PandoraPartyProject

幕間

ガンガゼと一緒

関連キャラクター:セス・サーム

ガンガゼのいる図書室
「あの、これ借りたいんですけど」
「では、ここに必要事項をお願いします」

 一見、何の変哲もない学生と司書のやりとり。
だが、ペンを手にした彼女の腕に何かが刺さる。チクッとはしない。むしろポフっとする。
貸出カードに名前と日付を書きつつチラッと横目に見たものは、なんかでっけぇウニのぬいぐるみ。
本体部分だけならまだしも、如何せんトゲの部分でめっちゃ幅を取る。ボディ部分よりもトゲの方が表面積多いんじゃないかまである。そして側で腕を動かす度に、痛くはないが当たる当たる。

「か、書けました」
「確かに。では、期日までに返却をお願いしますね」

去り際にもう一度、カウンター脇を盗み見る。
そこには、あのトゲを優しく撫でる司書の姿。もしかして、あれの持ち主って。いやそんな馬鹿な。
ガンガゼ神
 巨大ガンガゼぬいぐるみ。それはセス・サームがとあるお仕事で手に入れた巨大なる刺々しいウニのぬいぐるみ。
 それが自宅だと邪魔だからという理由で希望ヶ浜学園の図書館、そのカウンターの上に鎮座している訳だが。
 そのぬいぐるみが何故か台座の上に置かれているのはまだいいとして。
 ぬいぐるみを正面から見て左側に皿にのった米、右側に円錐形に皿に盛られた塩、供えられた水。
 ぬいぐるみの両脇には榊。お酒は学校ゆえだろう、流石にない。
 どう見ても神棚を飾る神饌のそれである。
 誰だ!巨大ウニぬいぐるみを祀ったの!
 おまけに極々小さい賽銭箱まで置かれている。
 完全にガンガゼ神として崇められているぬいぐるみであった。
 ……というより生徒が面白がってやっただけじゃないの?
執筆:アルク
度胸試し
 図書室の隅に、生徒が数人座り込んでいる。それぞれが怪しまれないように本を探しているふりをしているが、本人たちが思っているよりもその存在は浮いていた。

「で、誰が言うんだよ」

 一人がカウンターを覗き見る。
 置いてあるのは、巨大なガンガゼのぬいぐるみ。人形のような容姿の司書の近くに鎮座しているそれは、愛嬌がある一方で、どこか別世界のような雰囲気も醸し出している。

「先生と一緒にあのぬいぐるみの写真を撮らせてほしいなんて」

 大分勇気が要るな。生徒たちは同時に頷いた。


 ――軽い気持ちで「写真を撮りたい」と言ったのは誰だったか。いつの間にかこの生徒たちの間で、司書とガンガゼの不思議な組み合わせを一つの画像に収めるのは、ある種の度胸試しになってしまったのである。
夜に動く
 図書室にサブバックを忘れた。気が付いたのは夕方を過ぎた頃。諦めることも考えたが、その中に手付かずの課題を入れていたことを思い出して取りに行くことにした。

 図書室に着いた頃にはすっかり陽は沈んでいた。人の姿もなく、誰もいない廊下に自分の足音が響くのみ。ああ、やだなぁ。
 さっさと鞄を回収して帰ろうと電気をつけたとき、何かが図書室の中を転がった。恐る恐るそこに目を向けると、床には例のトゲトゲのぬいぐるみが転がっている。
 昼間見た時には、ガンガゼのぬいぐるみはカウンターに座り込んでいて、不安定に転がる様子すら感じさせなかった。しかし今、触れてもいないのに転がり落ちた。

 もしやこいつ、生きているのでは。一瞬浮かんだ疑問を振り払い、ガンガゼを元の場所に戻した。
ガンガゼと幼女
 その日の図書室はいつも以上に緊迫した雰囲気を持っていて、普段の異様に拍車をかけていた。
 それは人形ように美しい司書のせいではなく──。
 客寄せのつもりが客避けみたいな対応をされがちなガンガゼぬいぐるみと。
 そんな自分の頭のサイズよりおおきいぬいぐるみを見つめる幼女のせいだった。
 既にこの二人が見つめあって5分くらい経っている。
 恐らくは今年入ったばかりの小学生だとは思うのだが、どういう訳かガンガゼに気づいた瞬間に固まってしまった。
 ガンガゼ責任者(?)である司書が話し掛けろよと一部生徒は思ったが、そういえばこの司書は若干天然だしマイペースだ。
 期待はするものではない。むしろ気にせず淡々と仕事してて凄いなこの人。
「あ、本を借りに来たんだった。おしえてください!」
 急にガンガゼから現実に戻ってきた幼女は、何もなかったかのように司書に本の借り方を教えて貰いにカウンターへ向かった。
 そして他の生徒は誰もツッコミを入れられず、モヤモヤを抱えたまま休み時間を図書室で過ごすのだった……──。
執筆:桜蝶 京嵐

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