幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
魔女さんの家
魔女さんの家
関連キャラクター:ジョシュア・セス・セルウィン
- 雪かき
- さく、さく。ざく、ざく。雪かきの音が、真っ白に染められた森に響く。溶けていく白い息を追いかけて、ジョシュアはほっと一息つく。
友人たちが手伝いに来てくれたおかげで、雪かきは順調に進んでいた。ここに辿り着いたときはリコリスの家の玄関が開かなくなっていたのだが、皆のおかげでリコリスも無事に外に出られた。
「ジョシュ君たちが来てくれて本当に良かった。ありがとう」
玄関が雪に埋もれないように魔法の道具を玄関に置いていたそうなのだが、どうやら昨晩効果が切れてしまったらしい。助けてあげられて良かったとは思うが、今日が雪かきの日だったのは偶々だ。困ったときにいつも側にいてあげられないことを、歯がゆく思う。
雪に足をとられて転んだ望乃を、フーガが助け起している。あんな風に、何かあったときにすぐ手を差し伸べてあげられたらいいのに。
「そうだ、ジョシュ君。言うのが遅くなってしまったけれど、お誕生日おめでとう」
今年も祝えて嬉しいわ。リコリスが微笑んでいて、かぁと頬が熱くなるのを感じた。空気の冷たさで元の色に戻ってくれたらいいのに、頬はなかなか冷えてくれない。代わりに心の中に沈んでいたものを引き上げて、どこかに追いやってしまう。
「ありがとうございます、リコリス様」
微笑むと、ちょうど雲の隙間から陽射しが覗いて、雪を眩しく照らしたところだった。あともう少し雪かきを頑張ろうかと立ち上がると、クウハが手招きをしていることに気がついた。
「カネルに遊んでほしいと言われた気がしてな」
クウハの指さしたところを見ると、雪うさぎが座り込んでいた。その隣でカネルが尻尾を振っていて、ついつい頬が緩む。
「かわいいうさぎさんですね」
「望乃も作るか?」
「はい。でも、もう少し雪かきをしてから。ね、フーガ」
「そうだな。もうひと頑張り、だな」
フーガたちに笑いかけられて、ジョシュアは頷く。友人たちとリコリスをまた会わせられたことも、こうして一緒に何かをできることも、嬉しい。
「あとでリコリス様が温かいお茶を用意してくださるそうです。皆さん、ありがとうございます」
- 執筆:花籠しずく