PandoraPartyProject

幕間

金色師弟

関連キャラクター:リディア・T・レオンハート

弟子の心師知らず
「今日はこれくらいにしておこう」
「ハァ……ハァ……私はまだやれますよ! 師匠!」
「……もう朝食の時間はとっくに過ぎているぞ、リディア」

 そう口にしながらブレンダは剣を収める。これ以上やる気はない、というアピール。それを見てリディアも渋々自らの剣を鞘へとしまう。

 実際のところ時間などはただの言い訳に過ぎない。卿が乗って昼までぶっ通したことなど幾度もある。
 しかし今回は少しばかり事情が違う。いつからかリディアの剣に『迷い』があることには気づいていた。とはいえブレンダにできることなどそう多くはない。師弟といえどそれはあくまで闘い方を教える関係。
 そもそもブレンダに人の悩みを察せるほどの対人経験値などありはしなかった。

(どうしたものか……)

「師匠……強いってなんですか?」

 目の前の彼女はリディアにしてみればとても『強い』。その強さに憧れて弟子になった。
 でも今になって強さが何かわからない。

 人を殺すこと? 殺さないこと? 武器の扱いが上手いこと? それ以外?
 そんなことが頭の中でぐるぐると回り続け考えが纏まらない。鍛錬はどうにかこうにか誤魔化しているがいつか師匠には気づかれるだろう。

「んー……どうだろうな。実を言うと私は私自身を強いと思ったことはないんだ」
「……え?」

 返ってきたのは意外な答え。きっと師匠なりの強さに対する答えが返って来ると思っていたリディアは虚を突かれてしまう。

「私は剣の扱いが上手いだけで強いかと言われると……うーん」
(ああ、師匠ですらそうなんですね……)

 ブレンダは強さなんて人それぞれだから気にするなと言いたかった。
 リディアは師ですら届かない頂への道があとどれだけあるのか考えてしまった。

 才に悩む者と悩んだことがない者の悲しいすれ違い。


 ―――これがリディアが鍛錬に来なくなる前日の出来事だった。
執筆:灰色幽霊

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