PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

陽花と宵木菟

関連キャラクター:タイム

甘味がもたらす甘美なしあわせ。
●届いた珍味。
「ついに手に入れたよ!」
 タイムは満面の笑顔で、烏谷トカの前に黒い箱を置いた。
「……これ、何?」
「なんと、あの有名なパ・ルフォナ・エッグです! じゃーん!」
「……ごめん。初耳」
「えっ……」
 テンションを上げたのが恥ずかしくなったのか、タイムはぽっと顔を赤らめる。
「すごい食べ物なのは伝わったよ」
 トカは箱を眺めて、少し首を傾げた。
「エッグ、ってことは、生き物の卵なの?」
「ううん。卵の形をした謎の食べ物。あつあつ激辛麻婆のこともあれば、キンキンに冷えたシャーベットのこともあって……それでトカくん呼んだの」
「なるほどね。僕は何でも歓迎だよ」
「それじゃ、さっそく」
 二人は箱を開く。
 中には、きれいにコーティングされた黒々とした卵が4つ入っている。
「……見た目じゃわからないね」
「開けてみる?」
「うん」
 取皿に卵を乗せる。慎重にナイフを刺すと小さなヒビが入り、ぱかりと卵が開いた。
 途端、中から粘性の強い黒い液体がどろりと溢れる。
「……うん!?」
 想像よりもショッキングな光景に、タイムは笑顔のままビキリと固まった。
 トカは少し首を傾げ、スプーンで液体をすくい上げる。
「うーん……。イカスミって感じの匂いでもないね」
「辛そう? ヤバそう!?」
「えっとね」
 ぱくり、と、躊躇なくトカはスプーンを口へ運んだ。
「と、トカくん!?」
 もぐもぐ、と咀嚼すること数回。
「何食べてるかは分からない……けど、甘いよ」
 トカはにこりと笑顔を見せた。
「美味しいの?」
「うん。イケる」
「うぅ……」
 ぱくぱくと、トカは食事を続ける。
 タイムも、恐る恐るスプーンを伸ばした。
 どろりとした液体。とても自分では食べようと思わなかっただろう。
 ギュッと目を閉じて、思い切って一口。
「んっ」
 口の中に、爽やかなミントとバニラに近い味わいが広がった。
「!……これ、結構好きかも」
「ね。美味しい。合うお茶あったから、用意してくるよ」
「ありがと、トカくん!」
「こっちこそ」
 トカは穏やかな笑顔を返す。
「美味しいものを、ありがとう」

PAGETOPPAGEBOTTOM