PandoraPartyProject

幕間

スピネル君の今日のごはん

関連キャラクター:ルビー・アールオース

疲れた体に優しさを
「あぁ、おかえり。疲れたでしょ?」
 スピネルはそう言って、ルビーに向かって笑いかけた。
 台所からは、腹を空かせてたまらない彼女にはたまらない、トマトのいい香りが漂ってくる。

「疲れた体にはまずは温かいスープから。ほら、ひよこ豆のミネストローネだよ。栄養もたっぷり」
 優しく微笑んで、木の器に盛りつけられたそれを差し出す。
 ホカホカと漂う湯気にトマトとコンソメの香りに、赤色をベースに黄色い豆と緑のパセリ、そしてところどころ見える厚切りのベーコンの配色が食欲をそそる。
 一口すすってみれば、おなかの中にじんわりと温かさが伝わってくる。
 トマトの甘みがコンソメで引き立ち、そこに加わるベーコンの肉汁と、ひよこ豆のほくほくの食感。
 一口、また一口と進めていくうちに、ついに器は空っぽになってしまった。
「このスープ……とってもおいしかったよ!」
 ご馳走様でした、と手を合わせ、ルビーはスピネルに満足げな表情を向ける。
「ヒーローもお腹が減ってたら、みんなのために戦えないからね」

 正義の味方であるルビーにとっての、最高のスパイス。
 それは、ともにヒーローを目指す少年の優しさなのかもしれない。
 
執筆:水野弥生
貴方と一緒なら
「ルビー、今日の夜は何たべたい?」
 先に見えるマーケットを視界に収めてスピネルは隣を歩くルビーに問う。
「え!? う、うーん……」
「ふふ……ごめんごめん、いきなり聞かれても迷うよね。そこのマーケット寄っていい?
 横を歩きながら未だにウンウンと唸りながら迷っているルビーにスピネルはくすりと微笑んだ。

「この間作ってもらったミネストローネ、美味しかったなぁ」
 生鮮のコーナー、丸々と太り濃い赤みを帯びたトマトを横目にルビーが意識なく呟く。
「ミネストローネにする?」
 ルビーも大層気に入っていた事は記憶にも新しい。
「ん〜、でも違うのも……なんだかお肉の気分……」
「そっか、それなら……」
「あ、ちょっとスピネル?」
 良い案があると言わんばかりにトマトをカゴに入れて足を進める、小走りで追いかけるルビー、その先には。

「お待たせ」
 時は移り家の中、スピネルがテーブルに置いた器を覗いてみれば。
「これは……」
「挽いた肉にトマトを和えて煮込んだトマトソースをパスタにかけたものさ」
 モチモチのパスタに盛られた優しい酸味を嗅ぐわせるトマトソースに粗挽きの肉を加えてひと煮立ちさせたもの。
 てらてらと輝く肉の汁がパスタの合間を潜り抜けて落ちる。

「美味しい……!」
 一口含めば重たい肉感が酸味で中和されて存外にさっぱりと食べられる。
 気づけば皿を空にしてしまった彼女は恐る恐る微笑む彼を見つめて声を出すのだ。
「お、おかわり……」
執筆:胡狼蛙

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