幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
いろんな弾正が見たいです!
いろんな弾正が見たいです!
関連キャラクター:冬越 弾正
- BURNING BUNNY
- ●Love it
海底の都市、竜宮。
そこは地上とは違う文化形態があり、『常識』も多くの国とは異なる。
例えば、竜宮嬢の存在。そして嬢が居るのならば、竜宮男子だって居る。
彼等は(何故かは知らないが)正装のバニースーツで来客たちを接待することを心からの喜びとしていた。
そう、バニースーツ。バニースーツである。
女性用のものは冬越 弾正(p3p007105)も知っていたが、男性用もあることには驚いた。けれども、そういう文化があるのだな、くらいの感想だ。実際に纏っている竜宮の人々はみな、とても似合っていたからだ。
だからあまり気にはしていなかったのだが――。
「……変、ではないか?」
「大丈夫だ。似合っている」
腰や腹が何故だか露出しているバニースーツが、我儘ボディ(胸筋)をバーン! と主張している。それなのにアーマデル・アル・アマル(p3p008599)は弾正の頭のてっぺんからつま先までをゆっくりと眺め、問題ないと真顔で頷いた。
本当に? 本当にそうだろうか。アーマデルは、正直天然だ。養殖物ではない、天然なのだ。世間の感覚とは少しずれているところもあるため、全てを鵜呑みにすることはできない。――とは思っているが、最終的に彼の全てを信じてしまうのは、彼のことを心底好いているからだろう。
それにしてもこの衣装、露出しすぎではないだろうか。シャツの上にベストではいけないのだろうか。いや、アーマデルのバニースーツと比べると露出など無いに等しいのかも知れないのだが……果たして本当におかしくはないのだろうか。不安しか無い。
チラリと視線を向けたアーマデルは弾正よりも露出が激しく、胸のスーパーミニベストとホットパンツと言う出で立ちであるというのに、それをひとつも恥じることはなく腕を組んで弾正の眼前に立っている。男らしい。いや、漢と言えよう。彼には何だって似合うと思えるのは、惚れた欲目から、だろうか。
細身のアーマデルが似合うというのは、まあ、わかる。バニースーツ。つまり、兎だ。ふわもこの愛らしい生物ゆえに、愛らしさの方が前に出る衣装なのだから。しかし弾正は我儘ボディ(筋肉)の持ち主だ。その筋肉は誇るべきものであって負い目を感じたことなど一度たりともないが、しかし、だがしかしだ。似合う似合わないという物がこの世にはあるのもまた事実。
それなのに、恋人は似合うと言う。
明日はともに頑張ろう、と拳をギュッと握りしめている。可愛い。
(そうだな、俺も頑張らねば)
アーマデルが人助けをしようと頑張る姿勢を見せている。寄り添うと決めたのだから、彼とともにホストクラブ『the play』で働くと決めたのだから、弾正も覚悟を決めねばならない。
ぐっと拳を握りしめて顔を上げれば、アーマデルがこくりと頷いていた。
そうして前日にしっかりと衣装合わせもして『the play』へと赴いた訳なのだが。
おはようと挨拶をしてきた店長のソーリスは自然にアーマデルの肩を抱き、腰を抱き、それから皆に紹介するねと煌煌しい笑顔を振りまいた。
「やはり、距離が近くはないか?」
「そうだろうか?」
竜宮の人たちは暗い深海の中で寄り添って生きていくために、人寂しくならぬように、スキンシップが陸よりも過剰なのが普通なのだ。その話を聞いてある程度納得はしているものの、やはり……という気持ちが拭いきれない。
店長にやましい気持ちがないのは解っている。
不思議そうに首をかしげるアーマデルが可愛い。
きっと彼は弾正の内なる葛藤を何一つ理解していない。
(俺がしっかりと守らねば――)
こんなにも可愛いのだから、彼に手を伸ばそうとする不埒な客も居るだろう。
距離感がバグっている同僚も、店長以外にも居ることだろう。
ウサ耳に変じている光の輪をジジ……と揺らし、弾正は決意を新たに拳を握りしめるのだった。
この超難易度任務『バニーボーイ作戦』、必ず乗り越えてみせる――! - 執筆:壱花