PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

( ‘ᾥ’ )あっ、嘉六おじちゃん!

関連キャラクター:リコリス・ウォルハント・ローア

間の悪いお嬢ちゃんめ!!
 賭場で盛大にやらかした嘉六がとぼとぼ歩いていた。
 すると路地に髪を降ろした豊かな胸を揺らした艶やかな美人が佇んでいる。簡単に言うと嘉六の好みドンピシャの美人だった。
 情けなく下がっていた眉と尻尾はきりっと吊り上がり、とびきり甘やかな声で女性に声を掛ける。
「よぉ、美人さん。良かったら俺と朝まで遊んでくれねぇか?」
「あら本当? うふふ、ちょうど人恋しかったの。素敵なお兄さんと出会えて嬉しいわ」
 唇の黒子が妖艶な美女は嘉六に腕を絡め方に頭を預けてきた。
 腕に当たる柔らかで豊満なむにゅっとした独特の感触に、口角が吊り上げるのを嘉六は必至に抑える。
 この後この子をお持ち帰りして、朝まで目一杯楽しんでやる。今日は賭けにはボロ負けしたがやはり悪いことの後にはいいことが待っているのだ。
 だから油断していた。というより浮かれて気が付いていなかった。

「あれ、嘉六おじちゃん?」
 リコリス(と書いて間が悪いお嬢ちゃんと読む)がとてとてこちらに近づいてきていることに。
「この子だぁれ?」
 なんだろう、雲行きが怪しくなってきた。
「し、知り合いの嬢ちゃんでよぉ。こんなとこで何してんだ、お嬢ちゃん。あとお兄さんな?」
「今日はオフの日だからお散歩してるんだ! わぁ、すごい綺麗なお姉さん! こんにちは!」
「あらぁ、素直でかわいい子ね。こんにちは」
 屈託のない笑顔で綺麗と言われて女性は更に機嫌をよくした。素直なリコリスを気に入ったのか和やかに会話を交わしている。
 良かった、酷いことにはならなさそうだと嘉六が胸を撫でおろした時だった。

「そういえば今日は違うお姉さんなんだね? 昨日のショートカットのお姉さんはどうしたの?」
「……は?」
「ばっっ……!」

 さっきまで甘やかな声を出して逞しい胸にしなだれかかっていた女の声色が一気に変わり、ハートマークを描いていた瞳はぞっとするくらい冷え切っていた。当たり前である。
 甘美な雰囲気は一瞬で冷たく凍てついて視線が突き刺さってとても痛い。

 なんつーんだっけこういうの。ああ、そう、うん。思い出した。
 絶対零度、だ。

 ――ぱぁん。
 晴れやかな秋空に乾いた音が響き、大きな紅葉が嘉六の頬に鮮やかに色付いた。
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