PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

穏やかな日々

関連キャラクター:國定 天川

『むぎ』のおしゃれ
「こんにちは、天川さん。元気ですか?」
「ああ。みゃーこか。珍しいな。態々、こんな所まで」
 天川の探偵事務所を訪れた水夜子は差し入れですよと紙袋を差し出した。袋は彼女が良く晴陽のための差し入れを購入しているカフェのものである。
 中身は小さめのタルトが二つとコーヒーとアイスティー。どうやら彼女も個々で食事をして行くようだ。
「私は珈琲もアイスティーも好きなんですけど、天川さんは?」
 好みを知っておいた方が差し入れしやすいですよね、と笑う水夜子は我が物顔でソファーに腰掛けてテーブルに袋の中身を広げている。紙皿に使い捨てフォークまで持参しているのだから用意が良すぎる娘である。
「あ、食べるのが目的じゃないんですよ。これ、姉さんから」
 親戚でありながら実の姉妹のような距離感で晴陽と接している水夜子。それ故に晴陽自身も水夜子には容赦なく『お遣い』を頼むことが多い。
 ほら、と差し出された紙袋は希望ヶ浜では幾らか店舗展開がされているペットショップのものだろう。紙袋のポップな猫のイラストは度々見かけるものである。
「ペットショップ?」
「ええ。姉さんがむぎちゃんに」
 天川が袋の中を覗き込めば可愛らしい着ぐるみやリボン、ネクタイなどが袋の中には入っていた。どうやら晴陽が飼育を希望していた『むぎ』の衣装のようである。
「お出かけ用のリボンやスカーフ、それからネクタイと……これは蜂みたいな着ぐるみでこっちは金太郎だそうです」
「……これは先生が?」
「ええ。珍しく昼までに仕事を終えて連れ出されまして。むぎちゃんに似合う衣装を選びたいとのことでしたから」
 ベーコンと名付けようとしたとは思えない位に可愛がっていると水夜子は笑った。
 因みに、首を傾げるむぎは鼻をふごふごと鳴らしてから紙袋の中身が食べ物でなかったことに落胆したようであった。
執筆:夏あかね

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