幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
歪な心、歪む絆
歪な心、歪む絆
関連キャラクター:カナメ
- 牛蒡の花
- 「お姉ちゃん」
「カ、カナメ……」
それはカナメが訪れていた喫茶店の席を少し外していた時の出来事。
睨みつけるカナメと戸惑いを見せる鹿ノ子がいた。
「何しようとしてたの?」
「カ、カナメ? なんか怖いッスよ」
「だってお姉ちゃんが勝手にカナの刀に触ろうとしてたから」
確かに鹿ノ子は触ろうとはしていた。
表情がなくなりかけているカナメの原因に、今彼女が持っている刀『緋桜』に原因があるのではないかと思って。
「ま、前はそんな事で怒らなかったじゃないッスか」
「前は、だよね? カナ考えたの。やっぱり人のものを勝手に触るのは良くないし、勝手に触られるのも嫌だなって」
「でもカナメ」
「でもじゃないよお姉ちゃん」
冷たく放たれる言葉に鹿ノ子は言葉に詰まる。
彼女に迫っているであろう危機から救いたいのに、その方法が見つけられずに焦ってしまったと猛省した。
花が咲いたように笑って懐いてくれていたカナメの姿はもう遠い昔のような気がしていた。
「緋桜は大切な刀なの。命に代えても代えきれない程に」
「な、そんな……!」
「お姉ちゃんは否定しないよね? カナの……味方だよね?」
「それは……そう、ッス」
「あは! 良かった!」
鹿ノ子の返事に一気に機嫌を取り戻すカナメ。
その瞳孔まるでは水に浸した墨筆のように、濁っていた。 - 執筆:月熾