PandoraPartyProject

幕間

かみさまのいうとおり

関連キャラクター:スティーブン・スロウ

喋喋
 ――何時になったら私の心を縛ってくれるんだろ。

 ――なぁに、縛って良い訳?

 ――いいえ、私今一寸だけ情緒感的な様で。言ってみただけ。嗚呼、其れよりも。爪紅が上手く塗れたのだよ。

 ――良いじゃん、店に列ばされた甲斐があったってモンよ。して、其の色は題して?

 ――恋する乙女の複雑な心の色?

 ――嘘だぁ。

 ――嘘だもん。

 ――で、何時になったら降りてくれんの。脚が痺れて来たんだけど。

 ――えー。少なくとも此れが乾く迄は。丁重に扱って欲しいかな。

 ――だーめーでーすー。もう我慢の限界でーす。

 ――お預け! ステイ! あゝ、もう。ヨレてるし服の跡も付いてるし泣けて来た、最悪……

 ――ステイしとく?

 ――此の雰囲気で何を腑抜けた事を。

 ――ですよねぇ?
執筆:しらね葵
おうちデートはスロウリズムに
「な~に読んでんの?」

 休日の昼下がり。
 スティーブンがソファに寝転がって雑誌を読んでいるイルリカを、上から覗き込む。

「ファッション雑誌。一緒に読む?」

 イルリカが読んでいる雑誌を、一緒にゴロゴロしながら読むことにした。

「私もこういう服着て、街を颯爽と歩いてみたいなあ」

 イルリカは想像を膨らませているのか、両肘をついて頬に手を当てながら、目を閉じている。

「いいんじゃねえの、おめえなら似合うだろ。今度一緒に買いに行くか?」

「いいの? でも結構高いよ?」

 イルリカが雑誌に書かれている服の値段を指差す。たしかに、結構なお値段で。
 それをスティーブンは不敵に笑い飛ばす。

「構わねえよ、俺ぁ芸術家だぜ? このくらいのはした金なら払えらぁ」

 そう言うと、イルリカは嬉しそうに目を輝かせた。

「いいの!? じゃあ、これとこれとこれと……今度の週末、買いに行こうね! 約束だよ!」

 まったく容赦なく高価な服を選んでいくイルリカ。
 スティーブンは微苦笑していたが、彼女が嬉しそうで、彼も嬉しい。ウィンウィンと言えなくもない、のか?

「ふあぁ……」

 不意に、イルリカがあくびを漏らす。

「眠いなら寝ちまえよ。起こしてやるから」

「でも、スティーブンをほっといて私だけ寝るのも申し訳ないな」

「なら、俺も寝ちまおうかな」

 ソファベッドを変形させて、二人並んで眠れるようにする。

「はい、おねんねしましょうね~っと」

「ん……おやすみ……」

 イルリカはそう時間も経たずにすやすやと寝息を立てる。
 スティーブンはごろりと隣に寝転び、彼女の手を握った。
 彼のギフト『ボディトーク』で読み取れた、イルリカの感情は、至極穏やかなものだった。
 これなら悪夢にうなされることもないだろう。
 スティーブンはイルリカにつられるように眠りに落ちた。

 次にふたりが目をさますのは、夕ご飯を用意しなければならない時間。
ワイン
 机の上には小さいけどいろんなワインボトル。赤色、白、紫に、水色。
 これなぁに? と小首をかしげてみせたら彼は貰いのもののワインセットだといった。
「ふーん、美味しい?」
「まだ飲んでねえよ、飲むか?」
「飲むー」

 机の上に新しくワイングラスが並ぶ。乾杯とグラスを合わせたらワインを味わって。
「私、これが好きだなー」
 スティーブンにもたれかかりながら空になったボトルを一本、持ち上げて見せる。
「店で見かけたら買っておいてもいいかもな」
 ちらっとラベルを見てそう言う。でも今は酔いが心地よいから。酔いがさめるまではこのままお互いに身体を預けていようか。どうせ時間はいくらでもあるのだから。
執筆:心音マリ

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