PandoraPartyProject

幕間

おまかせ

関連キャラクター:マニエラ・マギサ・メーヴィン

自室、目が覚めるマニエラ
 くぁっ、と欠伸ひとつ。
 目が覚めてみればもうお昼を過ぎていた。流石に寝すぎた。
 昨日は何をしてたんだっけ。
 目覚めたばかりで頭がはっきりしない。
 とりあえずベッドから降り洗面所へ。
 マニエラのぼさぼさの髪を櫛で梳かし、顔を洗う。
 歯を磨きながら考える。
ーー今日、どうしよう。
 とりあえず何か食べたいところだが、冷蔵庫に何かあったっけ。
 遊びに行くにしても今から行くのはめんどくさい。
 台所。
 ああ、そういえば昨日の残り物があった。
 だが、それだけだ。夜の分がない。
 もういいや、買い物に行くにしても今日は家でだらけよう。
 そうぼんやり考えながら食事の準備をする。
ーー……そういえば今日、誰かと会う約束をしていたような?
 嫌なざわつきを感じながらスケジュールを確認するマニエラであった。
執筆:アルク
眼球の裏側にはいつも君がいたんだそんな真実も忘れていたのか私
 ざわつきを無碍には出来ない、べたついた気配を見ないふりして制服に着替える。
 嫌な予感とは奇怪にも、忌々しく、的中するのが世の常だとオマエは感じた。赤色のぐちゃぐちゃを認識した自身のオッド・アイが腹立たしく思える。未だ蠕動しない脳味噌を振りつつ身を捻じらせ直下する陽光へと躍り出る。寝過ぎた松果体に染み入る名状し難い熱暴走――これはきっと夜妖か何かの仕業に違いない。よろける風にしてようやく世界と挨拶した。まったく酷い混沌だ……。
 予定と謂うのは特に依頼と謂う訳ではなく、ただ友達と会う約束だった程度だ。何かしらの目的がある云々でもなく、暇だったらお喋りしないか? と雑なもの。これなら当日『うだる』事も問題ないのではないか。体調がよくないと伝えたらごろごろ出来た筈だと謂うのに。ああ、向こう側で友達が手を振っている。まずい、なんだか掠れているようにも見える。もしや本当に崩れたのではないか。ぐるり、ぐるり、定まらない内面性――。
 自暴自棄に陥った時と『似たような』感覚だった。堕落するような沸騰感、ある種の恍惚に近い泡沫が肉体を抱いてくる。あれは確かに友達、※※だった筈なのだ。くねり、謳う真白の最中は渦目いて東京を焦がす。視えた。ハッキリと視えた。理解した。あのカレンダーは私のものではない――欠伸が不定形に感染した。
 目と目の狭間で蝉が燥いでいる、耳と耳の真ん中で虚躯理と粘ついた、うるさいノイズの膨張が内から外へと滂沱する様子。成程、つまり世間は私の事をアルコールだと認知してくれたのか。あさり忘れていた冷蔵庫の片隅には、ステキ、お友達の用意していたビール缶どもの傾聴。何の話だったっけ。想々、君のはなしだ。
 感謝しているんだよこれでもさ。わからなかった真実をわかるような虚構にしていた。わかるだけだった悪夢に新たな意味を付け加えた。たいらげた背徳グルメにフレッシュなお野菜を添えてしまおう。大丈夫さ、私も君もここに存在するんだ――いい加減にしろよ、そんな叫びが聞こえたのは気の所為で神経が絡み合っている。
 果て――こんな感じに一日を愉しむのも悪くはない。ぼやけたレンズを潜り抜けて未曾有の喜びに浸る。沈み込んだアストラルは遂に浮上の二文字を失くしたのだ。ぐるり、ぐるり、くねり、くねり……無意識が産声をあげた。アハハ、アッハッハ、アッハッハッハッハ――法なんぞ破棄して終え、無秩序の回転に真をゆだねる。
 ――。
 ――?
 ――ええい、鬱陶しい、花は『咲いてこそ』花なのだ。
 ――隠すなんて如何かしている。影で良いだなんて。
 暴かせろ、発かせろ、オマエはオマエはオマ――。
 抜き取る事の出来ない夜鷹の鳴き声、正気か狂気かも解せない儘にオマエは蒼宙を知った。肥大化する脳髄が星辰を吐き出し病的だと迎える。残り物の内容を思い出した厭れらはオマエの大好物、いなり寿司だ。詰め込まれた甘さはジューシーに讃えられ刹那、散っていく。欲しかったのは幻想と称される枕なのだ。
 サッパリとしたプディングで熱狂を冷ます、ギトギト、実に爽やかだった。
 未知なる3※には少しだけきついが、嗚々、胃袋の痙攣がやむ術を知らない。
 眼球の裏側にはいつも君はいたんだそんな真実も忘れていたのか肉片……。
執筆:にゃあら
銀狐怪奇ファイル。或いは、鶏小屋の惨劇…。
●ある奇怪で悍ましい事件
 空の暗いある日のことだ。
 どんよりと重い、分厚い雲が空一面を覆い隠している。今にも雨が降り出しそうだ。湿気で重たくなった尻尾を片手で梳いて、マニエラ・マギサ・メーヴィンは「はぁ」と重たい溜め息を零す。
「ふむ、ここがそうか」
 マニエラの視線の先には、小さな鶏小屋がある。
 練達、セフィロト郊外にあるマニエラの領地のとある民家の庭先だ。
 鼻腔を擽る鶏小屋独特の臭いと、それから腐った肉や血を原因とする異臭に、マニエラは形のよう鼻を袖で覆って眉を顰める。
 鶏小屋の周囲には、膨大な量の血痕と、抜け落ちた羽毛、それから“鶏だった”肉片が散らばっている。あまりにも凄惨な光景だ。
 肉片の状態を見るに、それはきっと何かに食いちぎられたのだろう。
 野生の獣か……考えられるのは猫や野犬、或いは狼や狐の類だろうか。実のところ、こういった野生の獣による家畜への被害というのは、年に何度も報告されている。場合によっては、魔物の類が事件に関わっていることもあるため、マニエラのような領地持ちは時折、今回のように現場へ足を運ぶことも多いのだ。
「飼われていたのは鶏が13羽、か。13羽の鶏を一夜のうちに喰い尽くすとは、かなり飢えていたんだろうな」
 散らばった羽毛や血の量から判断するに、13羽の鶏は1匹も残らず喰い尽くされたことは間違いないだろう。
 そして、鶏を喰い尽くした獣は、既にどこかへ逃げ去っている。
 今更、追跡することも難しい。もうじき雨が降り始めれば、足跡や血の臭いを辿ることも出来なくなるはずだ。
 だから、事件の調査はこれで終わり……。
 そうしたいところだが、マニエラは額に手を当て、本日何度めかの溜め息を零した。
 鶏小屋の金網が破られていることに気が付いたからだ。
 金網を破り、獣は小屋へと侵入した……と、それならどんなに良かったか。マニエラは『金網が内側から食い破られている』ことに気が付いた。
 そして、鶏小屋に残る破壊の痕跡は、内側から破られた金網のみ。
 つまり、鶏を食い殺した何かは『鶏小屋の中に居て、鶏を喰い尽くした後、金網を破って外に逃げた』ということになる。
「……卵があるな。孵ったばかりのように見えるが」
 鶏小屋の奥の方、血だまりの中に割れた卵が転がっている。
 まるで夜の闇のように黒い卵だ。
 卵の内に居たであろう雛の姿は見当たらない。
 件の獣が卵を割って、内の雛を食ったのか。
 否である。
 卵は内側から割られている。つまり雛は無事に孵ったということだ。
「獣に喰われたのなら良し。そうでないなら……」
 どうしたものか。
 血だまりに転がる卵の殻を凝視しながら、マニエラは途方に暮れるのだった。
執筆:病み月

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