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幕間

正義の味方奮闘記~おべんきょー編~

関連キャラクター:皿倉 咲良

難敵その1:数学
●地獄の必修科目

「うぅ、ひどい……」
 テストの結果を見返して、咲良は目を覆いたくなった。
 大学のテストというのは告知がないこともある。少なくとも咲良が選んだ数学の教員はわざわざ告知せず『常に教えたことを完璧に出来ていれば必ず解ける』を前提としたスタイルだった故の突発的悲劇。高校の頃のように明確なテスト期間があれば詰め込み戦法も可能だったかもしれないが、このように不意打ちされると非常に弱い。
 咲良は真面目に授業を受けていて態度も良いし、教員からの受けも悪くない生徒であるが、それとテストの結果はまるで関係ない。出された結果が全て。
「可、そう、ギリギリでも可判定は可判定だから……!」
 ポジティブに捉えるものの、やはり点数を目の当たりにすると辛いものがある。ご丁寧に平均点が提示されていて凹みかけるが、ここで萎まないのが咲良の在り方。
「とりあえず先生に聞きに行こう! ええと、証明までは出来てるから……ん? じゃあ何が分からないんだ……?」
 首を傾げる。多分途中まで合ってるけど、ならどこから可笑しくなってしまったのか。真相を探る為に咲良は数学教員の研究室へ向かった――。





 ――結果。
「テキスト、多っ!!」
 勤勉さを知っていた教員が特別に『虎の巻』をくれた。が、その量に咲良は再び目を覆いたくなったとか。
文房具たちの演奏会
 昼下がりの図書館でシャープペンシルのペン先が紙を引っ掻く音が聞こえる。
 それに混じって時々頁を捲る音と、消しゴムで間違えた箇所を擦る音。
 そして跳ねた赤いペンが大きくレ点を付ける音で、文房具たちの演奏会は締めくくられた。

「……はぁ」
 周囲に誰も居ないことをいいことに咲良は大きく溜息を吐いた。
 ファイルから取り出した薄っぺらいテスト用紙につけられた点数はお世辞にもいい点数とは言えなかった。
 咲良は決して授業態度が悪いわけでは無い。
 寧ろ、授業態度においては真面目そのもので先生たちからの評価も高いのだが……。

「体育は得意なんだけどなあ」
 咲良は昔から勉強が苦手だった。
 身体を動かす事は好きだったが、机に向かう事がどうにも落ち着かなかった。
 テストの結果は散々で、父は「警察官になれないぞ」なんて笑っていたが母は頭を抱えていた。

「――お母さん」
 今、どうしているのだろうか。元気だといいのだが。
 十歳の時、父は殉職した。
 最愛の夫を失っても、気丈に振舞い自分を女手一つで育ててくれた母。

 優しくて大好きなお母さん。
 自分が居なくなって、辛い思いをさせてしまった。
 こっちの世界は楽しいけれど、少しだけ胸の奥がチクリと痛んだ。

「……よし」
 もう一度シャープペンシルを手に取り、頁を捲る。
 演奏会の幕がもう一度上がった。
 
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