PandoraPartyProject

幕間

花の蜜を

関連キャラクター:アレン・ローゼンバーグ

華やかに香る
 デパートの一角、紅茶の茶葉専門店に、アレンはふらりと立ち寄った。
 愛飲する薔薇の花茶は何日分か残っている。けれど、時には違う紅茶を飲んでみるのも悪くないと思ったのだ。姉と二人で感想を言い合う時間も、彼は好きだった。アレンは香水のように整然かつ丁寧に並べられた茶葉を見て回る。
「店員さん」
「は、はい!」
 優美な彼の横顔に見惚れていた店員は、すっと背筋を伸ばした。
「大切な人へのお土産を買いたいと思うんだ。お勧めの茶葉を教えてほしいな」
「なるほど、素敵ですね。――少々お待ちください」
 店員が持ってきてくれたのは、プラム&ピーチのフルーツティーと、バニラアイスのフレーバードティーだった。
「こちらの紅茶は甘酸っぱい香りと爽やかな味わいが特徴的です。ジャムやカットフルーツを入れてみても美味しいですよ。そして、こちらが……」
「……バニラじゃなくて、バニラアイスなんだね」
「ええ。より濃厚で、優しい口どけとなっております」
 アレンは深く頷く。ありがとう、これを買っていくよと囁かれた店員は分かりやすく頬を紅潮させたが、それを彼が認識したかは怪しかった。愛おしい人のことを考えていたからだ。

 ――カーテンに透ける柔らかい朝日。窓から溶け込む光に照らされながら、薔薇色の紅茶を飲む姉の姿。アレンはそっと微笑んだ。
執筆:
真夏のレモンタルト
 今日のアフタヌーンティーのお菓子はどうしようか。決めあぐねていたアレンはふと新装開店の張り紙に誘われ、ケーキ屋へ足を踏み入れた。店内には買い物客がちらほら見えている。
 ショーウィンドウに飾られたケーキは、どれもこれも美味しそうでますます決まらない。
 アレンが悩んでいると、店員が話しかけてきた。
「今の時期ですとレモンタルトがオススメですよ」
「じゃあそれで」
 お勧めされたとおりにレモンタルトを選ぶ。きらきらトパーズの様に艶やかで綺麗だった。
「かしこまりました」
「あっ、家に姉がいて……贈り物、というか一緒に食べたいのだけど」
 店員は微笑ましそうに頷いて、白い箱にタルトを収めた後、しゅるりと青と白のリボンを手に取り、ラッピングを施した。
「わぁ……! とっても綺麗! ありがとう。きっと姉さんも喜んでくれるよ」
「お気に召していただけた様で。いつかお姉さまといらしてくださいね」

 店員に頭を下げて、アレンは帰路に着く。
 あんな店員さんの様に優しい人ばかりだったら、姉さんは外に出られるのに。
 ドアを開けて、玄関で自身を待っていた姉に手に提げたタルトを嬉しそうに見せた。
「姉さん、ただいま! 今日はねレモンタルトを包んでもらったんだよ。この間の紅茶と一緒に頂こうよ」

 鏡の中の姉はにっこり微笑んだ。
執筆:

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