幕間

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イカサマ占い師の日常

トライアンフ: 「カードの示す未来は――現状の打破、好転の兆しです」
　『真実』なんて導かないカードの羅列を、チェルは真面目ぶった面持ちで見下ろす。彼女の占いにおいて、大事なのは雰囲気作り。それからよく回る口だ。
　ここでチェルは顔を上げ、客の顔を真正面から見つめた。
「ですから、あなたの思っている通り、かの者と縁を切る判断は間違っておりませんわ」
「なるほど……」
「しかし、こちらのカードは軽率な行動を咎めております。ただ一方的に別れを告げるだけでは、良からぬ心残りを引き摺るでしょう。ええ、あなたにとってもですわ」
　真剣な判断を重んじるよう助言を重ねる。彼女の超俗的な容姿と素振りは、無難でしかない発言に真実味を与えてくれた。――客はいつも気の晴れた表情で後にしていく。

　占いは所詮イカサマだ。けれど、得られた幸せが欺瞞に導かれたモノか否かなんて、大概の人間は気に掛けないものだった。; 執筆：梢