PandoraPartyProject

幕間

コードネーム:スワン

関連キャラクター:メルランヌ・ヴィーライ

メイドで潜入☆ゴー・エンジェル!
「すごい! シスネさん、もう公爵様の私室のお掃除を任されたんですか!?」
 若いメイド達が黄色い声を上げ、神経質なメイド長が眼鏡を光らせる。
「そこ、ミーハーな話題で盛り上がらないで仕事をなさい!
……全く。あの子達も、貴方みたいにもう少し真面目に働いてくれたらいいのだけれど」
「いつかきっと、あの子達もメイド長の苦労に気づく様になるわよ」

 それじゃあお掃除行ってきます、と『シスネ』と呼ばれた金髪のメイドは、クラシカルなメイド服のスカートをちょいとつまんで一礼した。
 掃除の時間に割り当てられた部屋――公爵の私室へ入室すると、掃除用具を部屋の隅に置いてスカートの中へ手を滑り込ませる。太腿のベルトホルダーから取り出したるは一枚の見取り図。この屋敷の物である。
(下調べによると、屋敷の間取りの中でこの部屋の隣だけ異様な空間がある……隠し部屋の入口があるとしたら此処ね)

 実のところ、シスネというのは彼女の偽名だ。その正体はコードネーム『スワン』。特殊チーム「ローレット・エンジェル」の一員であり、メルランヌという名の女性である。
 チームの中でも歴の長い彼女にかかれば、メイドとして標的の屋敷に潜入するのはお手の物。掃除も料理もそつなくこなし、メイド長に信頼されるまでに至った。やはり女子力は全てを解決する。おまけに彼女は、現場での見立ても精確だ。
(この本棚、動かした跡があるわ)
 本に偽装されたスイッチを押せば、現れたるは秘密の階段。掃除用具に紛れ込ませていた蝋燭に火をつけ、慎重に降りていく。今回のミッションで課された使命は『機密文書』を手に入れる事。甘いマスクでメイド達に評価の高い公爵だが、その裏で薄暗い取引に手を染めているのだから、人は見た目で判断できるものではない。
「――ッ!」
 階段を降りた先に小部屋が見える。そう気づいた瞬間、唸り声と共に獅子の様な魔物が飛び出して来た!
 振り上げられた爪がざっくりとメイド服を割き――
「そう。貴方が機密文書のガーディアンという訳ね。でも」
 割けた服の間から黒革の布地が露わになる。メルランヌがズタボロになったメイド服を脱ぎ捨てると、その下にはセクシーなボンテージ。魔物が攻撃の動作を終える前に素早く身構え、彼女は闘気を高めた。
「ごめんあそばせ。役不足だわ!」
 普段ほわほわとした笑顔の彼女とは思えぬ嗜虐的な笑み。冷酷かつ妖艶な鴉后連撃は魔物を吹き飛ばし、退けた先にある作業机から、メルランヌは書類の束を手に取った。
 ファミリアーのコールを呼び、メルランヌは微笑む。
「あの人に伝えて頂戴。ミッションコンプリートよ」
執筆:芳董

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