PandoraPartyProject

幕間

シリアスハンナさん

関連キャラクター:ハンナ・フォン・ルーデル

或る夜の話
 ゆらゆらと焚火の炎が揺れる。私は――ハンナ・フォン・ルーデルは、ただその火を見つめていた。
「……――――、」
 始めは、私の故郷を守るためだった。村に、街に、国に広がり燃え盛る炎は、私を突き動かしたのだ。国からの徴兵に対し、私は自ら軍人になることを望んだ。
 戦場は過酷なものだった。生きるか、死ぬか。その二択しかない。私はその二択の中で、常に生者であった。戦果を挙げ、常に生者であったからこそ恐れられた。
(――ですが、今はどうでしょうか)
 無辜なる混沌に招かれ、特異運命座標として世界を巡り、人と出会い、かつて生きていた世界の戦場では決して経験できなかったことを経験した。多くの犠牲を払うくらいなら、小さな犠牲も厭わない。そんな冷酷な『魔王』と呼ばれた私が、この世界を楽しんでいる……?
(いえ、忘れてはいません。この世界にも戦場があることを。戦場では、少しの気の緩みも許されません。その隙が、死を選ばせる)
 この先も、常に生者であらねばならない。それだけは、変わらない事実だ。私は心に『軍人』という仮面を被せる。その度に、その仮面が擦れて心に細かな傷ができる。分かっている。理解はしている。それでも、生きるという選択肢を選ぶためには必要なのだ。
 ゆらゆらと焚火の炎が揺れる。これは、戦火だ。決して、そう決して、私の心ではない。燃える、燃え上がる、燃やし尽くす炎であって、これは、決して、私の心の揺らぎなんかでは――
「交代の時間だよ。お疲れ様」
「……そうですか。それでは、後は宜しくお願いします」
 物思いに耽っている間に、見張りの番は終わったらしい。私は次の者と見張りの番を交代すると、すぐに体を休めた。――生きるために。
執筆:萩野千鳥
それはいつかの誰かの故郷
 村が燃えている。どうしてだったろう――ハンナは急にそんなことを考えた。だが子供の悲鳴がその思考を遮る。見れば、痩せた少女が、燃える瓦礫の下の腕を引っ張っていた。おねえちゃん。
 近くには粗悪な銃がある。幼い体躯でも扱える類の。誰の? この子の。
 彼女の翼が、炎を影に呑む。怯えた顔が振り向く。

 ――もう声はしない。
執筆:桐谷羊治

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