘かったのです……!)
 そう、素敵な旦那様と出会ってハネムーン♡ など、夢想に過ぎない。かの異国の女王もこういう名言を残しているではないか。
 
――旦那様がいないなら、作ればいいじゃない。

「そう! 旦那様は作るんです!! 諦めなければ夢は叶うのです!」
 絶対に叶えてはいけない夢だと思うが、此処にツッコんでくれる常識人はこの場に居ない。
 と、同時にぼふん! と派手な爆発音と白い煙が立ち込め澄恋は咳き込んだ。
「けほっ……うう、また失敗しました……あれんじでお砂糖を入れたらいい感じになると思ったんですが」
 目の前には、なんか形容しがたいナニカが「ア……」とか「ウ……」とか言っている。
 それを愛おしそうに澄恋は抱え上げた。
「でも、大事な旦那様の一部に代わりはありません」
「ウオア……」
「数値的に左脚とみてよさそうですね。それに心なしか声が甘いいけめんぼいすな気がします!」
 さらさらと嬉しそうに結果を書き留める花嫁の旦那様錬成はまだまだ続く。
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