PandoraPartyProject

幕間

グリアセ

関連キャラクター:アセナ・グリ

ユア・マイ・プレイス

「グリジオ、どこにいるのかしら」
 とある夜。アセナは男の家を訪ねていた。
 夜も遅いというのに一体どこに行ったのだろう。暗くなっては怖い人に絡まれてしまうのではないか。
 グリジオは返り討ちに出来る実力の持ち主ではあるのだが。さりとて母親代わりになって育てた男だ。何歳になっても心配は抜けきらない。

 ただ、アセナにとって深刻な問題は”寂しい”という一点のほうだった。
「グリジオ、どこにいったのよ。もう、私を放っておいて」
 ぽつりと呟いた言葉は夏の夜の暗い空に溶けていく。

 そんなアセナが酒に逃げたのは、寂しがり屋の彼女を考えれば至極当然の帰結だったことだろう。
「グリジオー……」
 ぽつり、ぽつり。ゆらゆら。
 アルコールの量と比例するように、脆く思考が溶けていく。
 ふわりとめぐる寂しさの中で彼女は眠気に身をゆだねた。
「……――アセナ?」
 眠りに落ちる直前。耳慣れた低い声が聴こえたのはきっと気のせいだ。


 その日、グリジオはローレットに呼ばれ緊急の依頼をこなしていた。
 急ぎだったため、家に来ると言っていたアセナに声を掛けずに出てきてしまったが、俺を探しているだろうか。
「はー……土産でも持って帰ろうか」
 彼女の好物をいくつか買って帰る帰り道。
 熱の滲む夏の夜の空気に吐いた息が溶けていく。アセナは、アンタは、今何をしているだろうか。
 お互い隣にいることに慣れ過ぎた日々。急に離れるとぽっかり隣の空間が空いたように感じるのはきっと気のせいだ。
 気のせいで済ませていられるうちに、彼女が待つ家に帰ろう。

 そうして家に帰り玄関を開けたグリジオが見たのは、玄関で丸まって眠るアセナの姿だった。
「アセナ?」
 困惑したように声を掛ける。何故ここで寝ている?
 とりあえず、と彼女を抱きかかえてベッドに運ぶ、途中。
 ふと気づいた。
「……幸せそうな寝顔しやがって」
 苦笑をひとつ、零して。
 心なしか熱帯びた夏の夜に呟く。
「おやすみ、アセナ」


 ユア・マイ・プレイス。
 あなたの隣はとても、落ち着くわ。
執筆:凍雨

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